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2004.2.11 |
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陶器王国風前の灯火…陶芸作家が増えている。趣味というより、本格的な小規模工芸作品製造業として営業しているものが多い。土や、釉薬を工夫して、独特の焼き物を提供している作家も多く、話題性も高い。なんとなく、文化の香りがただようから、地域振興にも繋がることになる。地元も大歓迎だ。 なかには、規模は零細とはいえ、本格的な生産体制を整えて、事業として進めているものもあるそうだ。 既存の小規模陶器生産者も、このような流れに乗ろうと、「伝統的工芸品」としての高付加価値化を図っている。デザイナーを登用したり、ブランド化を進めている。 失礼ながら、窯業界は、これが唯一の希望の星なのかもしれない。 この業界は、1990年以来消費の低迷が続いており、破壊的な価格のアジア製品の流入で、業績不振にあえいでいる。 確かに、商品の高付加価値化は、成熟社会ならではの成長パターンである。伝統とか、地場の独自性を発揮すれば、新境地を切り拓くことができる可能性は高い。この動きを支援すべき、と考える人も多い。 しかし、この考え方をドグマ化するのは危険だと思う。 昔の製品のコピー品を作り始めたり、気鋭のデザイナーの力を借りて、新境地をひらく活動に短絡しがちだからである。 これは、技術だけは守り続け、表面的な形だけを変えれば生き残れる、との思想に他ならない。 このため、技術に関しては、徹頭徹尾、保守的な姿勢を貫きかねないのだ。 優れた新技術があっても、はなから使おうとしない。 この発想は、伝統の意義の誤解から発生しているのではないだろうか。 そもそも、伝統品の価値とは、博物学的な技術の希少性ではなかろう。製品の技巧に見て取れる、研ぎ澄まされた精神性に心を打たれるから、ファンがつくのだ。 営々と築いてきた、もの作りの考え方に則って、新しい価値を創造することに意味がある筈だ。新技術を入れたからといって、原則を守るなら、価値を失うことなどありえない。 伝統の意義を再確認すべき時だと思う。 そもそも、従来技術を駆使して苦労して作った新製品で市場活性化を狙うのは、思っているほど簡単ではない。多くの場合は見かけが変わるだけの印象しか与えない。顧客はその価値に気が付くとは限らない。従って、マーケティング費用が嵩む割に、効果が上がらないことが多い。 しかし、新技術登用なら、今まで市場になかった新商品を生み出すことができる。誰がみても、新しいものを市場に投入できるのだ。顧客ニーズにあえば、すぐに市場は活性化するだろう。 沈滞している市場に、「喝」をいれることができるのだ。 チャンスがあるなら、挑戦すべきだと思う。それが、伝統を生かす道だと思う。 ところが、この業界は、従来からの技術の枠を守り続けたいようで、挑戦を避ける。伝統技術伝承あっての陶器事業、とのドグマから離れようとしない。 素人からみれば、この業界が守ろうとしている技術とは、近代工業技術の1つに過ぎない。にもかかわらず、古来から続いてきた価値ある技術と思い込んでいる。 具体的に述べよう。 伝統技術を重んじると言っても、今時、薪で焼く窯を使う工場はあるまい。小規模工場は電気炉の窯を使うのが普通だ。ニクロム線ヒーターを装備した、通称トンネル窯である。 電力をコントロールすることで、焼成温度の微調整を図り、色出しを工夫する。これが、独自技術に相当する。窯での焼き上げ方で製品の特徴を出してきたのである。 しかし、この窯は、ヒーターの性能上、温度は摂氏1000度までしか出せない。 (中規模窯になると、電気でなく、燃料を用いて摂氏1000〜1400度に上昇させるものが多い。) ところが、技術革新が発生した。ヒーターの材質を変えることで、上限を1400度に高めることができるようになったのである。おそらく、ヒーター寿命も延びるだろう。 (高純度炭化珪素を再結晶させて作った発熱体を使う。(1) 金属ではないため、高温に耐える。) ここまで温度が高くなると、硬質の陶器が生産できる。 今までは、硬質のものとは、磁器を意味していた。 ところが、磁器は、陶器と違い、還元反応が必要となるから、単に温度を上げるだけでは作れない。大手間である。当然、高価になる。 ところが、炭化珪素発熱体のヒーターを使えば、硬質の陶器が簡単に作れるようになる。 この技術を使えば製品は一変する筈だ。 窯業に一大転機が訪れているといえよう。 日本の誇る陶器産業が、変身を迫られているのである。 ところが、ほとんどの企業は動くつもりがないようだ。チャンスとも、脅威とも思っていないようだ。技術革新を促進させる施策も耳にしない。 このままなら、新技術で戦う方策を見出した国が、一気に市場を席巻するのではなかろうか。 陶器王国風前の灯火かもしれない。 --- 参照 --- (1) http://www.tokaikonetsu.co.jp/products/erema_h.html 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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