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2007.9.20 |
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プレイステーション3の行く末…2007年4〜6月期に、据え置きテレビゲーム機Wiiは343万台が売れたそうである。(1)同期の、プレイステーション3(PS3)売上は71万台。(2)これでは勝負にならない。 しかし、同期で、プレイステーション2(PS2)は270万台を販売した。旧型からの乗り換えが多いのだろうか。ともかく、まだまだ現役である。 それにしても、累積では1億2千万台という膨大な数だ。すでにお蔵入りもかなりの数にのぼるとしても、1億台もの機器が家庭のテレビにつながっていることは間違いなさそうだ。すごい資産である。 こうした状況を眺めていると、両者は据え置きゲーム機として覇権を争っているように見えるが、違うセグメントの商品になりつつあるように映る。片や、カジュアルゲーム中心。もう一方はアクション型ゲームだ。棲み分けが進む可能性もありそうだ。 つまり、PS3はPS2の買い替え需要対応品ということ。ただ、今の所は、高価なPS3に魅力を感じる人は少ない。HDMI接続の高精細テレビを所有していないとか、ブルーレイディスクやSACDを使う気もなく、ダウンロードが不要なら、それは当然。 早い話、PS3は高級ゲーム機の位置付けになる訳だ。(PS3にPS2互換機能を搭載する意味も薄いし、低スペック安価品を揃える必要もなかろう。) もしも、この路線を歩むことになると、プレイステーションビジネスはかなり厳しい局面を迎えることになりそうである。 その理由は、機器普及競争での勝ち負けと言うより、アクション型ゲーム市場の長期低迷を脱する方策が見あたらない点にある。PS2のお陰で、ゲームプログラムが肥大化してしまい、高額ソフトが市場の中心になり、産業のダイナミズムが失われてきたが、PS3の投入でその傾向がさらに強まるからだ。PS2上市の時より、PS3は開発環境が整っていないようだから、開発費用は膨大になるのは間違いない。それで収益をあげるためにはゲームソフト価格の上昇は避けられまい。余程魅力あるゲームソフトが生まれない限り、アクション型ゲーム市場は縮退しそうだ。 PS3になると、新興企業どころか、既存企業でも、リスクを考えると開発に力を入れるのは難しいかも知れないのである。挑戦型企業は、大型アクションゲーム開発を避け、安価に開発可能なニンテンドーDSに流れ込んでいるのではないだろうか。 これこそが、PS3の急所である。アクション型大型ゲームソフトでヒット商品が生まれないと、とてつもなくつらい。ハリウッドの映画産業が大型映画作りしかできなくなり、ヒット商品に恵まれないと、苦しくなるのとよく似ている。 しかも、米国では、先行して普及しているXbox360とのガチンコ勝負にさらされる。強敵と言ってよいだろう。 Xbox360は、もともとソフト会社が作った製品なので、ソフト開発の仕組みが最初から整っており、プログラムは作り易いし、ネットワーク型にして動かすことも難しくない。それに、パソコン用にも転用し易い。 従って、ゲームソフト企業はXbox360用を出したがるだろう。開発に労力が必要な上に、普及が進んでいないPS3用は敬遠されかねないのだ。下手をすると、Xbox360用ソフトを作ったあとで、ダウンスペックのPS2用を作りかねない。こうなったりすると、高精細画面で見たくなったPS2ユーザーは安価なXbox360購入に動きかねない。米国では、PS2ユーザー防衛が重要かも知れない。 こうした状況を想定すると、結局のところ、喧伝にもかかわらず、PS3の“Cell”の力は評価されずに終わるのかも知れない。そんなことになったとしたら、この研究開発は大失敗と言わざるを得まい。 日本企業のなかでは、ソニーは戦略的動きが得意な会社と見る人が多かったが、その力が急速に衰えてきたようである。少なくとも、半導体分野での戦略性はほとんど感じられない。 そもそも、PS2ではMIPSベースだった。ところが、“Cell”ではRISCタイプのPowerPCベースに変え、一切の資産を捨てる方針をとった。PS2非互換で、代替を狙ったのかも知れぬが、それにしては投資額が巨大すぎる。それに、選定の理屈が素人にはよくわからない。