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■■■ ジャータカを知る [2019.6.17] ■■■
[99] 魔羅
邪悪者マーラの話([#40]迦提羅樹炭火譚)はすでに取り上げた。[→アカシア]

豪商の布施行為を、悪魔マーラが妨害したが、豪商の強大な威力に太刀打ちできなかったというだけの話。
登場するのは縁覚(孤立仏陀、つまり独力で悟ったが説法教化をしない。)Pacceka Buddha/辟支佛。釈尊は辟支佛は死後は再来無しと語る。前生の釈尊は、マーラを降し、蓮華の中心に立つ"ベナレスの宝"であり、辟支佛の托鉢鉢に布施を置いたとのこと。
釈尊の頃の聖人は、真理を極めたからといって、その内容を人に伝えるようなことはしなかったのだろう。教えを広める行為は例外的だった可能性もあろう。

本生譚はこうした前生話の前に、必ず、そんな話をすることになった切欠を説明する現世話がある。・・・
マガダ国で祇園精舎を建立することになった、日々浪費していた大富豪のAnātha-piṇḍika[給孤独]ことスダッタ/須達多についてこのように書かれている。
妖精は、生活状況が変わりつつある大富豪に、仏陀とその弟子に従うのを止めて大繁栄時に戻れと誘う。しかし、その意志を変えることはできなかった。

大悟を目指す人にとっては、誘惑されることなどないとの、釈尊の経験を語っているようなもの。
しかし、その誘惑を無駄なものにすることで、さらなる精進に突き進めるとまでは言っていない。

仏教における悪魔マーラMara/魔羅 or 天魔とは、覚りを邪魔する天人である。煩悩の化身ということになろうか。
その大元は、菩提樹下の悉達多太子の成道の邪魔行為。魔三女(極愛, ス彼, 適意)を向かわせたが失敗したのである。[北傳「雜阿含」南傳にも対応部あり。]

この悪魔だが、仏教の描く階層構造では、須弥山の六欲天(最下層から、四天王天、利天/三十三天、夜摩天、兜率天、化樂天、他化自在天)の最高位に居る天人が天魔ということになる。その王の名称は、Pāimant/(第六天魔王)波旬。

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