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2006.12.18
 
 


洗濯機を使って…

 洗濯機といえば、独身住まいの頃、全自動洗濯機には大変お世話になったことを思い出す。
 全自動は無駄が多いから、2槽式を使うべきと、強硬な主張をする雑誌があった頃のこと。もっとも、当時は、全自動洗濯機の平均価格は2槽式の倍だったから、その主張を納得した人も相当いたかもしれない。
 もっとも、小生は、セールということで、2槽式の平均的な価格で全自動を購入できたが。

 こんな昔を思い出したのは、先日、コンプレッサーを搭載した洗濯乾燥機を使ったからである。なかなかの優れもので、量や汚れ具合を判定して洗うらしい。ただ、滅多に使わない人間にとっては、機能ありすぎの感は否めないが。
 このような洗濯機が電気店に溢れている。5社が熾烈なシェア争いをしているから、(1)次々と新製品が登場する。
 で、当然ながら、結構なお値段になる。

 同じように高額な洗濯乾燥機としては、システムキッチン用がある。
 不思議なことに、欧州製品である。高温で洗うから、汚れは結構よく落ちるのだが、電圧が200Vだからどこでも使える状況にはない。そもそも、置き場にぴったり合う必要があるから、機器の選択肢は狭い。こちらは、時々、モデルは変わるようだが、新機能搭載と呼べるようなものではない。
 キッチンに洗濯機設置を嫌う人もいるから、売れ行きは今一歩のようだ。

 こんな状況を見て驚く人がいる。
 米国帰りの人達だ。洗濯機と乾燥機とは、大きくて頑丈、操作は単純なものと決まっているからだ。要するに、洗濯物を一気に放り込むだけという、大雑把な感覚。
 昔から洗濯機とはそんなものということになっている。
 そんな生活に慣れていると、洗濯機購入に日本の電気店を訪れると、余りの複雑・高機能ぶりと、その美しさに驚かされるのだ。しかも、そんな機械ばかりが、ずらっと並んでいるから、びっくり。しばし言葉を失うという。そして、店員さんから、除湿・冷房エアコン付きを勧められるから、仰天する訳だ。
 どうしてよいのかわからなくなるという。浦島太郎気分かも知れない。

 生活スタイルが違うから、洗濯機も違ってくるといえば、その通りかも知れぬが、メーカー側が現状を変えようとしないからでもある。

 かつて「2槽式使うべし」を声高に叫ぶ、家庭重視派が強かった。今でも、その主張を続けている筈だ。しかし、そんな声に抗して、メーカーは全自動を普及してきた。
 多忙な日々をおくる人にとって、洗濯時間の節約はとてつもなく有難いことだ。超安価な全自動機器を販売してくれたメーカーには今でも感謝している。

 ところが、その後、こうした意気が感じられなくなった。
 典型は、ドラム式は駄目だというもの。いろいろ理屈をつけて、普及させなかったのである。2槽式論者の役割をメーカーが担い始めたのだ。欲しい人は、システムキッチンにするしかなかった。
 それを打ち破る動きは、2000年のこと。
 その結果、2006年の日本市場は、台数では470万で伸びゼロだが、ドラム化だけは着々と進んで、30%に達する見込みだという。(2)
 メーカーが市場を変えたのである。

 ウオークマンを想起して欲しい。ヘッドフォン用磁石の進歩は大きかったとはいえ、特段、新しい技術があった訳ではない。既存技術の寄せ集めにすぎない。
 登場した時は高価なものだった。故障したため、中を覗いたが、配線はゴチャゴチャ。しかたなく、買い替えた製品も開けてみたが、見違えるような簡素な配線。価格も半額以下。

 文化は創るものという気概がつくりあげた、日本のイノベーションモデルの一つである。

 日本の都会文化に誇りを持っているなら、ドラム式導入決断は当然だと思う。
 問題は、この文化を世界に普及させることができるかである。

 --- 参照 ---
(1) 3社が各20%程度, さらに2社を加えると90%をこす.
  http://job.nikkei.co.jp/2007/contents/corp/share/share01.html
(2) http://www.toshiba.co.jp/tcm/pressrelease/060601_j.htm
(附記) 言うまでもないが、日本メーカーの洗濯機は海外ではほとんど見かけない。
    せいぜいのところ、発展途上国の現地企業が日本から技術導入している位だ。
    そんな企業も中国・韓国からの輸出品に苦しんでいると聞く。


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