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■■■ ジャータカを知る [2019.6.24] ■■■
[106] 菩提薩
仏教で、初めて「ボーディ・サッタbodhisatta/菩提薩」という用語が使われたのはジャータカとの説がある。
これはパーリ語だが、それに相当する梵語はbodhisattva。この単語、仏教コミュニティの造語とされているようだ。大乗教団にとって格別に重要な用語だったことを意味していそう。

言うまでもなく、この言葉はジャータカでは前生の釈尊を意味しているが、どのような言葉から生まれたのか気になってくる。
ただ、単語自体は単純である。
ボーディbodhi/菩提は悟りenlightenment/覺のことだからだ。問題は、satt/薩埵の方で、様々な説が併存しているらしい。
しかし、ジャータカを一通り眺めた印象だと、"悟りを得ることに執着している者"と解釈するのが収まりがよさそう。ところが、それは誤った見方とか。
そうなると、"bodhiを追い求めていた者"とするのがよさげ。
[参照]
可理生:「bodhisatt;abodhisattva(菩薩)の語源 と変遷」印度學佛敏學研究60(2), 2012年
苅谷定彦:「ボサツ(仏の前生)か ら菩薩 (菩提を求める有情)へ」印度學佛敏學研究54(1), 2005年


ともあれ、Buddhaを目指す修行者ということ。

そのBuddhaだが、解脱した修行者の尊称ということになる。従って、仏教 ジャイナ教共通に用いられていたそうである。実際、ジャイナ教教祖や修行者もBuddhaとされたようだし。一方、初期仏教教団では出家修行者を意味する一般用語だったという。
[参照] 山崎守一:「ジャイナ古層聖典におけるブッダの概念」中央学術研究所紀要 第15号1986年

意味の変遷からすれば大転換であるが、漢訳では3種の全く異なる概念が通用していたらしい。「悟りを求める人」、「悟りを具えた人」、「天竺の大乗仏教僧」の3ッだ。流石に、最後の概念は日本では消えてしまったようだが。

これを素人的に解釈すれば、こんな流れになろう。・・・
  〇釈尊の前生@ジャータカ
  〇佛
(釈迦牟尼佛だけではない.)の成道以前の本格的修行者
  〇大乗定義の"ぼさつ"
    凡夫
    ↓  誓願
    菩薩
    ↓  無限に近い時間「十波羅蜜」修行
    ↓  人間界最後の生
    ↓  無上正等覚
=阿耨多羅三藐三菩提[梵:anuttara samyak saṃbodhi]
    仏陀
  〇
梵語「法華経」"ぼさつ"…利他行の"地湧の菩薩"

ちなみに、世間一般に菩薩同様によく使われている用語(梵語ではなく、パーリ語)はこういうことになる。・・・
【普通名詞】
  bodhisatta/菩提薩埵⇒菩薩
  buddha/佛陀…成道僧 or 覚者
  tathāgata/如来 or 多陀阿伽陀…悟りをひらき真理に達した者
  arahant/阿羅漢…尊者
  muni/牟尼…聖人
  bhagavā/世尊 or 天尊
【固有名詞】
  釈迦Sākiya/釋迦…シャーキヤ族⇒部族国家
  ゴータマGotama/瞿曇…特に優れた牛goと云う婆羅門系族姓♂
   ゴータミーGotamī…♀
  シッダッタSiddhattha/悉達多…釈尊の幼名

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