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■■■ ジャータカを知る [2019.6.26] ■■■
[108] ラマ王子
[#461]DASARATHA/十車王譚では釈尊前生の至高の王となったラマ/羅摩の王子時代の経緯を描いている。些細な点で異なるとは言え、内容は大長編叙事詩(24,000詩節) 「ラーマーヤナRāmāyana(コーサラ国の英雄ラーマ王子行状記)のほんの一部のガイストのようなもの。
もちろんラマは釈尊の前生だから、ヒンドウゥー教におけるビシュヌの第7化身としてのラーマを示唆する話は微塵も含まれていない。

ジャータカでの登場人物は、ベナレスBenaresのダサラタDasaratha王が2人の妃との間でもうけた子供達。
 長男:ラマ・パキータRama-paṇḍita or Rama the Wise…母は最初の妃
 次男:ラッカ・パキータLakkha-paṇḍita or Lucky…母は別な妃
 娘 :シーターLady Sītā…ラーマーヤナではラーマの妹ではなく結婚相手
そこに、新しい愛妃との間にもう一子。
 愛息:バラタBharata

王はこの子に恩恵を与えると約束。そこで妃は王権を要求。
優秀な兄達を殺すつもりかと激怒。しかし余りに危険なので、王城から兄達を出立させ、自分の寿命は12年で尽きるから、それまで森で亡命者として暮すようにと。そこで、ラマ、ラッカにシーターの3人はヒマラヤで野生の果物食生活。
ダサラタ王は9年目で逝去。女王はバラタを王位に付けようとしたが、廷臣たちは王権は森の王子にありと語ったので、バラタはそれに従う。
ラッカとシーターはバラタから王の死去を聞いて号泣し大いに動揺したが、ラーマは全く動ぜず。死は皆に訪れるもので、涙しても何の役に立たないと。そして、決めていた12年にならないから、自分は残るが、皆は都に帰り、バラタが統治するように、と。
3年間が終わると、ベナレスに入って統治者の地位に就く。・・・

譚の最後は、詩節「完璧な叡智」。
 60世紀に渡り、
 1万人を越える人々が、皆、
 こう言った。
 剛腕ラマの治世が続き、
 そのお蔭で 幸せは三重に。

ラマはダルマの王とされているのだろう。

尚、釈尊の没年ははっきりしないが、紀元前483年との説をとれば、「ラーマーヤナ」(紀元3世紀頃成立したコーサラ国の王族譚と見られている。)はその後に生まれたことになる。しかし、ジャータカ同様、現存文献は後世編纂書だから時間軸における互いの位置関係はなんとも言い難し。

とは言え、「ラーマーヤナ」の大衆人気の元はセイロン島に拉致されたシーターを羅刹から奪還するラマ王子の戦い。なかでも、ハマヌーン(猿族)の活躍話であり、それを助けた鳥族の存在と見てよさそう。ジャータカにそのような英雄的活躍話を入れ込む余地は全く無い。

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