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2006.2.28 |
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Bush政権のACIとはBush大統領が発表した「American Competitiveness Initiative(ACI)」(1)は、予想されたように、中国とインドの台頭に対抗すべく、米国の競争力を維持しようというものだった。目玉は基礎研究費倍増を目指す点である。 しかし、予算(2)をざっと眺めた感じからいえば、一般的な学術予算を伸ばそうとは考えていないようだ。 つまり、この施策は大きな方針転換というものではなく、国家としての競争力強化につながる、次世代技術の分野に徹底的に力を入れるということのようだ。 2006年2月15日米国議会での公聴会記録を読むと、投入額倍増もさることながら、一番のポイントは、絞り込んだ分野で、統合的な力が発揮できるように工夫することのようである。 そして、以下の3点を追求するつもりだ。 ・価値ある技術を生み出すための基盤創出への投資 ・世界最高水準の施設とインフラを提供 ・理系教育の質的強化を通じた理工学人材の準備 思わず、2004年末に完成したCouncil on Competitivenessの報告書「Innovate America: Thriving In A World Of Challenge And Change」(俗称 Palmisano Report)を思い出す。 読み方が人によって相当違ってくるが、長期戦略のもとでフロンティア研究に投資し、これをバネに競争力を生み出そうというものだろう。注目すべきは、明確に「explore knowledge intersections」を指摘した点だと思う。 技術系譜と専門分野毎の組織の安定を重視する日本には欠けている機能で勝負するつもりなのである。 新興国への技術移転が凄まじいスピードで進み、北欧でのイノベーションが注目されているなかでまとめられたものだから当然だろう。21世紀で競争力を発揮するには、単発的な新しいものではなく、融合で生み出すイノベーションしかないのは、誰が見ても当たり前である。 ここには、先端技術の迅速実用化プロセスを強化するといった従来型の発想は無い。そんなものは、数の力の前ではたいした力にはならないからである。 もともと、米国は、様々な分野の優秀な人材を集めてイノベーションを生み出す力がある訳で、これこそが武器だと、はっきり宣言したに過ぎない。 当然ながら、融合を実現するためには、その場である「インフラ」を作るとともに、それを生かす「人材」を供給する仕組みが不可欠である。その上で、融合の動きを誘発するための「投資」がなされれば、好循環の動きが発生することになる。 Bush教書は、このシナリオにのることになるかもしれない。 重点領域での基礎研究を重視し、包括的な展開を狙うという方針を明確にしたからだ。 少なくとも、Palmisano Reportが要望した、長期的研究への傾注へは歩を進めた。 しかも包括的な動きを進めるようだから、「融合」型イノベーション創出の場ができあがっていく可能性が高い。 なかでも、これから10年で、基礎研究への投入を倍増させるとの宣言が決定的な役割を果たしそうである。世界中から、優秀な学生・研究者を米国に誘引することで、圧倒的な競争力を発揮する目算といえよう。 これに対抗できる枠組みを作らない限り、イノベーション競争には勝てまい。 --- 重点らしき分野 --- ●Networking Information Technology R&D ・High-end computing -DOE's class computing systems(peta scale) -NSF's Office of Cyber Infrastracture -NASA's Project Columbia supercomputing ・fundumental research in cyber security ●National Nanotechnology Initiative ・NSF: fundamental reserch ・DoD: development of materials, devices and systems ・DOE Nanoscale Science Research Centers ・NIST: from discovery to manufacture ・potential risk research ●Advanced Energy Initiative ・“Divesify sources” Coal Research Initiative[FutureGen project, etc.] Solar America Initiative[semiconductor materials] ・“Develop alternatives”(Biofuels Initiatives/battery technology/Hydrogen Fuel Initiatives) ・Expand Nuclear Energy ●Climate Change Science and Technology ●Quantum Information Science --- 参照 --- (1) http://www.whitehouse.gov/stateoftheunion/2006/aci/aci06-booklet.pdf (2) 予算書 http://www.aaas.org/spp/rd/new.htm (3) Hearing Charter[2006-2-15] http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/charter.pdf - Office of Science and Technology Policy http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/marburger.pdf - DoE http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/bodman.pdf - DoCmmerce(NIST) http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/sampson.pdf - DoHomelandSecurity http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/mqueary.pdf - NSF http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/bement.pdf - DoHomeland Security http://www.house.gov/science/hearings/full06/Feb15/mqueary.pdf (3) 要約版 http://innovateamerica.org/webscr/NII_EXEC_SUM.pdf 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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