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2006.7.27
 
 


LEDランプ産業はどうなるか…

ランプの比較例 (正確ではない)
光源 消費電力 全光束
(ルーメン)
年間推定経費
(電気+器具+取替)
白熱電球 54W 810 \3,469+\234+\4,380
蛍光灯 12W 810 \771+\584+\730
LEDランプ 2.2W 33 \141+\365+\219
[点灯時間仮定]毎日8時間x365日 [電気代金]\22/kWh
[取替コスト仮定]\1,500/回
[寿命]電球1,000時間, 蛍光灯6,000時間, LED20,000時間
[購入価格仮定]電球80円, 蛍光灯1,200円, LED2,500円
 大手メーカーから既存の電球ソケットでそのまま使えるLEDランプが発売された。(1)
 蛍光灯、白熱電球の3者でのコスト比較ができるようになったから、LEDランプの使用に踏み切る人もでてきそうだ。
 こうなると、市場が活性化する可能性がある。市場が開けば、量産効果でLED価格も大幅に下がるかもしれない。そうなると、好循環が発生する。

 上市されたLEDランプは暗いタイプだが、これでも、常夜灯なら十分なレベルだ。面倒な交換が減るのだから、その特徴が活かせる場面では使われていくのは間違いあるまい。
 LEDランプ自体はすでに珍しいものではないが、いよいよ一般市場に製品が入ってくるのだから、話題性は高い。

 LED交通信号機(2)の価格は、従来品の倍の数割高に留まるそうで、メインテナンスを考えればメリットは大きいから、代替が着々と進んでいるようだ。又、LEDには即応性があり、電力消費量も小さいので、2007年から、自動車への本格搭載も始まるだろう。
 この5月末に開催された、Lightfair International でも、LED応用は花盛りといった感じである。(3)

 しかし、利用者からしてみると、未だに、利用は特殊分野に限られている感じがする。早く、普段の生活シーンに早く入ってきて欲しいものである。
 ただ、ルーメン当たりで見れば、ランプコストは高価だ。そのため、どうしても、まだまだ先のことと考えがちである。

 だが、技術の進展スピードは速い。
 もともとのロードマップ(4)によれば、白色光100ルーメン/Wの登場が2009年頃とされていたが、2006年末には量産が始まる。上記の表の蛍光灯は70ルーメン/Wだから、効率上でLEDが蛍光灯を抜きさった訳である。
 しかも、研究開発競争は激化一途だから、2007年には、さらに様々な製品が登場してきそうだ。(5)

 ここまでくると、LED用の電源回路と実装技術が進歩さえすれば、白熱電球代替はすぐにでも可能な感じがする。蛍光灯のコストパフォーマンスは優れているが、廃棄問題を抱えている。LEDが、もう一歩安価になるとスムースに代替が進む可能性は高い。少なくとも、1〜2割はすぐに入るのではなかろうか。

 代替市場もさることながら、電球や蛍光灯では実現できなかった、厚み1cmで60W電球相当の薄型照明器具(6)の新市場も期待できそうである。

 ・・・およそ、こんなところが、一般的な見方ではないだろうか。

 実は、こんな見方をしていると、いつまでもビジネスにならないかもしれないのである。
 と言うのは、照明分野は成熟産業だからである。市場も技術も成熟しているのだから、寡占型になる。新しい技術が、この構造を動揺させないならスムースに普及するが、そうでなければ、古い技術が生き続けるかもしれない。

 特に厄介なのは、白熱電球・蛍光灯メーカーは主要部品は自社製造を貫いてきたという点。ところが、LEDは半導体であり、そんな技術などないから、これも自社生産という訳にはいかない。外部調達になる。
 こうなると、収益構造の大変化を伴うことになる。しかも、代替技術だから、現行の収益基盤は崩れる。
 一般には、このような場合、電球メーカーは組織内にLED事業を抱えると、組織内対立が発生するから上手くいかない。新しい組織を作り新事業を進めるしかないのである。それでも、うまくいくかどうかはわからない。(7)

 そもそも、LEDランプは、電球や蛍光灯用の標準ソケットで行くのか、それは無理筋で、器具に組み込むか、専用が望ましいのか、という議論ができていない。
 このことは、LEDランプがいくら騒がれたところで、照明産業にとっては、未だに傍流でしかないということである。

 従って、部品企業やLED照明器具メーカーが漫然と照明産業に参入しても、なかなか大きな成果は得られまい。

 つまり、技術的には普及する見込みがあったからといって、ビジネスとして飛躍できるとは限らないということだ。

 それでは、何をすべきか。

 先ずは、照明産業の構造をはっきりさせ、「照明」のなにが顧客の嬉しさになるのかを徹底的に考え抜くべきだろう。
 コストにしても、初期の据付費用、電気料金や寿命換算だけでなく、照明の配置設計、清掃や点検・修理も含めて考える必要があろう。又、照明としての美しさも重要なファクターだ。この程度は、当たり前の話である。

 重要なのは、ここに琴線に触れるような新しい「嬉しさ」を加えることができるかだ。
 例えば、他の技術と融合するだけで、一挙に高度な仕様になる。LAN配線・マイコン制御だけで、すべての照明がコントロール可能になる。そんな利用場面があれば、新しい市場ができあがる筈である。
 又、太陽電池と合わせたユニットを開発し、発展途上国への大量援助でまずは生産量を確保してしまうという手もあろう。
 どんなビジネス構造にするかが重要なのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.tlt.co.jp/tlt/topix/press/p060620/p060620.htm
(2) http://www.npa.go.jp/koutsuu/kisei/siken/index.htm (3) http://www.ledsmagazine.com/articles/features/3/6/3/1
(4) http://www.led.or.jp/next/roadmap/roadmap_zantei1003.pdf
(5) http://www.topics.or.jp/News/news2006030906.html
(6) http://www.mew.co.jp/corp/news/0603/0603-2.htm
(7) 3大電球企業のLED部門:
  GE Lighting/GELcore(General Electric) http://www.gelcore.com/our_company.php
  Osram Sylvania(Siemens) http://www.sylvania.com/AboutUs/Pressxpress/Tradeshowevents/Lightfair2006/
  Philips Lighting/Philips Lumileds Lighting(Royal Philips Electronics) http://www.lumileds.com/


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