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2006.1.16
 
 


CESでの次世代光ディスク競争の報道を眺めて、

 毎年おなじみのInternational CES(Consumer Electronics Show)(1)が米国ラスベガスで開催され、マスコミでも大々的に報道された。日米ともに景気は上向きなので、大いに囃し立てようということかもしれない。
 話題の中心は、Blu-ray Disc対HD DVDと、大画面薄型ディスプレーである。
 両者とも、企業間の熾烈な戦いというトーンで語ることができる上、どうなるか勝手な意見を述べることができるから、騒がしいし、話も面白いのかもしれぬ。(2)

 ともかく、日米ともに、大画面高精度デイスプレーの普及が急速に進むことは間違いない。そして、その時、一番問題になるのが、情報蓄積メディアの行方だ。
 Blu-ray Disc対HD DVDは、その観点で騒がしいとされているが、本当にそうだろうか。
 大容量化といっても、一桁上といった程度であるが、家電用途で、その程度の容量で対応できるのか、疑問を感じるからだ。

 大容量のハードディスクが、その役割を担うことになるのではないかと思うのだが。

 ソリッドな一時記憶用としてフラッシュメモリーが主流になりつつある上、ここ数年は、ハードディスクの大容量化伸び率が落ちているから注目されていないが、単価と容量の視点で見ると、ハードディスクの優位性は揺るがないのではないか。爆発的に蓄積情報量が伸びたら、Blu-ray DiscやHD DVDへの記録では、とても対応できまい。

 そう考えると、CESに、次世代のハードディスク内蔵のコンセプト製品を登場させて欲しかった。ハードディスクカセット使用機器の登場を期待していたのだが、残念である。

 こんなことをつい考えてしまうのは、2005年に垂直磁気方式1.8インチ80GBが商品化されたからである。(3)
 紆余曲折はあったが、次世代技術がついに入ってきた。

 日本では、産学連携プロジェクトを通じて技術開発が進展しており、高密度化技術はほぼ確立してると言ってよさそうである。(4)この進展状況を見る限り、現在よく使われている3.5インチ型ハードディスクの1TB化もそう遠くないと予想される。

 現在、家電もパソコンも、汎用のハードディスクへのデータ転送はATA規格が主流だから、 150MB/秒だ。すでに、倍増規格は実用化されているから、半導体側が全面的にこの規格に対応すれば、一挙に大容量化を進めることができるだろう。
 サーバでは、データ転送はSerial Attached SCSI規格が伸びているようで、高速化が急速に浸透している。当然ながら、これに対応した、大容量ハードディスクが要求される。
 2006年には、この分野にも垂直磁気記録方式の商品が投入されるそうだ。(5)

 こうした動きを眺めれば、一気に、高密度ハードディスクの世界が開けてもおかしくないのである。この流れが、家電に入ってくれば、光ディスクに記録することに意味があるかは疑問である。記録メディアとしてのBlu-ray DiscやHD DVDの魅力が保てる保証などない。
 ハードディスク主流のシナリオを考えるなら、ハードディスクに記録した情報の著作権保護と、その情報を家庭内の複数の高精度デイスプレー機器に伝送する手段が重要となろう。(6)
 タイミングから考えると、今回のCESでそんな提案があってしかるべきだと思うのだが。
 もしかすると、家電の主流派は、こんな流れはできる限り遅くしたいのかもしれない。

 ハードディスクメーカーも、次世代技術の登用場面としては、先ずはコンピュータのようだ。
 本当にそれでよいのだろうか。

 つい、2002年の特許分析報告を思い出してしまう。
 日本のハードディスクメーカーは開発面では弱くないが、「ややタイミングや課題の絞り方が甘いようである」(7)と指摘されている。

 --- 参照 ---
(1) http://www.cesweb.org/default.asp
(2) http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/features/2006ces/
(3) http://www.toshiba.co.jp/about/press/2004_12/pr_j1401.htm
(4) http://www.nedo.go.jp/informations/press/170617_1/besshi_3-4_2.pdf
(5) http://pr.fujitsu.com/jp/news/2006/01/13.html
(6) 例: http://products.sel.sony.com/locationfreetv/owners/faq_basicsetup.html
(7) http://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/gidou-houkoku/hdd.pdf


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