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■■■ ジャータカを知る [2019.4.13] ■■■
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🐑羊は完璧に家畜化されているが、その祖先の野生種は3つ考えられておりいずれも印度から近い地区が原産。
  〇羊/家羊Sheep or Ram
  ●ウリアルUrial/赤羊@インド北西域
  ▽ムフロンMouflon/赤盤羊[≠摩弗倫羊]@中央アジア山岳域
  ▽アルガリArgali/盤羊@北イラン〜アフガニスタン

羊といえば聖書の民の動物イメージがあるが、インドも似たような風習があったのは、ジャータカの記載[#50]でわかる。
ベナレスBenaresの民衆は「神々」への祭祀に当たって大量の供犠を行っていたとされるからだ。華香だけでなく栄光に値するヒトの死体までもが供されたという。大虐殺の対象になった筆頭は羊だった。(sheep, goats, poultry, swine, and other living creatures)

羊の語彙も色々ありそうだが、ラムRamの本来的な意味は仔羊ではないかも。生育途中の仔羊を食するのは贅沢三昧のグルメに当たるからで、本来は肉用に去勢された羊Sheepでは。そうだとすれば、マトンMuttonは搾乳対象でない成羊を指すことになる。
どうでもよい話ではあるが、重要なのは、去勢が重要な行為とみなされている点。その発祥は羊飼いの行為からのようだ。モンスーン気候の日本列島には羊飼育は合わないからそのような文化は入ってこなかったが、他の家畜でも去勢はトコトン嫌われたようである。大陸ではヒトにまで措置するほど一般的なモノ。両者の姿勢の違いは際立つ。

インド神話には、羊の去勢習慣をとってつけたようなストーリーがある。・・・
インドラIndra/因陀羅[帝釈天]は聖仙ガウタマGautamaの妻アハリヤーAhalyāと情交。バレて睾丸を取られてしまう。そこで、アグニAgni/阿耆尼[火焔]とMārut[風]達が祖霊神のところに行くと、羊(ram)の睾丸を付けろ、とのトンデモ話で決着。[@"Ramayana"]

シヴァShiva/濕婆は、聖仙ダクシャDaksha/達刹の末娘サティーSatī/娑提の婿選びでは賤しい神とみなされて呼ばれなかったが、恋仲だったので結婚してしまった。しかし、婚姻関係は認められないままだったので、その態度に怒った娘は焼身自殺。シヴァは激怒し化身 巨人ヴィーラバドラVīrabhadraをつくってダクシャが主催する祭祀を徹底破壊の上斬首。その後和解したが、首が無いので去勢してない雄羊の頭を据え付けた。

この他に羊に関係するよく知られた神はなさそうだが、マンガラMaṅgala/迦[火星]は羊騎乗で描かれるのが普通。ただ、コレはインド外の占星術の牡羊座から来ていそう。

ジャータカでは、羊としていても、山羊の特徴を入れ込んでいる話もあり、意図的な混乱かもしれない。[#324]・・・
羊が後づさり。敬意を表していると見なしたのだが、それは攻撃力を強める算段だった。一気に全速力で突進してブチ当てられ、あえなく命を失ってしまった。
もっとも、羊も突然ぶつかってくることはあるが、こんな話に適合するのは山羊である。普段は穏やかにしているが、一旦、臍を曲げると非友好的になる・そこい怒りが加わるととんでもなく凶暴に。しかも冷静に最大のダメージを与えるような襲い方でやってくる。

山羊となっていても、本来的には羊だった可能性もある訳で。・・・
ベーダ経典を詠ずる、世界的に著名な婆羅門が葬儀に当たって山羊の供犠を行うことにした。その過程で、大切に扱われたので山羊は大いに笑ったりもしたが、殺されるので大いに泣いたりも。そこで婆羅門が、山羊君にその理由を尋ねた。すると、前生で一頭の山羊を殺したので、その因果で生涯500回首を切られることになっていると説明。それを聞いて、供犠で殺すことはしないから、恐れることはない、と。山羊は解放されて救われたかに思われたが、その首に落雷。[#18]

都瑪伽利牧羊者/羊飼いドゥーマカーリ[#413]で登場するのも山羊である。鹿が住むような森林傾斜地で生活するなら、草原での群れ生活者の羊の飼育は向かない。山羊は個体がバラバラとなっても生活可能だから、少数山羊飼いが最適だ。羊の群れは渡河も躊躇することが多く厄介であり、それを避けるために渡河を避けない山羊を羊の群れに入れたりする。

牡羊本生譚[#471]には文章は無く、大隧道本生譚[#471]参照とされている。敵の城内で大トンネルを掘削して王を脱出させた賢者の話である。

羊の話はもっぱら聖書の民のものということだろうか。

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