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2003.12.25
 
 


TVも「XX Inside」化か?…

 液晶TV市場へパソコン業界が参入し始めることで、競争が激化し始めた。2003年の米国クリスマス商戦でも、パソコンベンダーが液晶/プラズマのフラットディスプレー製品の売上を大幅に伸ばした模様だ。
   → 液晶TV大競争時代の幕開け… (2003年9月28日)

 TCLとTHOMSONの合併で、テレビ業界全体の大変動も始まった。
   → テレビ市場の競争激化… (2003年11月27日)

 そして、ついに、中国のテレビメーカーXocecoが液晶テレビの本格的生産を始めた。
 製品ラインを見ると、12/17/20/22/30/32インチと総揃え状態である。
  (http://www.xoceco.com.cn/englishpage/products/tv/tv.htm)

 このようなハイテク製品ビジネスが中国で早くも始まってしまったのは、液晶テレビの物理的構造が単純になり、部品入手も簡単になったからである。

 液晶パネルは韓国/台湾企業がいくらでも提供してくれる。なかでも、韓国企業は大型ガラス基板をいち早く導入しているから、大量購入すれば極めて安価だ。
 多数の半導体を組み合わせる必要もなくなった。パソコン用モニタ市場が早くから立ちあがったお蔭で、パネル駆動回路と画像処理回路に数多く使われていたチップが次々と統合されたからである。システム・オン・チップが気軽に購入できる時代になったのだ。
 こちらは、例えば、米国のファブレス企業Pixelworksが製品を提供してくれる。
  (http://www.pixelworks.com/about/)

 Xocecoの研究開発人員は発表によれば、約50人であるから、いくら単純な製品になったからといって、流石に最初から社内開発はできまい。しかし、Pixelworksのような企業へ一度開発委託すれば、ソフト開発は、すぐに自力でできるようになる筈だ。
 というのは、ソフトといっても、システムの基本はチップ・メーカー側がほとんど準備しているからだ。最初にソフトのプラットフォームとモジュールを決めれば、次ぎからの新製品はほとんどモジュールのバージョンアップで済ませることができる。効率的な新製品開発の仕組みができあがる訳である。
 要するに、ソフト以外の無駄な投資を完璧に抑え、超安価な新製品を次々と上市する仕組みができあがったのである。

 一般に、中国現地企業は、コピー型製品の大量製造能力は極めて高い。安価な部品を迅速に調達し、低コストで素早く大量に組立てるビジネスには自信を持っている。このため、製品開発体制が整えば、動きは速い。日本メーカーの大量生産移行に遅れることなく、液晶ディスプレーを販売できる状況にあるといえよう。
中国の代表的メーカー(通称名)
TCL TCL-THOMSON
創維 Skyworth
康佳 Konka
長虹 ChangHong
海爾 Haier
海信 Hisense
厦華 Xoceco
上海広電 SVA
熊猫 Panda
福日科技 Furi
樂華 Rowa
厦新 Amoisonic

 当然ながら、このチャンスをXoceco以外の中国企業が見逃す筈がない。中国メーカーの安価な液晶テレビが市場を席巻する可能性は高い。
 (中国企業の変身は早い。製品ラインの一気転換や、アップダウンも激しいから販売量で実力を図らない方が無難である。右表はどれだけ企業が多いかを示すために列挙しただけで、カットした有名ブランドもある。)
 米国では、すでに、20インチの小売り価格が1000ドルを切った。低価格化は加速一途と見て間違いない。

 言うまでもないが、液晶パネルも、チップも、規模の経済が効く。

 従って、液晶パネルメーカーのコストリーダー、最先端を走るシステム・オン・チップ企業、安価大量生産の中国テレビメーカー達が手を結ぶと、とてつもないコスト競争力が発揮される。もしも、この可能性が高ければ、この勝ち組みに、DELLのような販売力を持つ企業も相乗りしてくると思われる。
 そうなると、勝負ありだ。

 特に、開発投資/製造工場投資の膨大な負担覚悟でシステム・オン・チップを内製している企業は、すぐにコスト競争力を失うかもしれない。中国企業へ大量外販をしない限り、生き残れないのではないだろうか。
 下手をすると、テレビに「Pixelworks Inside」ロゴが表示される可能性さえある。

 家電の雄、Philipsの動きを見ると、早くからこうした流れを予想していたように映る。
 液晶パネル調達のため、早くから、合弁企業LG Philips LCDを設立したし、半導体開発も社内にこだわらず、技術力が高いPixelworksと提携した。“Teaming up with Pixelworks is part of our strategy”なのである。
  ( http://www.semiconductors.philips.com/news/content/file_981.html)

 日本企業は何社が勝ち組みに残れるだろうか。
 安価な部品を集めて勝負してくる中国企業に対して戦うには、デザインや機能で勝負するしかないが、基本的な仕様はチップで決まっている。差別化は簡単ではない。


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