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2004.1.20
 
 


フラットディスプレーTV競争の結節点…

 ついに、コンシューマ・エレクトロニクスは韓国という評価が定着したようである。

 現在、コンシューマ・エレクトロニクス産業を牽引しているのは、プラズマTV/液晶TV、DVDプレーヤー、デジカメ、ケータイであるが、「顔」はどう見てもフラットディスプレーTVだ。
 2004年1月に開催されたコンシューマ・エレクトロニクス分野の世界最大のイベント「CES 2004」で、韓国企業がその「顔」で王者であることを見せつけた。
 毎度おなじみになった、巨大な製品を、今回も展示したのである。お蔭で、「常に黒山の人だかり」だったそうだ。

 なかでも、Samsung の世界最大80インチPDPのインパクトが強烈である。横幅は人の身長ほどあり、大きさがスクリーンとほとんど変わらない。しかも、画素数が1,920×1,080であり、完璧なHDTV解像度を実現している。
 液晶についても、世界最大57インチを展示した。こちらも、画素数は1,920×1,080である。
 両者ともに、パネルだけ自社という訳ではない。画像処理回路も自社開発の「DNIe」(Digital Natural Image Engine)を用いている。
 一方、LGは、世界最大の地位は逃したが、76インチと55インチ品を展示しており、先端製品開発力を誇示した。
  (西川善司氏のCES 2004見学レポート http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040109/dg29.htm)

 これで、韓国勢は、完全にブランドイメージを作り上げた、と見てよいだろう。

 これからは、米国の消費者は、最先端ハイエンドのコンシューマ・エレクトロニクス製品を購入するなら、韓国製品を第一に考えるようになろう。日本製品はマスマーケット用と見なされる。
 換言すれば、日本製品のブランドプレミアムは急速に下がることになる。

 この流れは、すでに現実化し始めている。
 米国でのインターネット販売を見ると、フラットディスプレーTVの代表的ブランドはほぼ定着しているようだ。
  ・韓国勢は、Samsung と米国企業Zenith(LG傘下)
  ・日本勢は、Pioneer、Sharp、Toshiba、Panasonic、Sony(液晶パネルはSamsungとの合弁)
  ・欧州勢は、Philips(液晶パネルはLGとの合弁)
 これらのブランドの製品価格を比較すると、Samsungの価格が高止まりしているように見える。
  (例 http://www.bestbuy.com/site/olspage.jsp?id=pcmcat14300050000&type=category&cmp=)

 こうしたなかで、日本勢で気を吐くのは、液晶に賭けるシャープだ。

 2004年1月8日、経営方針についての会見で、画素数1,920×1,080の45インチを年内に発売するとの発表があった。最新鋭の亀山工場が立ちあがり、コストリーダーシップが図れるとの自信を披瀝したものといえる。液晶分野への投資を続行し、液晶事業の売上高を2006年度には倍増させ、1兆円にのせる計画である。
  (http://www.sharp.co.jp/corporate/info/policy/policy2004/index.html)

 不退転の決意とも受け取れるが、環境をみれば当然の決断だろう。
 高収益を実現しているとはいうものの、変化のスピードが速いから、果敢な展開なくしては地位が保証されないからである。すでに17インチ以下のサイズでは、急激な低価格化が進んでいる。低価格の参入が激しく、このセグメントで利益を出せる時代は終わったと言える。この流れは、早晩、19インチに移る。
 従って、早めに大型化の流れを作り、先に利益をあげる必要がある。
 収益の柱は、2003年は19インチだったが、2004年は26インチに軸足を変える位のスピードで動かなければ、躓きかねないのである。

 しかも、大型化といっても、マスマーケットに合う価格にしなければ、成功はおぼつかない。大型化競争に目がとまり易いが、実は価格削減競争なのである。
 そのなかで、市販価格数百万円するような、イベント展示用の超大型サイズの開発でなく、市場をこじ開けることができる実践的な大型サイズで勝負するというのは、理屈ではその通りである。
 しかし、コスト競争力の根源がはっきりしていなければ、意味は薄い。

 シャープの場合は、この部分の力は未知である。

 システム液晶技術なら、シャープは圧倒的である。技術がまだ若いからだ。液晶テレビでも、同じ時代があった。誰が見ても、シャープの技術は跳び抜けていた。
 しかし、液晶テレビの製造技術は成熟してしまったのである。かつてのように、シャープの独自技術が輝いて見える時代は終わった。現在は、既存技術での限界競争なのである。先端技術とはいえ、生産性向上勝負と言える。
 これは、今までシャープが得意としてきた技術開発スタイル、「独自性」とは正反対である。単なる生産性向上だけなら、シャープがこの分野で先頭を走れる保証は無い。

 例えば、ゴミの付着率が同じ工場なら、大型化するだけで、不良率は自動的に高くなる。徹底的なクリーン管理が重要になる。
 液晶材注入も面積が広がればスピードが下がる。生産性向上には、細かな調整が必要となる。

 こうした高度な労働集約型業務で手抜きをすれば、歩留まりは確実に下がる。そして、コスト競争力を失っていく。
 単純な生産性向上だけなら、過酷な業務に耐えられる熟練したエンジニアの数で勝負がつくとも言える。
 ここだけの勝負なら、エンジニア間の競争を煽り、優秀なエンジニアを厚遇する、韓国企業が優位かもしれない。

 と言うことは、日本企業が飛躍できるチャンスは、独自の新生産システムを立ち上げることと言えそうだ。イノベーションなくしては、高収益維持は難しいのである。
 その観点では、最新鋭亀山工場が、画期的な仕組みを実現したか否かが、勝敗の鍵を握ることになろう。

 この結果は、シャープのみならず、日本のコンシューマ・エレクトロニクス企業の将来を決める分水嶺になるかもしれない。


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