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2003.11.27 |
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テレビ市場の競争激化…2003年11月、年間販売台数1800万台の世界最大のテレビメーカー「TCL-THOMSON」が誕生、とのニュースが流れた。市場シェアは、米国12%(RCAブランド)、欧州8%、中国18%という。研究開発に携わるエンジニアの数は1,100名に達する。(http://www.thomson.net/gb/06/doc/TCL_Thomson_Electronics_press_presentation.pdf) これからTVがインターネットに繋がってくる。この時代に生き延びるためには、継続的に巨額な研究開発投資が不可欠といえる。 その上、耐久消費財であるから、ブランド力も必要となる。 TCL-THOMSONが動くのは当然だと思う。 日本の巨大テレビメーカーは、これでコスト競争力と、中国市場の浸透力では、優位に立てないことがはっきりしたといえる。 ところが、日本企業が家電では負ける筈がない、と語る人が多い。フラットディスプレーテレビ市場が急拡大しているため、底力を発揮すれば一気に復活だ、と語る人もいる。 このような楽観的な見方が通用すればよいのだが。 現実を見てみよう。
まずは、ブランド力である。 日本の家電企業には圧倒的なブランド力があると言われているが、Interbrandのブランド価値で見ても、IBMやIntelといったIT系企業がずらっと並び、家電企業は目立たたない。家電ブランドはマイナーな地位に陥ったのだ。 日本の家電企業もトップ100位に僅かしか入れない。その地位も高いとは言い難い。例えば、韓国SAMSUNGの評価は108.5億ドルだが、PANASONICはその3分の1に満たない、32.5億ドルだ。Matsushita、ナショナル、PANASONICといった不合理な仕組み分を割り引いても、驚くほど低い評価である。 そのSAMSUNGは、すでに、70インチプラズマディスプレー(1920 x 1080 pixel)、54インチ液晶ディスプレー(1920 x 1080 pixel)、を公開している。もちろん世界最大である。 こうした企業が、これから本格的にテレビ市場に入ってくるのだ。 もし、フラットディスプレーが主流になるなら、TCL-THOMSONを含め、既存のテレビメーカーは市場を大きく失う可能性もある。 すでに、その動きが始まっている。 フラットディスプレーテレビで存在感が薄かったソニーは、2005年にはテレビ市場の10%を占めると見て、SAMSUNGと液晶分野で提携する道を選ぶことになった。 (http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200310/03-1028/index.html) 松下電器産業もこの分野での地位を確保しているとは言い難い。 2003年8月の主力モデルを見ると、50インチプラズマディスプレー(1366 x 768 pixel)、20インチ液晶ディスプレー(640 x 480 pixel)、である。640 x 480 pixelという荒い液晶パネルを使っているのだから、仕様で先頭を走ろうとの方針ではない。 (http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn030822-1/jn030822-1.html http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn030821-3/jn030821-3.html) IT産業では、普通のデスクトップ用でも1,024×768 pixel(SXGA)だ。17インチクラスは1,280×1,024 pixel(SXGA)、20インチクラスになると1,600×1,200 pixel(UXGA)が普通だ。 といっても、表示精度を向上しても、テレビ放送の精度がそこまで達していない上、信号処理コストが大きいから、高pixelにしても無駄である。典型的な家電発想が見て取れる。 この姿勢は、挑戦的仕様を提示するSAMSUNGとは正反対である。明示的な仕様で常に先頭を走らないと落ちこぼれかねないIT業界では極く普通だ。 家電業界は、IT業界型競争を仕掛けられているのである。 THOMSONにしても、テレビを従来型家電ビジネスに変える準備に忙しい。テレビ市場4位では、落ちこぼれかねないから、ネットワーク型テレビで飛躍する道を探ってきたのである。すでに、DSLモデム市場でもトップシェアを占めたし、インターネット経由のTV放送システム開発にも注力している。 (http://www.thomson.net/gb/06/c03/030827.htm) 日本企業と比較すれば、THOMSONは半導体技術が弱体に見えるが、社内統合を避けただけと見た方がよい。ST Microelectoromicsとの結びつきは強化一途である。半導体製造は規模の経済が活きるから、半導体は統合より独立の方がメリットがあるかもしれないのだ。 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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