→INDEX ■■■ ジャータカを知る [2019.3.16] ■■■ [8] 猿 現在のインドも特段の障壁もなく、両者が併存状態で住んでいるというか、生活域が重なりあっていると言うのが正確か。 現実の生物種としては以下の2種。・・・ ●ハヌマンラングーンHanuman langur/長尾葉猴 ●赤毛猿Rhesus macaque/普通獼猴 ハヌマンラングーンは神話から来た名称だが、あやかって付けたというより、実在する眷属扱いになっていると思われる。 その猿神ハヌマーンHanumān/哈奴曼だが、風神ヴァーユVāyu(と猿王ケーシャーリー妃の間)の子で、絶大な人気を誇る。ラーマ王子の家来として大活躍するストーリー@「ラーマヤーナ」が大衆的に大いに喜ばれているということ。 このハマヌーンこそ孫悟空のモデルなのは間違いあるまい。(当たり前だが、中国では国内由来説が主流である。) ただ、中国では、猿猴を孫悟空のようにヒーロー的に扱うのは、例外事象と見てよいのでは。一般的にはどう見ても蔑む対象以外のなにものでもないからだ。ヒトと猿猴が余りに似ていると感じるので、どうしても反撥が産まれるのである。 しかし、どうも、インドにはそのような心情は生まれないようだ。猿族との神婚話も数々あるし。・・・ 《ヴァナラVanara/瓦納拉族の神婚》…猿的毛皮/尾を持つ人間 猿王ケーシャーリー妃と風神ヴァーユの婚姻 ⇒ハヌマーンHanumān/哈奴曼 猿王リクシャラージャ妃と太陽神スーリヤの婚姻 ⇒スグリーヴァSugrīv/須羯哩婆 猿王リクシャラージャ妃とインドラの婚姻 ⇒ヴァーリンVālin/婆黎 (猿王妃ではなく、精霊になっている場合も少なくない。) このパターンこそ、すでに触れた犠牲馬祭祀による王権確立儀式の底流そのもの。 その本質は王妃と当該馬との婚姻なのである。その結果、王は王妃が得た力を頂戴することができるようになり、王権を得ることができるのだ。コレ、相当に古層の仕来たりと見てよさそう。 一般には、異類婚姻譚とは動物の優れた能力を頂戴したいとの想いが詰まって生まれたもの。当然ながら、古代では、当たり前のように語られていた筈。インドでは、猿と人間の中間と神との婚姻関係という形でその息吹を今に残していることになろう。 ジャータカに猿譚が多いのはそういう土壌があるからだろう。 ほとんどヒトの扱いと変らない話もある。・・・ マンゴーを巡って、人間の王に八万匹の猿が命を狙われることになった。救うために、猿王は自ら橋となって皆を渡河させる。しかし、No.2がこの時とばかりと、内臓を破壊させ、猿王は瀕死状態。人間の王はそれを見て感動。死後ストゥーパで手厚く葬る。[#407] ヒトと猿の差は特に無いと見てもよいかも。 尚、日本の青面金剛像には"見ざる、言わざる、聞かざる"の三猿像が付いているが、この由来はハヌマーンであるとの説があり、南方熊楠が支持している。 →ジャータカ一覧(登場動物) (C) 2019 RandDManagement.com →HOME |