→INDEX

■■■ 魏志倭人伝の読み方 [2019.1.22] ■■■
[22] 雉と猿

雉は日本の国鳥である。

 有 猴, 黒雉

棲息動物の記述は限定的。
外交官が偶々目にしてオッと思った2種だけ記載したように見える。
動物は見に行けば逃げ去ってしまうから、訪問者の自力調査はほとんど無理。と言って、異なる言語だから、図絵無しの動物同定は不可能に近い。そもそも、"棲息していない"とか、"飼われていない"と言える程の知識を短期逗留で獲得できる訳がなかろう。訪問した場所での当該期間で当人がたまたま目にしなかったに過ぎまい。
そんなことを、記載者当人が自覚していない筈が無いが、書かずに済ますことができないので、これだけに留めておこうという程度の記述と見るべきだろう。あたりさわりのない2種に留めたのである。

黒雉なる種は無いが、白雉は存在するようだ。雪山域に適応した希少棲息種(白)あるいは、アルビノ。黒雉がはたして存在するのかはなんとも言い難し。
  元始元年春正月,越裳氏重譯獻白雉一,K雉二,詔使三公以薦宗廟。
    [「漢書」巻十二 平帝紀]

ユーラシア大陸棲息種は環頸雉/高麗雉Phasianus colchicus。棲息範囲はとてつもなく広く、環境は様々なので亜種は結構多い。しかし、日本列島棲息種は固有種の緑雉/Phasianus versicolorとされているが、希少化を危惧した移入のお蔭で交雑が進んでおり種にする意味は薄れている。
雄の輝くような緑色の部分が特徴である。実に美しいが、パッと見にはよくわからない。全体的には黒ずんだ鳥との印象は否めない。大陸と比べると、倭の雉はやけに黒っぽいナ〜ということだろう。
【典型的な雉類】
〇緑雉/雉/Green pheasant@日本列島
 ・北@佐渡,本州北部⇒北海道移入
 ・東海@本州中西部,四国
 ・九州@九州
 ・島@屋久/種子島,伊豆半島/諸島,三浦半島
〇環頸雉/高麗雉/Common pheasant@ユーラシア大陸
 (灰臀系)
 ・台灣
 ・河北…満州〜朝鮮半島⇒日本列島移入種
 ・東北
 ・南蒙
  :
 (黒系)
 ・ペルシア
 ・コーカサス
 ・同北方
 ・同南方
 (白翅系)
 ・アムダリア
 ・トルクメニスタン
 ・アフガン
 (キルギス系)
 (タミル系)
/腰赤雉/Gallopheasant類】@インド〜東南アジア〜中国南部
〇白/白雉/Silver pheasant

   @中国南部,タイ,ベトナムの標高2700m程度の山森
〇皇/-/Imperial pheasant

   @ベトナム,ラオスの山森
 :
【山鳥類】
〇帝雉(K長尾雉)/Mikado pheasant

   @台湾高地山林の希少種…全身青紫色に光る黒色
 :


猿の方だが、(普通)/赤毛猿Macaca mulattaはインド〜中国大陸の種。日本/日本猿/ニホンザルはMacaca fuscataはもちろん近縁種である。
〇普通猴/赤毛猿/Rhesus monkey
〇日本猴/日本猿/Japanese macaque
 ・本土日本猿
 ・屋久島猿
〇臺灣猴/台湾猿/Formosan macaque
〇食蟹猴/蟹喰猿/Long-tailed macaque@東南アジア
  :

      →"ヒト的猿"[2017.1.21]

大陸北方の魏の人々は猿は南方棲息動物と考えていたから、ホラホラやっぱり倭にもいるゾ、というところだろう。雪降る地にまで猿が住んでいるとは思う筈もない訳で。

 (C) 2019 RandDManagement.com    →HOME