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2013.8.18
 

歴史で感性を磨く

…古墳の形状分類の見方[続]…

「前方後円墳に統一設計指針が無いとの主張は理解し難い」とか。
うーん、文章とは難しいもの。
  → 古墳の形状分類の見方 [2013.8.11]
小生にしてみれば、独自な主張をしたかった訳ではない。どう見ても、形状はバラバラですゼというだけのこと。余計なことを書きすぎたか。

と言うことで、前方後円墳の形状について、補足説明を加えておくことにした。

墓の基本は饅頭型の円墳だとしよう。
日本は多雨だから、つくるなら低地を避けて丘を選ぶことになろう。と言っても、斜面はこまるからそこを平地化して、発生した土砂を利用して饅頭をつくることになろう。書くのは簡単だが、実際に作るとなれば、それなりの土木工事量になるから、円墳でも設計は不可欠だと思う。

さて、治水工事・田圃開発・都市整備等の土木工事で膨大な土砂が放出されるので、それを用いて墳墓を巨大化しようと計画したとする。
はてさて、どうするネ。
小生は、誰が考えたところで、結論は同じだと思う。
水運に向く丘陵下に前方後円墳を作ろうとなるのでは。(ただ、最初はゼロから土砂を積み上げないで、一部は丘陵を崩した土砂も使うかも。土砂によっては積み上げる前に乾燥させて水分量調整が必要となるが、丘陵崩しなら安定土質の土砂をそのまま使えるからだ。)

なにせ、足場もない状態で、土砂を積み上げ、丘のような大型円墳を作るのである。円墳に工事用の付随形状部分が必要になるのは当たり前。しかも、重い棺を最上部に運びあげるのだから、もしもこの部分がないなら、饅頭に螺旋型道路をつける必要がでてしまう。それは構造上いかにも拙かろう。同時に、この前方部分は土砂量のバッファー役も兼ねる訳だ。
このように考えれば、、前方後円型になるのは自然な流れでは。言うまでもないが、「方」を直方体にする訳がない。

そうそう、乾燥地域における石造りのピラミッドなら、盗掘防止も兼ね、工事用の部分を完成後取り除くことになろうが、前方後円墳の場合、そこまでする意味はなかろう。墓は丘の最上部にあることは自明であり、盗掘する気になれば簡単だからだ。それに、後々、複数体の墓地にするつもりなら、お棺の搬入の都合上削ってもらってはこまる。もちろん、気にならないなら、前方部も墓に使ってもよいのである。

ともあれ、土砂を運んで来て積み上げただけの超巨大構造物。最重要課題は、豪雨時の崩壊防止なのは明らか。これはモンスーン気候地域の宿命。
だが、そう簡単な解決策がある訳ではない。一般的には、土砂が流れないように木を生えたり、積石で強度を上げたり、排水路を設置することで適宜対応するしかない。
前方後円墳の場合、表面は「葺石」で覆われているそうで、装飾用に表面を石で覆ったかの如き印象を与えるが、用途としては「積石」なのでは。
もしそうでないとしたら、排水路が作られていたことになる。と言うか、そう考えるべきかも。段の周囲に筒状の埴輪が一列に並んでいるからだ。垣のように見えるが、実は水止めの塀だったりして。(木製は腐るし、円柱なら水圧で倒れない。柱間は粘土のシール材で埋めることになる。)
水は段の平面部分を流れることになる。そして、後円部分と前方部分の間に導かれ、その先の流路に繋がるという構造。円筒埴輪とは土木工事資材(大量生産品)ということになる。

とはいえ、前方後円という形に意味をつけるのはご勝手にである。例えば、これは道教世界の「壷」だという見方もあるらしい。小生は、否定する材料がないなら、正しい見方と言ってかまわないと思う。
ただ、間違えていけないのは、「壷」形状の設計で墓を作った訳ではないこと。できた形が「壷」に見えたにすぎない。これぞ古代道教言うところの「壷」と、当時の人達が囃した可能性はあるというにすぎない。そのような、後付大好きな人だらけというのが、日本の社会の特徴だし。

さて、「設計」だが、大型墳墓を作るのに、設計なしでいきなり取り掛かるなどあり得まい。図面があったか否かはわからないが、頭に入っていればそれこそ全く同じ形の墳墓を作ることは可能。そう複雑なものではないのだから。
このことは運んでくる土砂量が概ね同じで、同一設計者だと、全く同じ古墳ができる可能性が高いことを意味する。似た古墳とはそれだけの話で形状分類してもたいした意味はなかろう。
常識的に考えれば、施工に当たっての測量は、紐を利用した円と直線以上のことは無理である。(墓の南面部の基準点が設定されていないから、方位測量法は使えまい。尚、水平度は樋型材の水の流れで判定できる。)その範囲で「後円」とのバランス感覚で、「前方」の形を決めていることになる。従って、どれも同じと言っても間違いではないが、決め方はいくらでもあり、見かけ上の形状はバラバラ。小生は、土砂運搬口の状況に合わせて設計したと見た。

こんなところだが、はたして真意は伝わっただろうか。


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