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2010.2.8 |
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NASAの予算を眺めて…“はやぶさの7年間の旅は、目には見えない科学技術の魅力を教えてくれた。・・・日本の科学技術をどう育て、利用するかを考えるきっかけにしてほしい。”(1)科学担当の記者の本音のようだ。・・・“目には見えない”とは思わないが、その通りだ。 実に、はらはらさせるプロジェクトだった。致命的な故障発生とのニュースが流れながら、そこから蘇ってきたのである。世界の常識を破る超低予算にもかかわらず、小惑星に着陸して試料採取したのである。しかも、効率的なイオンエンジン稼動を実現させた。画期的なコンセプトのプログラムだったのは誰が見ても明らか。 しかし、政府の方針はなんだかね。 全く逆方向の、有人月探査を志向しているらしいのだ。 スパコン予算議論を思い出す。 「具体的成果」ではなく、「世界一を目指す」ことこそが重要と、ノーベル賞受賞者まで揃えて、大合唱させたのには失望した。そこにあるのは予算ぶんどりのための、精神論。 ベクトルとスカラーを合体することで世界一を目指すというトンデモコンセプトへの反省感など微塵も感じられなかった。 今度は「有人探査」で大合唱か。 だいたい、基礎科学分野における「具体的成果」とは、この“はやぶさ”の成功のようなものではないのかね。はっきりしたコンセプトを提示し、どうしてこの技術を選択したかわかるようでなければ、話になるまい。当たり前だが、それが成功するとは限らない訳で、研究者は失敗を予想した瞬間、仕事をしてきたなかから画期的なものが見つからないか必死に考える訳で、そこから新しいものが見つかったりするもの。 日本の科学技術政策はこれを避ける。コンセプトなどどうでもよく、ただただ「世界一」に挑戦するだけ。未だに米国に追いつけ路線。 世界一のISDN技術路線の反省は未だにゼロということか。と言うより、「世界一」を目指し、研究開発費が潤沢だったあの当時に戻したいのかも。 世界的に見れば効率的だった宇宙分野もついにこの路線に引きづり込まれることになるのかも。H2B/HTVの成功を見て、日本も捨てたものではないから、予算をつけよとなる訳だ。国産大型ロケットで技術力を誇示するのも抑止力と考える人も少なくないし。 その結果、無人宇宙船へのロボット搭載技術開発と、月面着陸用有人宇宙船開発を混在させることになるのだろう。ベクトルとスカラーの合体コンピュータ開発に懲りた訳ではなさそうである。 2009年2月1日発表されたNASAの予算を見ると、日米の姿勢の違いがよくわかる。 リンク先は右図→ 巨額な支出項目だった、有人月探索は中止で、スペースシャトルは引退。だいたい、前者はさっぱり上手くいっていなかったとしか思えないから、中止は当然である。 そもそも、有人月探索さえできればよいという姿勢は、科学技術振興と相反するものでしかない。月を踏んだ宇宙飛行士を作るには、新技術開発を抑えて、要領よく技術をまとめることになるのは当たり前。こんなものは英雄を好む米国の大衆受けを狙った国威向上政策以外のなにものでもない。 NASAの新方針は、この姿勢を180度転換させたものである。予算削減ではなく、次世代のため、大規模投資を敢行するというもの。流石。 宇宙関連技術こそが米国のレゾンデートルと言わんばかり。 “An Exciting New Direction for NASA”なのである。 それでは何に引き続き注力するかと言えば、“Transformative technology development and flagship technology demonstrations”だ。 材料から燃焼システムまで、次世代の宇宙の輸送システムの基礎工学を追求する所存との表明と見てよさそうだ。Back to Basicである。 新しい技術で挑戦できにくい有人探査ではなく、基礎研究成果を試せる方向に進もうということ。 眺めていると、なんとなく、日本の成功プロジェクトを学び、米国の世界一の座を確固としたものにしようと考えた気配を感じさせられる。 なんだ、地道にやっている日本の少額予算のプログラムが大きな成果を出しているじゃないかいう反省がありそうだ。 従って、大型の“flagship”だけでなく、100億ドル規模の新技術登用プログラムをどしどし進めようという算段。・・・“はやぶさ”の成功は米国の科学者に衝撃を与えたに違いない。 “Heavy-Lift and Propulsion R&D”と“Robotic Precursor Missions”の重視にしても、新型エンジン研究に手を抜き、小惑星到達のような発想も切捨てた姿勢からの転換だと思う。・・・日本の“はやぶさ”やロケット・エンジンが先端に映るようではいかんぜということだろう。 次世代技術で先鞭をつけながら、民間の宇宙輸送産業には厚い支援を進めるということになるのだろう。衛星に人を送るだけの技術なら、成熟しているから、そんなものは民間のビジネスにしてしまえということでもあろう。ここら辺りも、日本との違いは大きい。 当然ながら、民間は儲かるようなロケット開発に向かうし、それを国が支援することになる。 日本の進もうとしている道は、これとはほぼ逆。 --- 参照 --- (1) 「記者の目:小惑星探査機はやぶさ、6月帰還へ=永山悦子」 毎日新聞 [2010年1月29日] http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100129k0000m070147000c.html 技術力検証の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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