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2005.1.26
 
 


日本発ドリンク文化は伝播するか…

 2004年、“King of Sports Drinks”の「ゲータレードエキストラ」が大々的に発売された。(1)
 日本市場に合わせ、独自の中味/パッケージを登用した戦略商品である。

 「スポーツドリンクとは、スポーツ終了後に喉が渇く時に飲むもの」というコンセプトの下で、アスリートをターゲットして大々的な販促活動を行ったようである。(2)
 オリンピックの熱気に乗って、一気に市場に浸透しようと図ったのだろう。

 この販促結果は長期的に見てみないと、よくわからないが、日米文化のどちらが主流になるかを占う点で、今後の市場推移をよく見ておく必要がありそうだ。

 米国型の訴求は単純明快である。
 スポーツドリンクとは、糖分(庶糖/ブドウ糖/果糖)、クエン酸、ビタミン、ミネラル(ナトリウム/カリウム)をバランスよく配合することで、水より速く吸収し、体液を調整することができる飲料と考えるのである。
 要するに、飲めば、すぐに喉の渇きが消え、体温の上昇を抑えることができるし、運動機能も維持される訳である。
製品セグメント (米国)
レギュラー炭酸系
清水(ミネラルウオーター等)
“Thirst Quencher”
ミルク/乳系/乳代替
ジュース系(果汁/トマト/野菜)
発泡水系(微発泡/炭酸/ソーダ/トニック)
RTD 嗜好飲料(紅茶/コーヒー/ココア)
その他

 この知識は、米国では常識化しているようである。

 もともと、米国では、スポーツドリンクは“Thirst Quencher”とか“Energy Drink”といった名称がついたりして、スーパーマーケットで普通に売られており、特殊なセグメントの商品ではない。

 一方、日本のドリンク市場で見かける機能性飲料・健康志向飲料を、米国のスーパーマーケットのドリンクの棚で見つけることは困難である。(3)

 これは、米国人が健康を軽視していることを意味している訳でない。
 肥満防止とダイエット志向は顕著であるし、Convenienceを前提としたHealthとWellbeingへの流れはさらに強くなっていると見てよいと思う。
 つまり、効能を期待できそうな機能や健康効果を求める場合は、飲料ではなく、サプリメントを服用するのが普通なのである。米国ではサプリメントは安価だから、わざわざ飲料にそのような効果を求めてこなかったといえよう。
 しかも、サプリメント/健康食品の流通の主体は、ヘルス関連商品を扱う店や、スーパーマーケットのヘルスコーナーである。安価な飲料を大量販売するビジネスとは全く違う分野である。飲料メーカーが関心を示すことなどなかったのは当然ともいえよう。

 ところが、日本は全く違う、機能性や健康効果を直接うたうドリンク製品が流行る。
 「アイソトニック」スポーツドリンクより、「アミノ酸含有」機能飲料というコンセプトの方に人気が集まっている。
 もともと、強壮を謳う金黒パッケージ商品は別として、カフェイン/タウリン/ビタミン等を含むドリンク剤は、健康食品というより、小瓶の栄養飲料というイメージが強い。機能を訴求するドリンクを飲む習慣ができあがっているため、成分訴求が有効なのかもしれない。

 こうした状況を日本独自と見てよいかは、まだはっきりしていない。
 生魚を使う寿司など文化に合わないとされていたにもかかわらず、日本食ブームで米国でもあちこちにスシバーが登場したことでもわかるように、短期間で変わる可能性もあるからだ。

 そのようなチャンスを感じているビジネスマンもいるようである。
 実際、寡占化しているドリンク市場に君臨しているCoca-Cola Co.のE. Neville Isdell CEOが米国市場に健康ドリンクを導入すると発言したそうだ。(4)

 米国でも、気分爽快型ドリンクやフィットネスドリンクといったニーズはあるだろうし、アスリートに対する筋力発揮極大化訴求が奏功する可能性は高い。
 スポーツ自体も、地元でのチーム競技への参加から、グローバルな環境でスリル楽しむ方向に変わりつつある。こうしたアクティビティを支えるドリンクのコンセプトも変わって当然だろう。この波に乗って、成分訴求ドリンクが成功裏に浸透し始めているようである。(5)
 新しいドリンクセグメントは、こうした新しいライフスタイルとともに形成されるのは間違いあるまい。

 但し、安価な製品が並ぶ市場で、ラグジュアリー・ドリンクのセグメントを作るのは容易なことではないかもしれないが。

 今や、世界の流行の先端を走るのは米国とは言えなくなったのである。

 新しい文化は、日本やエスニックといった、異端から生まれる可能性の方が高いのである。しかも、日本は、「茶」製品でわかるように、ドリンクと健康に関する技術で先頭を走っている。
 コンビニの棚に並ぶ機能訴求ドリンク新製品数は半端ではない。

 この日本市場の熱気が先進国に伝われば、新しいドリンク文化が勃興してもおかしくない。

 --- 参照 ---
(1) http://gatorade.jp/history/06.html
  [註] 米国内で販売されているスポーツドリンクは、色や甘さの点で、日本人のセンスに合わないものが多い。
(2) CMフィルム: http://gatorade.jp/cm/index.html
(3) “SmartWater/VitaminWater”といった製品は存在している。 http://www.glaceau.com/
(4) Ginny Parker:“A Thirst for Well-Being”The Asian Wall Street Journal 2005年1月2日 P2
(5) http://www.redbull.com/extras/ingredients.jsp


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