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■■■ ジャータカを知る [2019.3.19] ■■■
[10] 猫()
🐈単純な比較でしかないが、インドは他の国々に比べると、見かける野良猫の数がとても少ないらしい。
"イイ子だネ〜"の一言で猫を友達化してしまう姿を放映する「岩合光昭の世界ネコ歩き」でも、インドだけは取り上げてないようだし。(スリランカ、ブータン、バリ島、カンボジア、チェンマイ、マレーシア、シンガポール、・・・)

インドは猫以外の"野良"は雑多で数も多い。犬、山羊、豚、牛、はては猿まで街中を平然とうろついているのだ。にもかかわらず、猫だけがいないとなると、確かに特別な感情があるのかもという気になってくる。だが、そんな環境だと、猫は様々な事故に遇い易かろうし、菜食の家だらけだと猫に合いそうな残飯にありつくもの難しい。そこで数が減ったと言えないこともなかろう。

動物もヒトも互いにほったらかし感覚の併存状態の社会であり、ペット文化は生まれないとの説もある。ペットフードなる商品は見かけないのは、経済問題ではなく、当然、飼い猫も僅少との解説も見かける。
しかし、どうなのかネ〜。
そういう方々は日本人は猫好きと思っているようだが、少し前までは、猫嫌いの人は少なくなかったのでは。理由は定かではないが、魔性を感じるからでは。
日本の場合、一旦、流行れば、それを嫌いと言わせない風土だから、どうしてもこの手の解説だらけになる。日本人による解説は鵜呑みにしない方がよいと思う。

インドは、毒蛇や鼠だろうが、捕まえても殺さずに捨てに行く人だらけ。札殺生禁忌のジャイナ教徒は少数でも、動物の命を奪うことに躊躇するのは社会通念として確立していると見てよいだろう。
従って、狩猟本能を見せずにはいられない猫を飼うのは憚られるとの心理が働いておかしくない。その程度の文化の違いではなかろうか。
(但し、イスラム教徒は清浄な動物として敬愛するが、ゾロアスター教徒は不浄動物扱いする。)

実際、ジャータカ流藁しべ長者の最初の切欠は鼠の死骸。それを猫の餌用に酒屋に売り渡して種銭を得たのである。猫を飼う人が珍しいならこんな話が出てくることはなかろう。

ただ、ジャータカを眺めると、鼠の天敵という点で猫が嫌がられている可能性は高い。

水晶鼠譚[#137]は、前世富豪の鼠から金貨を頂戴した石工が、猫に喰われないため奉仕し続けている鼠の境遇に同情して助ける話。結局、猫は皆死んでしまい、両者は幸せに暮らすというストーリー。
なんだ、金を貰っているとそこまでするのか、と読めないこともないが、そう感じる読者は少ないと見ての筋だろうから、鼠喰いの猫はけしからぬという心情を前提にしていると見てよさそう。

もっとも、単純にそう考えてよいのかはなんとも。

シャスティShashthi[家庭と子供の守護女神 軍神スカンダSkanda/韋駄天の妻の一人]は黒猫mārjāraの上に乗っているからだ。猫顔像もあるという。犬と違って贅沢な食が約束されていそう。
当たり前だが、シャスティ信仰が盛んな地域では、御使いの猫も大切にされることになる。泥棒猫などという言葉はおそらく禁句で、有り難くも持っていってくれたとなろう。
西洋など黒猫など魔女が連れている動物で、見かけるだけで縁起でもないと考える人が多いのだから、全く逆だ。もっとも、英国の植民地化でそこらの文化は変わった可能性もあり、猫が道路でも横断すれば不吉とされているかも。

小生的には、瓶譚[#512]が好み。猫の話という訳ではないが。猫が酒を舐めてひっくり返っているので死んだものと思い、酒造りを命じた男をただちに処刑。しかし、猫復活。コリャ酒は凄いゾ、長寿の妙薬と言うのは本当かも、となる。最後は、予想通りだが掛け合いの詩があり、なかなかの作品である。

尚、インド辺りの小型猫族はこんなところ。
  ○家猫Domestic cat
  ●ジャングルキャットJungle cat/叢林猫
  ●ベンガル山猫Leopard cat/豹
  ●錆色猫Rusty-spotted cat/斑豹
  ●漁[スナドリ]Fishing cat/n.a.
  ×マレー山猫Flat-headed cat/扁頭豹
  ×マヌル猫Manul/@ペルシア〜中央アジア〜モンゴル(高地)

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