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2003.10.2
 
 


超スパコンの登場…

 NEC製スーパーコンピュータ「地球シュミレータ」による世界記録35.61TeraFlopsの実現は、米国の指導者にとっては、大きな衝撃だった。米国の最高速の約5倍の数値だから、その驚きはよくわかる。
 しかし、この仕組みは米国が追求をあきらめたベクトル型だ。従って、米国の研究者・エンジニアはニッチ的なものと見した。
 そして、「地球シュミレータ」を越えるコンピュータの実現に傾注し始めた。すぐに追いつき追い越せることを見せつけたい訳だ。とりあえずの目標は「地球シュミレータ」の3倍、そして2005年までには10倍を実現する計画だ。

 ところが、2003年11月には、「地球シュミレータ」以上のショックが襲うかもしれない。

 今度は、米国が力を注いできた現行のスーパースカラ型の系統のPCクラスター分野で、驚くような数値が発表される、との予想が広まっているのだ。
 日本が、1PetaFlops実現結果を公開するという噂が囁かれている。
 というのは、11月15〜21日に、米国フェニックスで「SC2003」が開催されるからだ。この分野の重鎮がほとんど集まる大会だ。ここで、1PetaFlops実現が発表されると見ているようだ。
 (http://www.sc-conference.org/sc2003/)

 今度は、理研のゲノム解析用のコンピュータシステムである。
 理研はこのシステムについてニュースリリースを出していなかったから、宣伝効果を狙って、「SC2003」で報告するのは間違いあるまい、というのだ。

 本当なら、大衝撃であることは言うまでもない。
 「日本が世界初の1PetaFlopsマシン実現」との題字が踊るかもしれないからだ。

 しかも、理研のコンピュータの基本構造は単純でわかり易い。ダブルCPUのパソコンを128台繋げたPCクラスターにすぎない。米国が力を入れてきたのと同じ構造である。
 但し、各PCにはPCI-Xバスのスロットが装備されている。各PCに40個の「MDGRAPE-3」チップを搭載したカードを挿入することで、超高速処理を実現しているのだ。各パソコン当り8TeraFlopsの能力を持つらしいから、全体では1PetaFlopsを越える。
 (http://www.jsbi.org/journal/GIW02/GIW02P121.pdf)

 要するに、このシステムは、専用チップ(Field Programmable Gate Array)を搭載したボードコンピュタ(カード)とPCクラスターが合体したものなのである。分子動力学計算用の世界最高速専用計算機に生体高分子シミュレーション・プログラム「MD」を埋め込んで、インフォマティクス向けのスパコンを作ったのである。
 従って、特定用途には向くが、汎用とは言い難い構造だが、その考え方は、シングルチップを沢山集めて処理する次世代スーパーコンピュータの基本構造を示唆している。極めて重要な要素技術を含んでいるから、「地球シュミレータ」以上の衝撃を与えることになろう。

 この衝撃に触発され、新たなアイデアが生まれると、ブレークスルーに繋がる可能性がある。
 楽しみである。


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