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2006.5.24
 
 


PS3とは何なのか…

 E3で、ソニーがPS3を発表したが、実機をずらっと並べた大々的なデモは無かった。
 このため、いくらニュースを読んでも、2TFLOPS(おそらく理論値)の高性能プロセッサ(3.2GHz)を搭載している以上のことは、よくわからない。

 ただ、「PS3ではLinuxを搭載する予定ですので、Linuxプログラミングの活動が認められます。」(1)とのことだから(kernelだけではなさそう)、単なるゲーム機ではないことは確かだが、その意味はよくわからない。

 PS2のチップも、上市時は、パソコンに比べると、圧倒的に高速処理が可能で、魅力的なチップだったが、結局のところは「ゲーム機」用で終わった。
 (ゲーム用チップなので、倍精度の計算用ではないから、高性能といってもハンディはあるが。)

 当時、PS2に期待した理由は単純である。
 少なくとも5年間は、同じ構造のチップが大量生産される。そのため、パソコンに比べれば、極めて安価。Linuxを稼動できれば、クラスター型コンピュータへと展開する道が開ける。

 標準チップIntel/AMDのx86型よりパフォーマンスが上で、家電品の作り方だから故障は少なさそう。クラスター化すれば、驚くほど安価なスーパーコンピュータの誕生もありえそうに見えた。

 ただ、IT熱が冷めてしまった時期だから、こんな展開に、本気でとりかかる人は出なかったようだ。

 もともと、ビジネスマンが本気に挑戦する類のものではないから致し方ないのかもしれない。なにせ、次世代機が登場すれば、開発は、また一から出直しになる。リスクが高すぎるのである。
 しかし、逆に、コンピュータ・オタク族が喜んで挑戦すると踏んでいたのだが、技術のバリアは高かったようだ。そのようなコミュニティも育たなかったようである。

 PS2上市からずいぶんたったが、今では、標準チップ、x86型も進歩しており、PS2チップに魅力は感じられなくなってしまった。

 それでは、PS3のチップはどうなるのだろう。

 こちらは2TFLOPSだ。これだけでスーパーコンピュータレベルの実力がある。ただ、そのために、プロセッサの内部構造は見るからに複雑になっている。
 マニアが弄れる代物ではない。

 Linuxが稼動すると言っても、クラスター化は簡単ではない。分散コンピューティング構想がずっと喧伝されてはいるが、システム構築のバリアは極めて高い筈だ。

 理屈から言えば、IBM(2)あるいは東芝がブレードコンピュータ化して、クラスター化する可能性はある。だが、この複雑さでは、超大型ベクトル計算機用チップと大差ないと思う。従って、本気でこのチップを利用する気なら、地球シミュレータの対抗馬を狙うしかないのではないか。

 医療用の立体とか、多面的画像といった用途には向くかも知れぬが、とても、広く利用できるチップとは思えない。もしそうするつもりなら、チップの進化体制を敷かざるを得ない。しかし、互換性を保ちながら進めるのは簡単ではなかろう。
 さらに、クラスター管理のブレークスルーも必要ではないか。果たしてそこまで進めるつもりなのだろうか。

 そもそも、クラスター用パソコンに向くチップとは、消費電力が少なく、メモリとネットワークインターフェースを搭載し、構造がわかり易い「汎用」ものだ。この条件を満たす上で、システムとしてのコストパフォーマンスが高いかという話である。
 パソコン・クラスターでのボトルネックは、チップ内の情報処理速度ではなく、ネットワークでの遅れの方だ。一番大変なのはチューニングになる。チップが複雑だと、手を出す気が削がれるのではないか。

 そうなると、PS3とは、リビングルームに置くエンタテインメント用単体コンピュータということになる。
 と言うことは、新たに提供されるエンタテインメントで成否が決まると言えそうだ。

 それはなんなのだろう。ブラウザでウエブを見るだけなら、2TFLOPSの力など全く不要である。この処理能力が無いと楽しめない、ゲーム以外のエンタテインメントとは?

 大いに気になる。

 --- 参照 ---
(1) http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060511/ps3.htm
(2) http://www-128.ibm.com/developerworks/library/pa-cellperf/


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