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2004.8.30
 
 


オリンピック放送の衝撃…

 アテネオリンピックで、放送の全デジタル化が一歩進んだ。
 松下電器産業の半導体メモリー「P2カード」を用いたシステムが使われたのである。

 この分野は、2社寡占状況であり、互いに競争しているとはいえ、技術投入スピードはコントロールされている印象がある。放送業界を震撼させかねない「技術の先取り」や、機器の安価化には、消極的姿勢をとると見ていたが、どうも、そうではないようだ。
 「P2カード」投入は、予想よりかなり早かったからだ。

 「P2カード」とはSDカードを搭載したPCカードスロット規格に適合するカードである。現在の容量は1枚で4GBで、記録時間は16分だという。
 発売されたはカメラには5スロットあるから、すでに実用上問題ない記録時間を実現したといえよう。この先、128Gまで拡大する予定になっており、ソリッドステート化の流れができあがった。(1)

 このシステムが動くと、カメラには駆動部分がなくなる。
 カードをパソコンにダイレクトに差し込めば、瞬時に閲覧・編集できることになる。編集時間の短縮が生命線の報道のニーズに応える初めての仕組みである。しかも、USB2.0、IEEE1394、Ethernetでファイルの高速転送ができるから、放送のワークフローが大きく変わることは間違いない。

 カード価格は、おそらく、10万円台前半だろうが、消耗品ではないから利用拡大は早いかもしれない。

 すでに、一般消費者用のデジタルビデオカメラではハードディスク搭載も実現しており、パソコン編集も急速に普及し始めている。プロ用とは違うとはいえ、録画規格の多少の違いと見ることもできよう。
 このことは、放送コンテンツ作成の業界構造が変わることを示唆している。そして、同時に、放送インフラ業界の構造も揺らぐことになろう。

 放送業界は、電波の独占的使用による寡占が認められているため、安定収益を謳歌し続けてきた。
 この状況が、技術進歩で打ち破られることになりそうである。

 というのは、全デジタル化したところで、地上波放送事業や衛星放送といったインフラ事業の再興につながるとは思えないからだ。デジタル化しても、メリットは多少のチャンネル数の増加と美しい画像位のものでしかない。
 一方、デジタル化されれば、放送独特の規格にたいした意味はなくなる。その上、インターネット上での配信が簡単になる。しかも、コンピュータとデータ記録デバイスが安価になってくる。
 そうなると、放送インフラの競争から見れば、地上波/衛星放送といった高価なインフラの優位性は消え去る可能性が高い。
 家庭でも、ブロードバンド・インターネット回線が基本装備化すれば、アンテナ線を用いる放送機器類は排除されかねまい。家庭にとって、地上波/衛星放送の魅力は消え去るのだ。

 オリンピック放送を梃子にして、全デジタル化放送機器開発が進んでしまった。これで、使いやすいソフト開発が促進させる。
 その結果、デジタル放送用のコンテンンツ作成費用の大幅削減が進む。放送業界にとっては、コスト削減効果が期待できる。しかし、同時に、競争相手を続々と登場させることにもつながる。

 放送のデジタル化は、既存の放送インフラ業界の没落開始でもある。放送業者は早晩変身を迫られることになろう。

 --- 参照 ---
(1) http://matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn040225-1/jn040225-1.html


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