当時は、産業用はSHベース、携帯電話用はARMベース、家電用はMIPSベース、パソコン用はx86ベース、通信はPowerPCベース、といった棲み分けが見えてきた時点だ。そこに、突然、いかにも電力消費量が大きいPowerPCベースのCPUによる汎用プラットフォーム化を主張し始めた。通信を重視したコンセプトと理解していたのだが、“Cell”とはそういうものではなさそうである。 なかでもよくわからなかったのが、グリッドコンピュータを彷彿させる構想。グリッド型の原点とは、本来は同一プラットフォームから脱する発想と見ていたから違和感を感じた。同一CPUでコンピュータを繋げるなら、小型クラスターという流れはすでにできていたからである。そして、主流の地位を固めたx86ベースは、電力消費量増大問題で頭を悩ましていた。そのなかで、電力消費量が大きそうな“Cell”がどのような流れを想定しているのかは、理解し難いものがあった。 家電にも使うという話だから、CPUの数を減らしたスリムバージョンチップが出し易いものにするのかと思ったら、そのような設計にはなっていないようだ。そうなると、冷却システム無しには稼動を躊躇するような、巨大チップを家電に転用することになる。まさか、巨大なハードディスク搭載家庭用サーバを販売するつもりではないだろうし、よくわからぬ方針である。 さらに驚いたのは、アクションゲームの心臓部でもある、グラフィックチップを、外部調達にしたこと。PS2好評の理由はグラフィック性能の良さでもあったのだが、パソコン用のチップ性能がはるか先を行くようになり、あきらめたということなのだろうか。それとも、ゲーム機ではなく、コンピュータを志向するという理屈からなのか。 ともあれ、息を呑むような大胆な方針転換である。 間違えてもらってはこまるが、こうした方針がどうのこうのという話ではない。素人の浅知恵では、企業の方針が理解できないことはよくあること。イノベーションを狙うタイプの会社ならなおさら。 問題は、この方針に合わせた戦略展開が、さっぱり見えなかったこと。同じ半導体でも、プロセッサはメモリとは全く違う。素晴らしい試作品さえできれば、後は生産技術を磨けばなんとかなるというモノではない。高度な処理ができるチップになればなるほど、上市までの準備には膨大な手間がかかる。しかも、周辺機器と繋げる構想があるなら、その作業量はとんでもないものとなる。 つまり、準備体制なくしては、処理能力数字が優れていようと、使い物にならないということ。 プラットフォームにするという宣言は聞こえても、どんな体制で進めるのか語らないで進める作戦には、理解を超えるものがあった。 それに、PS2にLinuxを搭載し、そのパフォーマンスの悪さはわかっていた筈である。いくら安価でも、これではどうにもならない。家電用展開も進めたが、その機能の不十分さが不評だったのではなかろうか。結局のところ、PS2のCPUはゲーム用から脱することはできなかったのである。 この総括もなければ、今後、どうやって突破するつもりなのか語られた記憶も無い。 “Cell”のプラットフォーム化を目指すというなら、PS2とは異なる新しい仕掛けが必要と考えるのが普通ではないだろうか。 おそらく、PS3でブラウザを立ち上げても、パソコンの快適さには遠く及ぶまい。用意していなければ、すべてが、この調子になるのは致し方ない。 一方、共同開発を行ったIBMにとっては、“Cell”とは、もともと追求してきたPowerPCのIPビジネス展開の一部でしかない。PS3とは違う“Cell”用開発環境を用意している筈。戦略的展開には、こうした準備は不可欠である。 --- 参照 --- (1) 2007年4〜6月期の財務業績 任天堂 http://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2007/070725.pdf (2) SCE 会社データ http://www.scei.co.jp/corporate/data/index.html (ゲーム機のイラスト) (C) KAZUTAKA アイコンミュージアム http://i.coron.jp/modules/iconmuseum/ 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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