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■■■ ジャータカを知る [2019.6.29] ■■■
[111] 一角仙人
謡曲の金春禅鳳:「一角仙人」@室町時代は天竺物。その筋は良く知られている。・・・
波羅奈国で鹿から生まれた頭に角が一つある仙人が主人公。竜神を岩屋に封じ込めたので、旱魃化したので帝は美女を覇権して誘惑させる。目論み通り、神通力を失って大雨。
このお話はえらく気に入られているようで、様々な書に登場してくる。
 歌舞伎「鳴神」
 「今昔物語」巻第五第四 "一角仙人女人を負はれ、山より王城に来たれる語"
 「太平記」卷三十七 "身子声聞 一角仙人 志賀寺上人事"

その原典は、「マハーバーラタ」リシュヤ=シュリンガṚṣyaśṛṅga物語らしい。もちろん、「ラーマーヤナ」I.9にも登場するが。
ユニコーンの原点とも言えそうな主人公だが、森で隠棲している仙人の種で鹿が受胎してしまい、角のある子供が生まれたとされる。父が育て、力のある仙人に成長したのである。その仙人が、降雨/旱魃と係る訳で、相当な古層の信仰と見てよさそう。

ジャータカにも、この話が引かれている。祈雨の関係からではなく、女性の誘惑が修行者にとって大問題ということで取り上げられている。

[#523]阿蘭布薩天女譚
父にイシシンガIsisiṅga隠者/獨角仙人と名付けられ、厳しい苦行を経て類い稀なる神通力を身につけたのだが、その威力は帝釈天の知るところになる。帝釈天は、このままでは地位を奪われると考え、アランプサーAlambusā天女に誘惑させることに。女性の存在自体を知らなかった青年でもあり、すぐに愛欲の世界の虜に。
しかし、亡父の忠告を想い出し、修行の日々に戻ることになる。
もちろん、父親が釈尊前生。

[#526]那利伽王女譚
カーシKāsi王国は旱魃に見舞われる。帝釈天が訪れ、その原因はイシシンガ隠者であると。雨が降り始めると、激怒して空を見上げるので雨が止むから。
解決するには、王女ナリニカーNaḷinikāを派遣して戒を破らせばよいだけと告げる。こうして出向いた王女は巧みな誘惑で見事成功。

マ、美しい女性に誘惑されれば、煩悩が疼くわけで、この手の話は少なくない。

[#423]根譚
サラバガSarabhaṅgaは数千人もの修行者の師だが、7名の弟子がいた。
 兄ナーラダNārada
 弟Kāḷadevala
 賢者サリサラSālissara
 賢者メジサラMeṇḍissara
 賢者パバタPabbatissara
 賢者Anusissa
 賢者キサヴァッカリKisavaccha
あるとき、ナーラダは川に沐浴に来る美女に夢中になって寝込んでしまう。弟は弟子達と共にそれに対応。
やって来た師は、情欲による気力喪失を問題視。一方、ナーラダは、その愉悦は幸福ではないかと。
師は、目先ばかり考えるな、と。しかし、ナーラダは、それは悲惨そのもので、とても捨てられないと言う。・・・
しかし、弟子たちもやってきて教え諭すことになる。そして、官能の魅惑の恐ろしさを理解したのである。
この譚の題名"Indriya"は、五感を意味するが、パーリ語ではセンサーと言うよりは原理をコントロールするという状況を示す言葉。漢訳なら五感ではなく五根とした方が通る。日本では六根が通りがよいが。

そのママ、ズバリ"誘惑する者"Palobhanaという題名も使われている。

[#263]小誘惑譚
赤ん坊の時から、女性を知らずに育った王子もはや16歳。
王は、ハニーボイスの踊り子に誘惑させて、王位を継げる男に仕上げることに。王子は夢中になってしまったので、2人を都から追放。小屋を作って暮らすことに。
ある時、隠者が小屋を見つけてやってきたが、一人だけだった女性に誘惑されてしまう。離れることもできなくなったが、見つかってしまい逃亡するも海に落下。
要するに、愛妻に浮気されてガッカリの図である。

[#507]大誘惑譚
王子Anitthi-gandhaは女嫌いで清潔そのものの生活をしているので王は心配。愛の歓びを教えてくれそうな女性に期待するほかなし。
そこで、優美な姿で、色白の美しい肌をした召使の乙女に、成功すれば王子を夫にするから誘惑せよと。
そこで、王子の寝室の前でリュートの演奏と甘い歌声。
その結果は言うまでもなし。
流石に、この譚ではほとんど詩節で記載されており、野暮な解説文はつけられていない。
最後の釈尊の一言解説が読ませどころ。
 信者の仲間達よ、
 女性とは
 自分のためなら、
 清められた神聖な魂であろうとも
 道徳的罪の行為に走らせるもの。

どのような姿が魅力的なのかは、何とも言えぬが、太った肢体は魅惑的なのだろうか。時代とその社会の通念で相当に違う訳で。太った身体は好まれるのか否かは難しいところ。世間では美しい娘とされていても、違う文化に育った母親は痩せすぎて大いに心配したりする。
[#106]釣瓶女
"肥った"娘に誘惑され、諦めることができなくなり、父親のもとを去るしかなくなってしまったのだが、彼女は肉魚にギーと塩の食事に拘る。そこで、急遽逃げ戻るというだけの話。

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