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2007.2.26
 
 


特許係争の常態化…

 2007年2月22日、キャノン対Nano-Proprietaryの特許係争で、ライセンス契約は日本のパートナーにまでは及ばないとの判決が下された。(1)

 こうなると予想していた人も少なくない。

 米国と日本では、特許に対するスタンスが180度違うからである。

 米国は、知的財産権の保有者を保護しようと考える。イノベーションを促進する上では、これは極めて重要と見なす社会。
 従って、曖昧な条項についての解釈は、知的財産権保有者側の見方が優先されることが多い。
 それも当然だろう。技術革新が騒がれている分野の特許出願者の過半は、大企業ではないからだ。

 日本はその逆。出願者の過半は大企業であるし、社会の変化より安定を望むし、既存産業の変革より維持を重視する風土だからだ。
 (キャノン方式のコピアにしても、当時、抵触可能性で一番問題になりそうなのは、日本の中小企業が保有していた特許だろう。しかし、それほど問題にはならなかった。)

 と言って、米国で熾烈な競争を繰り広げてきた企業が、そんな状況を知らない訳はない。
 油断というより、おそらく、今迄とは相当違うタイプの相手だったということだろう。

 日本の大企業の競争相手は、大概は国内外の同業者である。確かに“熾烈な競争”ではあるが、産業全体を大きく育てようという点では呉越同舟。
 そのため、係争になっても、妥協による解決は可能である。様々なメリットを提供できるし、互いに重要な特許を持っている場合は、クロスでの解決もし易い。

 しかし、非同業者との係争になると、そうはいかない。特に、特許権だけで商売する企業は、収益極大化の手段は一つだけだから、手強い。それに、妥協にメリットを感じない特許権保有者も多い。下手をすると、全精力を法廷闘争に注がざるを得なくなる可能性さえある。係争の当初、対応を間違うと、泥沼化しかねないのだ。

 半導体産業では、相当昔から、こうした問題には頭を悩まされ続けてきた。
 それ以外の産業はまだまだ脇が甘いということだろう。
 それこそ、医療機器分野のように、問題を荒立てなくない企業が揃っている分野もあるし、自動車業界のように、これから本格的な競争が始まる状況のところもある。従って、産業によっては、そうなるのもやむを得ないと見る人もいるようだが、そう言っていられる状況だろうか。
 (半導体やITではユーザーと産業の接点、ゲノムでは純研究機関と産業の接点が技術イノベーション創出の焦点なので、既存産業側が知財で主導権を握れないため、係争が頻発するということ。)

 と言うのは、米国の革新的な特許の大半は、ベンチャーや研究機関からでてくるからだ。知財で収益をあげるしかない業態が多いのである。
 もし、これらの特許に抵触したりすれば、ライセンスを受けない限り、ビジネスにならない。何年もかかって努力してきた成果が、灰燼と帰す可能性があるということだ。
 これが杞憂というならかまわないが、そうでないなら、それなりの対応をするしかなかろう。

 なかでも厄介なのは、“目利き”に特化した企業の存在である。とんでもない企業が多い一方で、なかなか、“あっぱれ”な企業も増えている。
 例えば、利用に当たって、どうしても必要な部材というものはある。ここで優れた特許を獲得したら、徹底的にその応用特許を集める。その上で、基本特許の入手を図るのである。これが実現できれば、この領域で圧倒的な覇権を握れる。誰も手出しはできなくなる。
 何を考えているかは一目瞭然。
 一生懸命研究して成果を出してくれる企業を待ち構えているのである。まさに鴨葱作戦。

 こんな話を一部のことと見ていると大間違い。

 国際出願の一般化が急速に進んでいるからだ。2006年はなんと15万件弱に達した。
 (米は約5万件. 日本が2.7万件. [WIPO 2007年2月7日発表](2))
 世界中の研究者・エンジニアがこの競争に巻き込まれていくのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.nano-proprietary.com/PDFs/RulingGrantingNanoSummaryJudge.pdf
(2) http://www.wipo.int/edocs/prdocs/en/2007/wipo_pr_2007_476.html


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