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2005.9.7
 
 


陶器産業振興策の問題点…

 伊万里が世界市場を席巻したと言うと、いかにも特定の陶磁器だけが成功したように映るが、他の窯も活躍していたようである。
  → 「古伊万里から学ぶ」 (2005年1月7日)
陶磁器の街
指定伝統的工芸品(1)+楽 その他 (2), etc.
---北海道・東北---
北海道 小樽
室蘭
こぶし
青森県 南部名久井
軽(津軽)
八戸
秋田県 白岩焼
楢岡
岩手県 小久慈
鍛冶丁
山形県 平清水
銀山上畑
成島
新庄東山
宮城県 切込
福島県 会津本郷
大堀相馬
相馬
会津慶山
---関東・甲信越---
栃木県 益子 小砂
群馬県 自性寺
渋民
茨城県 笠間
埼玉県 飯能
東京都 今戸
神奈川県
山梨県 能穴
長野県 松代
高遠
尾林
天竜峡
新潟県 無名異(佐渡)
庵地
---北陸---
富山県 三戸田
小杉
越中瀬戸
三助
石川県 九谷 大樋
珠洲
福井県 越前 氷坂
---東海・中京---
静岡県 森山
志戸呂
賎機
岐阜県 美濃
[志野]
[織部]
[瀬戸黒]
[黄瀬戸]
渋草
小糸
山田
愛知県 瀬戸染付
常滑
赤津
犬山
---近畿---
三重県 四日市萬古
伊賀
阿漕
奈良県 赤膚
和歌山県 瑞芝
滋賀県 信楽 下田
八田
膳所(瀬田)
京都府
京・清水
[清水]
[粟田口]
[音羽]
[黒谷]
[御室]
[八坂]
[桃山]
朝日(宇治市)
大阪府 古曾部
兵庫県 丹波立杭
出石
[三田]
[明石]
[東山]
[赤穂]
[a平]
---中国・四国---
岡山県 備前 虫明
酒津
広島県 宮島
島根県 布志名
因久山
牛ノ戸
島根県 石見 布志名
袖師
母里
楽山
出西
山口県 堀越
末田
香川県 理平
神懸
徳島県 大谷
愛媛県 砥部 水月
楽山
高知県 内野原
尾戸
---九州・沖縄---
福岡県 上野
小石原
高取
蒲池
一の瀬
星野
佐賀県 唐津
伊萬里・有田
武雄古唐津
嬉野焼
肥前吉田
肥前尾崎
白石
黒牟田
多々良
小田志
長崎県 波佐見
三川内
現川
熊本県 小岱
天草(内田皿山)
高浜
高田
宮崎県 都城
大分県 小鹿田
鹿児島県 薩摩 種子島
竜門司
沖縄県 壷屋 琉球

 名だたる窯を並べてみると、まさに各地がきそっていた様子がよくわかる。江戸幕府の鎖国政策のお蔭で、大衆消費文化が花開き、陶磁器産業も謳歌していた訳だ。

 もちろん、陶磁器だけでなく、漆器や織物も盛んだった。

 大都市の旺盛な消費需要に応えるべく、行政的指導のもとに、こうした産業が育成されたのである。言うまでもなく、輸送網の整備にも力が注がれた。

 現在の地方振興施策とよく似ていることに気付く。

 このことは、海外との競争の視点が不要な条件下で奏功した政策を、今も追求しているということに他ならない。
 おそらく、昔ながらの社会構造を温存する施策に人気があるのだろう。

 そんな施策では、地方の発展性を抑えることになるのではないかと危惧の念を抱かざるを得ない。

 一寸、考えてみよう。

 全国に残っている窯への支援は、ほとんどが「伝産法」(3)に基づいている。後継者育成や技法保存・原料入手、需要開拓や意匠開発について、行政が支援する仕組みである。

 これだけ見れば結構なことと思ってしまう人が多い。
 だが、ここが一番の問題なのではないか。

 そう思うのは、手作りの小規模事業者からなる協同組合に対して支援するというコンセプトだからである。
 失礼ながら、零細業者の衰退が一気に進まないように援助しているように見える。

 本来は、伝統技術の魅力を訴えて、商業資本を呼び込み、産業を活性化させるべきではないかと思うのが、流れとしては全く逆である。
 投資魅力が向上しないなら、衰退するだけと思うが、外からの資本やアイデアを導入するよりましなのだろうか。

 そもそも、行政の“指導”のもとで、手工業を再興し、産業振興を図る発想には無理があるのではないか。

 行政に、市場から見て、何が魅力か判断できるスキルは無い。市場を読めない人の“指導”で動けば結果がどうなるか言うまでもあるまい。
 それでも、お金をかければ、宣伝効果はあろう。従って、行政の支援はマイナスではないという意見が主流なのだろう。

 しかし本当だろうか。

 窯の宣伝といえば、決まって人間国宝のような力のある人の作品紹介だが、これが産業振興にどう繋がるのだろう。

 ここが一番のポイントである。

    *** 人間国宝(4) ***
  清水卯一 鉄釉陶器(滋賀県湖西)
   三代 徳田八十吉 九谷
   十一代 三輪休雪 萩
   十三代 今泉今右衛門 伊万里・有田 色鍋島
   松井康成 練上手(茨城県笠間)
   鈴木蔵 志野
   井上萬二 伊万里・有田 白磁
   加藤卓男 美濃 ペルシャ陶器ラスター彩
   藤原雄 備前
   三浦小平二 青磁(出身:佐渡)
   三代 山田常山 常滑
   山本陶秀 備前
   金重陶陽 備前
   塚本快示 青白磁・影青(岐阜県土岐)
   藤本能道 釉描加彩(東京都青梅)
   十四代 酒井田柿衛門 伊万里・有田 柿衛門
   吉田美統 九谷
   富本憲吉 色絵磁器(京都)
   石黒宗麿 鉄釉陶器(京都)
   濱田庄司 益子
   加藤土師萌 色絵磁器(美濃)
   中里無庵 唐津
   近藤悠三 染付技法(京都)
   荒川豊蔵 志野・黄瀬戸・瀬戸黒
   田村耕一 鉄絵(栃木県佐野)
   藤原啓 備前
   伊藤赤水(五代) 無名異
   伊勢崎淳 備前

 力がある人の作品には魅力があるから、“芸術”として紹介されることが多いが、これが問題なのである。

 陶磁器産業は大衆が日常生活を愉しむための製品で成り立つ。
 これを忘れるべきでない。

 言い換えれば、いくら作品といっても、作家の自己主張のためのものではないということである。人々の楽しみを増幅させるものでなければ意味は薄い。逸品ものであってもあくまでも“工芸”であって、“芸術”とは違うのである。
 ここを間違っているような気がする。

 “工芸”なら、センスが優れていれば、時代感覚にマッチした製品で市場を席巻することも可能だと思う。
 と言うより、成熟した社会ならチャンスはいくらでもあるだろう。チャンスを生かす知恵があれば、一気に事業を伸ばすこともできる筈だ。
 地域の産業振興に繋げるつもりなら、ここが肝である。

 従って、成長の気概を持った事業家を呼び込むとか、地域のしがらみを突破する人を支援する仕組みができれば、地域再興は可能だろう。

 逆に、伝統技術の単純な支援策は逆効果かもしれないのである。

 --- 参照 ---
(1) http://www.kougei.or.jp/crafts/bytype-index.html
(2) http://members.at.infoseek.co.jp/toujiki/jkama/hokaidou.htm
(3) 1974年公布
(4) http://www.nihon-kogeikai.com/KOKUHO-TOGEI.html


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