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■■■ ジャータカを知る [2019.3.13] ■■■
[5] 驢馬
馬系動物は御存じのように奇蹄類。古代に家畜化されており、ユーラシア大陸では野生といっても家畜の逃亡自生タイプがほとんど。野生馬はすでに絶滅しており、野生の驢馬がどうやら残っている程度。
【奇蹄類馬形】
○家馬Domestic Horse
[復活種]プシバルスキーウマ(蒙古野馬)…野生生活の実態は不明
○驢馬Donkey
●アジア野驢馬Wild ass…希少種
  ・クールKhur(印度野驢馬)
  ・オナガーOnager(ペルシャ野驢馬)
  ・クーランKulan(トルコ野驢馬)
  [絶滅]Hemippe(シリア野驢馬)
  ・ジゲタイDziggetai(蒙古野驢馬)
●キャンKiang(西蔵野驢馬)…チベット西部・東部・南部で種が微妙に分かれる。
×シマウマ系Zebra@アフリカ

聖獣とされている馬をとりあげたので驢馬を見ておこう。

古い家畜だが、神のお遣い的な役割を果たすのに適当とは思われていなかったようで、関係する神は主流の存在ではない。・・・
  カーラKhara…タタール/韃靼系、古代のゾロアスター教的信仰対象の巨大ロバ。
        …目と口がそれぞれ6つ。

  シヴァ神妃ドゥルガーDurgāの7番目の化身カーララートリーKalaratri[無知破壊女神]
        …古称はカリKali

  カーラデーヴィーKaladevi[密教護法女神]
        …憤怒相3目10臂 頭蓋骨環飾り 毒蛇手縄+背中に薬叉皮の騾馬騎乗

  シータラーShitala[天然痘女神]…驢馬に乗り田舎を回る。

山岳地帯の奥地に追い詰められて生活する耕作民の友が驢馬ということか。傾斜した痩せている土地が多いだろうから、驢馬の労役無しにはとても生きていけない地域では驢馬神があっておかしくないが、それが許される社会的状況にはなかったかも。

ついつい、そう思ってしまうのは、驢馬は鈍間で愚鈍という西洋的イメージが頭にしみついているからでもある。日本にもそれがママ取り入れられていそうだ。
この動物の体質だが、力があって忍耐力に富み従順。しかし、頑固。

ジャータカでは、他の動物でも"バカ者"的話が並んでいるので、驢馬だけ特別扱いされているようには思えない。勿論、虎の皮を羽織り頂点に立とうとする間抜けな話[#189]はある。ご想像がつくかと思うが、鳴き声でバレて殺されることになる。
しかし、小生にはコレが西洋的な愚鈍なイメージで決めつけようとしている話には見えない。馬族動物なので、戦争で英雄が頼りにする馬とは違いすぎるから、両者を対比すれば"バカ者"とされるのは致し方ないだけのことだろう。

なにせ、馬と驢馬は、市場で密集状態で取引されていたのである。両者の価格にはとてつもない差があったから、差別感が生まれない訳はない。その程度でしかなかろう。
山の実生活では驢馬は貴重である。馬にはとてもできそうにない、危険な山道での労役を厭わないでこなすからだ。ジャータカには、こうした驢馬へのいたわり感が溢れていると見ることもできるのではあるまいか。
親子に市場に売られに行く寓話でも登場するからだ。おそらく家族同様に生活していたのだが、止むをえず、家計の足しに市場で手放さざるを得なくなったのである。
その道すがら、出会った人々に、驢馬の連れて行き方を"無知で非道徳"と次々に非難され、親子はそれに諾々と従う。マ、世間のこうした批判に知らん顔もできぬ訳だが、したり顔のこうあるべし論はどれもこれもほとんど屑でしかないのである。

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