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2004.2.12
 
 


Tivo制覇の可能性…

 2004年1月27日、TivoがStrangeberryを買収すると発表した。(1)
 目立たない動きではあるが、産業構造の変化を示すものと言えそうだ。Strangeberryは小さなベンチャーだが、ブロードバンドTV技術に優れている。これで、リビングルームにブロードバンドが入って来るために乗り越えなければならないハードルが又低くなった。
 様々なコンテンツを、ブロードバンドネットワークを介して、「Tivo DVR」で視聴できる体制ができあがりそうである。そうなると、「Tivo DVR」は、ニッチから、巨大メディアまでの作品提供企業群を一挙に抱えることになるかもしれない。

 このように考えるのは、このところ、「Tivo DVR」の売れ行きが絶好調だからだ。
 CATV、衛星、地上波のどれでも使える上、40時間の録画可能だ。これが、199ドルで入手できる。
 サービス料が月額13.95ドルかかるが、買取なら299ドルだ。(2)
 機能を落として廉価を実現しているのではない。ブロードバンドにも接続できるから、フルスペック品に近い。

 199ドルは、一般のハードディスクレコーダーと比べれば、激安に近い。すぐに買いたくなる価格である。
 しかも、この機器は視聴者の好みにあわせて、自動的に録画する仕組みが搭載されているから、極めて便利だ。多チャンネルテレビの社会にいれば、一度はまれば、抜け出る人はまずいないだろう。
Tivo 製品提供メーカー
製品 メーカー
DVR (Tivo)
Sony
Philips
others
DVD Pioneer
Toshiba
DIRECTV
衛星受信機
Samsung
Hughes
Philips
RCA
Sony
others

 従って、普及が進めば、Tivoが家庭の標準機器になる可能性は高い。
 そうなると、Tivoに認定されない機器メーカーは市場から弾き飛ばされることになりかねまい。業界構造が一変する訳だ。
 (2003年第3四半期報告で示されたメーカーは表の通り。) (3)

 しかも、デジタル家電の特徴で、高機能化が急速に進む。

 まずは録音時間の延長だ。
 ハードディスク録音機器も、ビデオテープデッキ時代の録画時間競争に陥る可能性は高い。しかし、Tivoは、すでに大容量製品が用意されている。大量録画ニーズの高まりを待っている状態と言えそうだ。
 例えば、Maxtor QuickViewのハード・ディスク・ドライブ(80〜300GB)でアップグレードすれば、録画時間を70〜344時間増やすことができる。(4)2時間番組が、150本も録画できるのだから、わざわざビデオディスクに録画する必要性は薄れてしまう。とりあえず、見そうな番組は、自動的に、なんでも録音しておく時代に入った訳である。
 現時点の価格は、1,000ドルを越すが、価格急低下は必然である。

 Tivoが最初の製品を発売したのは、1999年のことだが、最初からこうした流れはある程度予測されていた。
  → 「ビデオ機器市場における日本企業の危機…」 (2000.5.1)

 ところが、思ったほと普及が進まなかった。最近になって、ようやく予測されていたペースで普及が始まったと言えよう。

 と言っても、この装置が本当にインパクトを与えるのは、これからである。ブロードバンドとどのように繋がるかでインパクトの大きさが決まることになる。目がはなせない。

 Tivoの進め方は、堅実である。テレビ画面がエンタテインメント中心になるよう、着々手を打ってはいるものの、急いで市場を開拓するようなことをしない。
 2003年になって、ようやく「Home Media Option」(99ドル)を投入した。これで、LANで接続しているパソコンに入っているコンテンツをを使えるようにした。AV作品だけでなく、個人が貯めている写真が、TV操作で見れる仕様である。

 この程度なら、日本では誰も驚くまい。たいして珍しい機能ではないからだ。
 ところが、ついに鍵を握りそうなコンセプトが登場した。

 「Tivo to Go」(5)である。USBの鍵をパソコンに差すだけで、暗号化されている録画番組がパソコンでも見れるようになる。
 ネットワークを機能させるためには、著作権保護の問題をクリアしなければならない。この問題をクリアしなければ、コンテンツ提供者の商売が成り立たないから、ブロードバンド化は進まない。
 「Tivo to Go」は、これを極く簡単なやり方で突破する方策を提起したと言える。
 これで、ようやく家庭内のネットワークが本格化することができる。このことは、Tivoが家庭内サーバーの役割を果たすことになるのだ。
 上手く普及が進めば、コンテンツ提供者がTivoと組み始める。家庭内の奔流となるかもしれない。

 家庭は、Tivo一色になる可能性さえ見えてきた。
 OSはLinuxのようだから、コミュニティ活動も発生し易い。(6)
 コミュニティが様々な利用法の試行を進めれば、ここからキラーアプリケーションが生まれる可能性もある。
 Tivoがインターネット時代のTVの代名詞になるかもしれない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.tivo.com/5.3.1.1.asp?article=198
(2) 80時間モデルは299ドル http://www.tivo.com/2.0.asp
(3) http://a423.g.akamai.net/7/423/1788/de84212d5217ae/www.tivo.com/pdfs/reports/Q3_2004_press.pdf
(4) http://www.weaknees.com/
(5) http://www.tivo.com/5.3.1.1.asp?article=196
(6) http://www.tivocommunity.com/tivo-vb/


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