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2004.12.14
 
 


新型携帯ゲーム機投入の意味…

 2004年12月、携帯型ゲーム機の「ニンテンドーDS(1)」と「プレイステーション・ポータブル(PSP)(2)」が発売になった。
 マスコミ報道によると、どちらも人気沸騰らしい。

 両雄の競争で市場が活性化するとの期待が膨らみ、業界関係者は久方ぶりの祝杯をあげていることだろう。

 と言うのは、2003年の国内市場規模はソフトが8.2%減でハードが16.7%減と、不調だったからだ。このところ、ずっと、マイナス成長が続いているのである。(3)

 ニンテンドーDS は、そうした業界の期待に応えようと、練りに練って企画した商品に映る。

 ダブルスクリーン化により、タッチパネル操作を導入したのは、ゲーム熟達者でなくとも、すぐに使えるように考えた結果と思われる。一般顧客を呼び込むことで、市場活性化を図ったのだろう。

 斬新な機器だが、同社のヒット商品であるゲームボーイ アドバンスのソフトとの互換性は維持している。
 新機器は、既存ソフトの販売促進にも繋がるようにしているのだ。

 しかし、なんといっても、新機器の目玉は、ワイヤレスでプログラムがダウンロードできる機能である。
 例えば、プログラム試用もできるし、他のメディアとの即時連携も図れる。このことで、遊びのシーンは急激に広がる筈だ。

 新しい遊び方が生まれる可能性がある訳だ。

 これに対して、PSPの方は、ゲーム専用機としてのコンセプトから離れようとしているようだ。
 新機能は満載だが、ゲーム機という観点で見ると、美しい大きなディスプレーという点と、ワイヤレス対戦可能という点を除けば、余り新しさは感じない。
 ところが、こちらはコンソールゲーム機器用のソフトは使えないのである。

 名前はプレイステーションだが、以前の系譜とは繋がっているとは言い難いのだ。

 と述べると、大した商品でないと批判的に見ている、と誤解されるかもしれない。

 実は、その逆である。PSPを見たとたん、仰天した。

 と言っても、ゲームの機能の凄さに驚嘆した訳ではない。驚いたのは、その値段である。なんと、税別なら19,800円だ。

 この価格では、どう考えても、しばらくは利益どころか、かなりの赤字を背負い込むことになるのではなかろうか。

 一寸仕様を見れば、素人でもその凄さがわかる。

 主要外部調達部品はディスプレー、メモリ、筐体の3点だ。どれもわざわざ高価なものを使っている。
 TFT液晶は、バックライト付4.3インチのワイドスクリーンだ(480x272画素)。視野角も広く、極めて高品質なパネルを使用している。
 メインメモリは32MBを搭載。
 これらを、美麗な筐体に格納しているのだ。

 コアとなるCPU チップは自社製だから、量産効果でコストダウン効果が図れるとはいえ、MIPSベース32ビットの高性能品である。しかも、グラフィック能力は高度だから、安価に簡単に作れるものではない。
 しかも、対応コーディックはビデオ用がH.264とAVC MP Level3、オーディオ用はATRAC3plusとMP3を揃えている。
 駆動は、3.6V/1800mAhのリチウムイオン電池だ。当然ながら、ACアダプタ付属である。

 以上の部品を集めただけても、かなりの価格になる。

 ところが、これに、さらなるコスト負担がのしかかる。

 その最大のものが、超小型光ディスクドライブである。
 しかも、光ディスクだけでなく、ICメモリーリーダーも搭載している。
 このお蔭で、ゲームの設定情報が記録できるというメリットが生まれるが、どう見ても、メモリーの本命用途はコンテンツ用メディアである。

 もちろん、ワイヤレス仕様だから、無線LAN(IEEE 802.11b)も装備されている。
 ところが、外部端子はこれだけに留まらない。USB 2.0とIrDAも用意されているのだ。

 このように見ればわかるように、まさに、機能満載と言える。

 従って、発展性という観点では、とてつもない潜在力を秘めた機器ということになる。
 しかし、現時点で、ゲーム機器としては、美しい画面以外に、具体的な魅力を打ち出しいるとは言い難い。

 要するに、PSP の訴求ポイントはゲーム機能ではなく、ビデオ、オーディオ、フォトといった新応用ということなのだろう。

 そういえば、2003年5月13日、久夛良木SCEI社長はこの商品を「the“Walkman”of the 21th century(4)」と呼んだ。従来型のゲーム機の次元の商品ではないのかもしれない。

 そう考えると、PSP 事業とは、極めてハイリスクな挑戦ということになる。携帯型ゲーム機市場でニンテンドーとシェア争いを繰り広げるのではなく、全く新しいジャンルを切り拓くことになるからだ。

 これは、考える以上に難しい挑戦である。

 と言うのは、ビデオ、オーディオ、フォト応用と簡単に言っても、ユーザーは一般消費者だからである。

 一般消費者が、USB接続でパソコンを設定して、コンテンツの連携を簡単に図れるとは思えない。と言って、USB接続の専用機器投入との発表はない。
 そうなると、コンテンツ用のメディアは、ソニー独自規格の、メモリーステックと超小型光ディスクを使うしかない。AVやカメラといった分野のソニー製品はこの規格対応だから、ソニー商品を揃えている人にとっては使いやすいのは言うまでもないが、他の規格の機器の所有者にとっては、連携がとれないことになりかねない。
 従って、ソニー規格が標準の地位を獲得できないと、厳しい試練に晒されることは間違いない。

 と言う事は、ソニーは、PSP 上市を通じて、コンテンツ流通の標準獲得の不退転の決意を表明したとも言えそうだ。

 しかし、ソニーがいくら頑張ったところで、保守的なコンテンツ産業が、すぐに動くとは思えない。
 市場が開けるまで、長期間を要する可能性は高い。

 その間の投資負担は小さくはない。
 ソニーは大きな賭けに出たのかもしれない。

 --- 参照 ---
(1) http://www.nintendo.co.jp/ds/
(2) http://www.playstation.jp/psp/
(3) 「2004CESAゲーム白書」 http://report.cesa.or.jp/news/release040726.html
(4) http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20030514/psp.htm


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