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2006.12.11
 
 


歪んだビジネスのツケ…

 2006年の携帯電話機出荷台数は10億台を超えるとの予測が話題になっているそうだ。とんでもない大市場だ。
 そのうち8割以上を、5大メーカーが占めると見られている。
   [Nokia、Motorola、Samsung Electronics、Sony Ericsson、LG Electronics]

 ところが、日本で売れ筋商品を提供するメーカーは、この流れに乗るどころか、海外市場から撤退するしかないのが実情である。

 日本市場は、5000万台弱でしかないが(1)、この小さな市場で、熾烈な新製品競争が繰り広げられている。しかも、普及は頭打ちというのに、未だに多数乱戦状態が続く。
   [シャープ、東芝、NEC、パナソニックモバイル、富士通、三洋電機、ソニー・エリクソン、三菱電機、カシオ、日立、京セラ、・・・]

 商品は思わず唸ってしまうようなものばかり。
 小型・軽量の素敵なデザインで、美しいディスプレー・カメラ付きは当たり前。これに様々な機能を付加する競争が行われているのだから恐れ入る。なにせ、“初”製品を連発しないと、シェアを落としかねない市場なのだ。
 使うかは別として、見れば見るほど、その注力度が伝わってくるものが多い。
 だが、そんな開発力があっても、世界には出ていけない。そんな状況を見て、不思議に思う人もいるらしく、本気でマーケティング力の強化を進言したりするそうだ。日本企業にもチャンスがある筈、と見るらしい。

 確かに、海外の製品と比べると、誰でも、その余りの違いに愕然となる。日本製品の素晴らしさは、触らなくてもわかる。
 それに、二次元コード読み取りと、インターネット接続を連携する技術など、画期的で世界に通用するものであることは間違いない。
 しかし、残念ながら、世界に打って出る余力は無いのが実情である。

 常識で考えればわかるが、こんなにバラエティ豊富で、高度機能を満載した製品を手頃な価格で売れる訳がない。もし、7万円の値札をつけたら売れ行きはどうなるか。
 いくら魅力的な商品でも、流石に手がでまい。それに、日本を除く先進国では、企業用と私用の混同を避けるのが普通だ。従って、海外で、日本のような超高額電話機市場の創出は大変なこと。
 要するに、機器ビジネスを電話サービスビジネスとバンドル化しているから、日本では安売りができるだけのこと。これができなくなれば、日本の市場は急縮小する。要するに、バンドル化で無理に市場を膨張させているのだ。

 と言うと、ゲーム機ビジネスと同じようなものと言う人がいるが、とんでもない話だ。通信規格が統一されていれば、同一端末で、他の電話サービス業者に移ったところで、何の問題もないからだ。専用のゲームソフトしか使えないゲーム機器と、ケータイは全く性格が違うのである。
 ところが、日本政府はバンドル化の道を選んだ。
 端末機器メーカーは、電話通信サービス業者の意向通りにモノ作りをするだけの下請けになれという政策である。かつての“黒電話”政策を復活させたのである。
 日本のメーカーをそのような枠組み内に閉じ込めようとすれば、どうなるかは自明である。仔細な差別化の多数乱戦市場は、恣意的に作りだされたものなのである。メーカーには国際競争力がつかない政策を選択しただけのこと。その代償は大きいが、電話サービス業者が世界に雄飛すればよいという話である。残念ながら、大失敗に終わったが。

 今頃になって、ナンバー・ポータビリティ制度を導入したが、意味は薄い。バンドル化を止めるとか、国際ポータビリティに踏み込む施策ではない限り、無駄な競争費用を使わせる政策と言ってよい。
 競争費用は、利用者が払うのである。

 バンドル化とは、ポータブル電話機としてしか使わないケータイユーザーに、高い電話料金を払ってもらう仕組みのこと。高額な電話機の値引き費用を捻出するためのものだ。

 海外でこんなことができるとは思えまい。

 いくら技術が素晴らしくても、歪んだビジネスを続けていれば、そのツケは必ず回ってくるものだ。

 今後も、今の仕組みのままで進むことができるか、そろそろ考え時ではないかと思うが。

 --- 参照 ---
(1) http://www.m2ri.jp/newsreleases/main.php?id=010120061019500
(附記) 二次元コード: QRコードの特許権保持者はデンソーウェーブ. ライセンス/使用料不要.
    http://www.denso-wave.com/qrcode/faq.html


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