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2003.11.23
 
 


新CPU登場か…

 2003年11月14日付けのニュースによれば、IBMが、来年登場予定の任天堂/ソニーの次世代ゲーム機用マイクロチップでスーパーコンピュータを開発したという。低価格で電力消費量が少ないチップになるという。
  (http://www.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=technologyNews&storyID=3819632)

 IBMは小型で高性能なクラスター型スーパーコンピュータに注力しており、カスタムPowerPCチップ(もともとはIBM, Apple, Motorolaが開発)での実現に成功したようである。
 コンピュータのクラスター化は時代の流れだが、Intelチップに収斂しつつあるように見えたのだが、PowerPCも消え去ることは無いとの宣言ともいえる。
 PowerPC自体は、現在、Apple ComputerのMacintoshと、任天堂のゲームキューブに使われているが、CPU市場ではIntelのx86構造一色で、PowerPCの存在感は薄くなる一方だった。まさに、「一撃」の発表といえる。

 なんと言っても驚きは、ソニーの次世代ゲーム機用チップが、PowerPC路線に乗るとされている点だ。
 [2004年にはPSP(プレイステーションポータブル)を発売するとされていたが、このCPUコアはMIPSになると言われていた。
 プレイステーション2の次世代機は、おそらく2005年に大々的に投入すると思われる。こちらのチップは、ブロードバンド時代の「スーパーコンピュータ・オン・チップ」と発表されていた。SCEI、IBM、東芝による共同開発品である。]

  (http://www.toshiba.co.jp/about/press/2001_03/pr1201.htm)

 さらに、任天堂とソニーだけでなく、MicrosoftのXboxも、次世代はIntelチップからPowerPCへ変更すると発表されている。
  (http://www.ibm.com/news/us/2003/11/031.html)

 こうした報道がすべて本当なら、ゲーム機のプラットフォームはPowerPC系一色になることを意味する。
 半導体チップの大量生産によるコスト削減効果は凄まじいから、IBMが主張するように、高速CPUが安価で入手できることになる。
 [例えば、プレイステーション2は発売後3年半で、6,000万台を越えている。これだけでも、年間2,000万個のCPU市場である。]
  (http://www.scei.co.jp/corporate/data/bizdataps2.html)

 しかもすべてが同じアーキテクチャーになるのだから、CPU市場は間違いなく一変する。

 当然ながら、このCPUはゲーム機だけでなく、家電品市場にも入ってくる。

 これは遠い将来の話しではない。
 年末発売予定の、ソニーのハードディスク搭載DVDレコーダー「PSX」が、すでにこの道筋をつけているからだ。搭載されるCPUはプレイステーション2に使われている「90nm EE」だ。ソフトウエアは「PS2 拡張リアルタイムOS」である。
  (http://www.psx.sony.co.jp/product3.html)
 家電品へプレイステーション2のCPUを搭載する動きは驚くほど遅かったが、ようやく始まったのである。
 [「EE」外販や、Linux稼動も試行したようだが、市場は動かなかった。]

 今まで、家電機器はASICを使うのが普通だった。ハードで機能実現することを狙っていた訳だ。ハードだから確実で高速な作動が実現できる。しかし、当初の設計コンセプトと異なる機能を追加することはできない。チップ開発には時間もかかるし、大量販売できないと、コスト回収さえできないことになる。大量販売可能なトップシェア企業と、特殊機能による差別化企業が、収益があげ易い競争環境ができあがっていた訳だ。
 ところが、ASICを安価な汎用高速CPUで代替することができるようになる。これで、競争のルールは一変する。
 これからは、機能追加はソフトのバージョンアップだけで済む。今までの製品開発とは全く異なる仕組みが動き始める。
 当初はASIC対汎用CPUの競争になる。しかし、CPUが圧倒的なコスト競争力を発揮できれば、勝負は決まる。ASICで悦に言っている企業が突然零落するかもしれない。

 安価で高性能なのだから、IBMは、一般ビジネス用CPU(Linuxサーバや通信制御機器)としても広く使うことになろう。
 しかも、PowerPC路線なら、ビジネス用にもスムースに浸透できる。・・・新高性能チップと新OSの抱き合わせ開発は負担が大きすぎるから、PowerPCの延長という現実路線を採用したのだろか。

 どうあれ、安価な高速CPUが登場し、チップの外販をしてくれれば、応用が一気に広がることになる。市場は大きく変わる。


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