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■■■ ジャータカを知る [2019.4.9] ■■■
[30] 羚羊
羚羊Antelopeとは、日本では氈鹿を意味するが、鹿の系譜の動物ではない。
この語彙は生物学的な分類名だが、かなり多伎にわたる動物群である。その範囲を見ると、牛・山羊・羊の類縁という程度でしかなく、かなり曖昧だ。
アフリカ棲息種が多く、インド周辺棲息種は限られている。
  ●ブラックバックBlackbuck or Indian antelope/印度K羚@インド、ネパール、パキスタン
  ●四角羚羊Chousingha or Four-horned antelope/四角羚@インド、ネパール
  ●印度ガゼルChinkara or Indian gazelle/印度
  ▲スマトラ氈鹿Sumatran serow/鬣羚@亜熱帯〜温帯の山地の森
       (パキスタン北部〜インド北部〜ミャンマー北部、スマトラ山地)

  ▲ターキンTakin/羚牛@アッサム〜ブータン〜チベット〜ミャンマー北部…麝香牛系

但し、この群には一大特徴がある。
牛・山羊・羊とは家畜化されている種だが、羚羊はそれができなかったのである。この一族だけがヒトをとことん信用せず、交流をきらったということだろうか。

しかし、神話に登場しない訳ではない。
チャンドラChandra/戦捺羅[月]は羚羊(ブラックバック)が曳く四輪車に乗っている。
「リグ・ベーダ」によれば、ヴァーユVāyu[風]は印度ガゼルに騎乗。風と共に疾走するという意味のようだ。さらに暴風神マルトMarutaḥ神群M[ルドラRudra等]も羚羊が牽引する黄金の車に乗っているという。
切り立った崖を軽々と登っていく能力があるから、ビュビューと吹く風を呼ぶ動物に映ったのだろうか。

ジャータカ羚羊譚では猟師が登場するが、それは釈尊に敵対する分派のデーヴァダッタ。
この点に意味がありそう。

実を羚羊が食べる(吉祥葉の)樹木を知った猟師が木の上に潜んで猟で成功を収めていた。しかし、賢い羚羊はそのことに気付いて対応した。[#21]

羚羊、啄木鳥、亀が仲良く住んでいた。羚羊が罠につかまったので、啄木鳥と亀が全力を振り絞って助ける。そのため、今度は亀が捕まる。そこで羚羊が弱ったふりをして猟師を誘って道に迷させる。[#206]

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