下請け企業の大躍進(20070703)

2007.7.3

下請け企業の大躍進…

　2007年6月、電子機器受託製造サービス企業(EMS)の大手、シンガポールのFlextronics が、米国Solectronの買収を発表。⁽¹⁾
　言うまでもないが、EMSとは、部品を世界から調達し、安価に組み立てる能力を持つ、下請け「メーカー」である。規模が巨大なので、部品調達でバーゲニングパワーを発揮できることが強みとされている。
　又、大量販売が必要な製品は、こうした巨大企業に委託するしかない。巨大工場の立ち上げなどしている暇などないからだ。
　この買収で、約20万人の従業員をかかえ、売上高は300億ドルを超える大企業が誕生する訳だ。

　驚くような話ではない。EMS企業の巨大化が進んでいるからである。⁽²⁾

　そのなかでも目立つのが、台湾の“FOXCONN” Group(鴻海精工[Hon Hai Precision Industry]⁽³⁾)。スピードが驚くほどのスピードで成長してきた企業である。
　一応、EMSと呼ばれてはいるが、アセンブリだけではなく、部品も内製している「メーカー」でもある。
　創業は1949年で、初めは町工場だった。今や上場しているが、カリスマ的な創業者の思想が貫徹されている企業らしい。中国語圏では、この人の経営観が引用されることも多いようだ。⁽⁴⁾
　今や、携帯電話製造の最大手だが、2008年末までに、生産能力を倍増して更なる飛躍を図るらしい。⁽⁵⁾

　日本ではゲーム機の下請け企業ということで、業界ではよく知られている。製品開発では全面的にテスト作業を受け持ってくれ、徹底的に問題をつぶすので、製品上市にいち早くこぎつけることができるから重宝するのである。しかも、金型設計製造技術が高いから助かる。
　単なる人件費安価で部品調達力が強い、超大量生産が可能な下請けという訳ではないのだ。⁽⁶⁾当然ながら、研究開発にも注力を入れ始めている。

　日本では、この企業を話題にしたがらないようだが、BusinessWeek誌の“IT 100 - 2006年”⁽⁷⁾では2位にランクインしている。当然だろう。海外では注目企業だからだ。
　(このリストで日本企業トップは東芝で25位。)

　Electronic Business誌の業界売上ランク“2006 Electronic Business 300”⁽⁸⁾で見ると、14位だ。
　ちなみに、ゲーム機器ビジネスを抱えるソニーは11位、液晶テレビを自社工場で製造し好調とされるシャープは22位。いかに巨大企業かわかると思う。
　そして、利益率は、ソニーの1.6％、シャープの3.3％に対し5.0％だ。ゲーム機器の発注元や、液晶内製を宣言している日本のメーカーより、下請け生産者の方が好業績を実現している。

　ちなみに、Flextronicsは2.4％、Solectronは1.0％。両者の売上高を合計すると20位になる。
　これらの企業も、そのうち開発能力を備えるようになろう。

　これが電子産業の現実。
　もの作りは日本企業の十八番と語る人が多いが、その意味を捉え返す必要があろう。

　--- 参照 ---
(1) http://www.flextronics.com/en/portals/0/press%20releases/20070604SJA.pdf
(2) Alex Mayhew-Smith: “Can Flextoronics keep Foxconn at bay”electronicsweekily.com [2007.6.13]
　　http://www.electronicsweekly.com/Articles/2007/06/13/41593/Can+Flextronics+keep+Foxconn+at+bay.htm
(3) http://www.foxconn.com.tw/
(4) http://www.3wnet.com.tw/People/default.asp?INDEX=32　　　http://www.3wnet.com.tw/People/default.asp?INDEX=33
　　「三千億傳奇-郭台銘的鴻海帝國」天下文化 2002年
　　http://zh.wikipedia.org/wiki/%E9%83%AD%E5%8F%B0%E9%8A%98
(5) Mark Lee in Hong Kong: “Foxconn to Double Capacity as Handset Orders Rise” Bloomberg [2007.6.12]
　　http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=aw23KUDW3n.g
(6) 核心競争力として以下の項目が掲載されている.
　　・五大産品策略：速度、品質、工程服務、彈性、成本
　　・自創的垂直整合商業模式：電子化 - 零元件、模組機光電垂直整合服務
　　・重視人才獨裁為公的執著
　　http://www.foxconn.com.tw/CompetitiveAdvantages.htm
(7) http://bwnt.businessweek.com/it100/2006/index.asp
(8) http://www.edn.com/index.asp?layout=article&articleid=CA6452868

　技術力検証の目次へ＞＞＞　　　　トップ頁へ＞＞＞