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2004.3.17
 
 


メガ医薬品企業の将来…

 2004年3月12日、Novartis がAventis 買収に動いているとのニュースが流れた。(1)
 Sanofi-Synthelabo のAventis 敵対的買収への対抗策(「white knight」)である。両者が合併すれば、Pfizerに次ぐ世界2位の規模の超大企業が誕生することになる。

 もともと、製品ポートフォリオと買収できそうな企業リストから考えれば、Novartis は、そのうち大手米国企業の買収に動くと予想されていたが、Aventis 買収はいかにも唐突である。突然の事態で、新たな買収候補が出てきただけなのかもしれないが、本当に意義があるかははっきりしない。
 (Sanofi-Synthelabo が買収に挑戦するというニュースが流れただけで、Sanofi-Synthelabo とAventis の株価は上昇した。Novartis を絡ませることで、さらに買収価格を上昇させる試み、との見方も成り立つかも知れない。)

 企業の巨大化だけで、収益力強化に繋がる時代は終わったと思っていたが、まだまだメガカンパニー化は魅力的なようだ。

 薬剤の研究開発費用の膨張は凄まじい。お蔭で、研究開発費が売上の2割かかっても驚かないようになってしまった。
 こうなると、巨大な研究開発費を投入している企業が優位に見える。研究開発力強化のためにメガカンパニー化を図る動きに見えるかもしれない。

 しかし、ここだけを見ていると、もっと大きなコストを忘れてしまう。マーケティングの費用だ。これだけで、4割にのぼる。合併したからといって、この部分が合理化できると思うと間違いである。コストがかかるMRの数を減らせば売上減になりかねないから、手をつけられないのである。
 このため、医者の側から見れば、今やMRだらけで、まともに対応ができなくなっている。

 ところが、この状態を変え、飛躍を図ろうとする企業が登場しないのである。この先、収益源の大型品の力が落ちることが予測されていても、さっぱり動く気が無さそうな企業も多い。
 知恵で戦う業界に見えるが、マネジメントの実態は逆なのだ。

 と言うことは、巨大企業は、結局、極く少数の勝ち組みと負け組みに分かれることになろう。

 といっても、中堅企業が優位という訳でもない。
 少額の研究開発費で戦うためには、高度な技術マネジメントを強いられる。方向を誤まったり、虎の子のプロジェクトが失敗すれば、退出を余儀なくされるからだ。

 マーケテイングと研究開発の両面での革新を早く進めた企業が生き延びるだけのことである。
 従って、変革のための土台作りにならない規模拡大は、没落の準備と言えよう。

 --- 参照 ---
(1) http://www.reuters.co.uk/newsPackageArticle.jhtml?type=businessNews&storyID=474481§ion=finance


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