→INDEX ■■■ ジャータカを知る [2019.6.28] ■■■ [110] ハリタ尊者 ハリタ尊者が王不在時に王妃と不倫行為を行ったが、報告を受けても王はそれを信じなかったし、帰還してもその姿勢は同じ。王妃は不倫を隠さずに認めたというのに。 尚、ハリタとはパーリ語で黄金色とかヒマラヤの山名。尊者の出自は裕福な婆羅門と見てよかろう。 英訳の詩節だけを見て、素人が勝手に解釈して描いてみた。 【1】王 友人ハリタよ。 私の耳にしばしば入って来た言葉がある。… あなたの敬意が、 道徳的に罪深い生活を生み出してしまった、と。 報告書には、 真実は存在しないと、私は信じているのだが。 貴殿は確かに潔白だ、そんな風に考えて良いかね? 【2】ハリタ尊者 邪悪なことは色々あったのだ。大王よ。 あなたも聞いたことがあろう。 この世界の妄想的な観念に捕まってしまったのだ。 私はそう考えている。 【3】王 虚しさこそ、人間の最も深い智慧。 胸中から湧き上がる情熱を払拭させるから。 【4】ハリタ尊者 この世界には、4つの情熱があるのだ。大王。 でも、皆、いずれにも入れ込み過ぎ。 名称で呼ぶなら、それらは、欲望、憎悪、過剰、無知。 ここでは、知識など足掛かりにもならないのだ。 【5】王 高潔さと豊かな知性に恵まれているが故に 聖者ハリタは私達の尊敬を勝ち取った。 【6】ハリタ尊者 邪悪な考えと愉悦の悪徳が組み合わさると 高徳性は失われて行き、賢者は堕落の一途。 【7】王 美しさは、人々の無垢な心から発し、 輝いているからこそのもの。 ところが、モラルというフレームで形付けられると、 損なわれてしまう。 だから、それを捨て去ればよいのだ。 そうすれば、あなたは祝福を受けることになろう。 あなたの智慧は何倍にもなると宣言してもよかろう。 【8】ハリタ尊者 盲目的な情熱の結末は苦い。 欲望は増長していくもので、私はその根を断つしかない。 【結】師 ハリタは真実のため、実に勇敢に戦ったのでした。 そして、欲望を見捨てたのです。 その結果、梵天の居る天界に昇ったのです。 思うに、ジャータカとは、教団内の口伝を文書化したとされる他の経典とはかなり性格が違うのでは。 伝承は、出家者ではなく、在家の人々と思われるからだ。つまり、在家の人々の信仰生活を支援していた僧侶が伝えてきた口伝を文書化したと考えるのである。 教団内部ではおそらく重要ではなかった筈だが、もともと釈尊の説法会では在家者と出家者を区別せずにいたようだから、哈利達仙譚的な話も多かったと思われ、生の説法に近いものが文書化されている可能性もあろう。 これに対して、一般の仏典は、基本は散文。特に、教団内のルールを成文化するなら詩篇などもっての他だからだ。 しかし、もともと説法は詩的なものだったに違いなく、特に、在家はその美しさを楽しんだに違いなかろう。 それなくしては、煩悩退治のパトスも湧かなかったのではなかろうか。 →ジャータカ一覧(登場動物) (C) 2019 RandDManagement.com →HOME |