→INDEX

■■■ ジャータカを知る [2019.3.24] ■■■
[14] 駱駝
🐪駱駝と言えば、砂漠の船のイメージが浮かぶ。
ジャータカ冒頭譚[#1]は、そんな状況を彷彿させるにもかかわらず駱駝譚ではない。登場するのは牛車キャラバン。そんな筈はなかろうに。
インドは欧州に匹敵するの広さ。西岸は気候的に乾燥化し易い地域になる。それが、インダス川の東方に広がるタール砂漠(大印度砂漠)。ここは“アフリカの角”からやって来た家畜駱駝の出番の地。もっとも、それは古代の話でしかないが。
  ○一瘤駱駝/單峰駱駝Dromedary
     (二瘤駱駝は北方寒冷地バクトリア系)


と言うことで、ジャータカ最初の話。

題材はインターナショナル交易で稼ぐ大隊商。流石仏教、と感じさせてくれる。
漢文題名は「無戲論」とされており、いかにも経典的で難しい言葉だが、早い話、堅実に対処することこそが賢さの秘訣という意味。

間抜けなリーダー率いられるキャラバンの壊滅に対してと賢いリーダーであると大成功に繋がることが示されている。出発当初の、先発と後発の優位性判断の違いが際立っており現代にも通用する優れた話に仕立てられている。
砂漠で動物を率いて旅するのだから、水が欠乏した際のリーダーの決断如何で結果が大きく違ってくるのは言われなくてもわかっている筈なのだが、間違った判断が繰り返されているのはご存知の通り。

都合のよい解釈で薔薇色の結果を期待するリーダーが多い訳で、その通りいかなければどうなるかわかりそうなものだが、もともと愚鈍なのに本人はそれに気付いていないから、集団の雰囲気にのまれてしまうとえらいことになるのである。日本などそれにピッタリ当てはまる組織だらけであり、現代にも通用するストーリーだ。
特に、どこまで本当かわからぬ他人の言う事をママ受け取らず、冷静に状況を見てとれるかで、自滅の道を避けることができるかが決まることが誰にでもわかるようになっており秀逸。

それに続く砂道譚[#2]も牛車隊だが、ソリャいくらなんでも無理だ。どう考えても500頭の駱駝キャラヴァンとしか思えまい。"砂漠之難處"で道に迷って渇水に直面するのだから。オ〜、"吉祥草叢"を見つけたということで井戸を掘るが岩石。コリャ駄目だとなったが、し、キャラヴァン命の童だけが努力し、猛力一撃。すると水柱。

砂漠を通過したいなら駱駝は不可欠であり、その辺りでは神の乗り物とされていた筈だが情報は欠乏している。ただ、西アジアとの重要な交易地グジャラード辺りでは、駱駝に乗るMomai Maa[=母]と呼ばれる女神図絵はかなり広がっているようだ。ジャータカで駱駝を避けたところを見ると、鉄壁なバラモン勢力下にあったということではなかろうか。現代では、ジヴァ妃の化身とされている可能性が高いが。
他にも、いくつかの名称の女神(Ushtravahini, Kalyana Anajaneya)が存在するようだが、実態はさっぱりわからない。

  →ジャータカ一覧(登場動物)

 (C) 2019 RandDManagement.com    →HOME