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■■■ ジャータカを知る [2019.4.19] ■■■
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梟は日本の農村では鎮守の杜やお寺の裏山に住んでいるから、守り神として大事にされてきた筈だ。野鼠や土竜を獲るから益鳥と見なされていたせいもあろうが。
ただ、夜更けに時ならぬ恐ろし気な叫び声をあげたりするので愛らしい鳥とは思われてはいなかったろう。

緯度的に相当に違う地域だが、インドに棲む梟の種は、日本とそれほど大きな差はなさそうである。
  ●面梟Barn owl/倉
  ●木葉木菟Eurasian Scops-owl/普通角
  ●印度大木葉木菟Indian scops owl/印度領角
  ●印度森梟Mottled wood owl/白領林
  ●青葉木菟Brown hawk-owl/褐鷹
  ●南鷲木莵Rock Eagle Owl/岩雕
  ▲ネパール鷲木莵Spot-bellied eagle-owl/林雕
  ▲南島梟Brown fish-owl/褐魚
  ●印度小金目梟Spotted owlet/n.a.(小類)
  ●夜鷹Grey nightjar/普通夜鷹
  ●印度夜鷹Indian nightjar
  ●印度尾広夜鷹Jerdon's nightjar
  ●セイロン蝦蟇口夜鷹Sri Lanka frogmouth/斯里蘭

しかし、その扱いは日本とはかなり異なる感じがする。

ビシュヌ妃ラクシュミーLakshmī[吉祥天]は普通は蓮(Padmavatiと呼ばれている。)に乗っており、移動用乗物は王が乗る象でも、ビシュヌの乗物である鳥王ガルダGarudaでもよいのだが、。ビックリさせられるのは夜しか活動しない梟も加わる点。と言うか、それが一番先にあがるらしい。その理由についての解説は色々あり、反対の性情の神(妹神Alakshmi)を意味しているという説が多いようだ。富の女神とされたので、財宝警備役を配置しただけのようにも思えるが。

Owl[希語:glaux]は夜行性なので太陽光を見つめることは無理。従って、月神を重視する時代は尊崇の対象だったろう。(カンカン照り地帯では太陽信仰はマイナー。)しかし、農耕がメインになると太陽神主導となり捨てられる運命にあった。しかし、眼が大きい鳥ということで、信仰対象の地位をかろうじて守ったようである。
ご存じのように、ローマではミネルヴァ、アテネではアテナ、といった女神の御供役として起用されている訳だ。(発祥はメソポタミアのマリと見られている。都市防御あるいは部族トーテムだと思われる。)しかしながら、聖書の民にとっては出自が不快な信仰者達の崇拝対象となれば、迫害されることになる。それに、集団化を嫌うことも、宗教教団から嫌がられる理由だろう。ともあれ悪魔的イメージが被せられたのである。
尚、遠藤周作:「深い河」で紹介される痩せこけた女神チャームンダーChamunda[死・疫病]は死体の上で踊るが、梟に乗ったりする姿も見かける。昼はジャッカル[→]夜は梟か。

そうそう、烏と梟は仲が悪いというのは事実。
恐らく、夜行性の梟は烏の雛を狙うからだろう。狙うのは烏に限らないが、その巣が一番の近場ということ。それこそ同じ樹木の洞と枝に巣くっていることもありえよう。
そんな経緯があるから、烏はその仕返しに梟を見つけると群れで襲うのである。猛禽類とはいえ、昼間は相手がよく見えないから逃げ惑うしかなすすべ無し。
その原因を説明する話が収載されている。
[#270]動物達は王を選ぶことになった。四足動物たちは獅子を。海棲の魚はアーナンダ魚に。鳥はヒマラヤで集会を開催。梟が選ばれたのだが、最後になって烏が反対。そのため金色鵞鳥を選んで散会。烏も去る。梟は恨む。

[#226]烏が取り巻いて脅すので、梟は日没を待たずに逃げようと飛び出してしまった。それを待っていた烏に殺されてしまう。

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