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■■■ 今昔物語集の由来 [2019.7.16] ■■■
[16] 亀譚
🐢亀譚としては、すでに"空飛ぶ亀[巻五#24] "[→]を取り上げたが、他にもあるので一通り眺めておきたい。
 【天竺部】巻五天竺 付仏前(釈迦本生譚)
  [巻五#19] 天竺報人恩語
  [巻五#24] 不信鶴教落地破甲語
  [巻五#25] 為猿被謀語
 【震旦部】巻九震旦 付孝養(孝子譚 冥途譚)
  [巻九#13] □□人以父銭買取放河語
 【本朝仏法部】巻十七本朝 付仏法(地蔵菩薩霊験譚)
  [巻十七#26] 放男依地蔵助得活語
 【本朝仏法部】巻巻十九本朝 付仏法(俗人出家談 奇異譚)
  [巻十九#29]報山陰中納言恩語
  [巻十九#30]報百済僧弘済恩語
 【本朝世俗部】巻二十八本朝 付世俗(滑稽譚)
  [巻二十八#33]大蔵大夫紀助延郎等唇被咋

 【天竺部】巻五天竺 付仏前(釈迦本生譚)
[巻五#19]天竺龜報人恩語
天竺の人が亀を買って放してやると、数年後、大きくなったその亀が突然枕元にやって来て大洪水を予言し、船を用意しておけと言う。
その通りになり、家人を乗せて出ると、亀がお出迎え。
そのうち、流されて来た蛇が救けてと言うので、乗船して欲しくはなかったが、乗せてあげた。続いて狐も助けた。亀は、人は恩知らずだから、見捨ててよいと言ったが、舟主として男を助けた。・・・
この後のストーリーはだいたい想像がつく。"亀の言う通り。"

[巻五#24][→空飛ぶ亀]

[巻五#25]龜為猿被謀語
"猿の生き胆"話。猿知恵が優るという話で、もちろんジャータカに類似譚がある。[#57猿王, #208鰐, #342猿]

 【震旦部】巻九震旦 付孝養(孝子譚 冥途譚)
[巻九#13]□□人以父銭買取龜放河語
船人に商売の資金5千両を与えて、5匹の亀を放生する。船人は水死し、亀の化身である黒衣の5人が水に濡れた5千両を、男の家に届ける。
亀の報恩譚であり、孝行譚を集めた巻には合っていない。どのような意図で収載したのか、はなはだわかりにくい。
それに、この話、もともとは法華経霊験譚だったとの説もあるし、□□は天竺という文字を消したの指摘も。何故に、そんなことまでしんければならないのだろうか。
儒教が個人の精神生活にまで入ってくる震旦には、孝行談など腐るほどあるというのに。

 【本朝仏法部】巻十七本朝 付仏法(地蔵菩薩霊験譚)
[巻十七#26]買龜放男依地蔵助得活語
男が漁師から亀を購入し放生。ところが、その亀は地蔵菩薩の化身だった。男は病死するが、そのお蔭で、冥土から蘇生できた。
典型的なお話。

 【本朝仏法部】巻巻十九本朝 付仏法(俗人出家談 奇異譚)
[巻十九#29]龜報山陰中納言恩語
山陰中納言が住吉へ参詣。鵜飼の男に着物を与え大亀を買い取って、海に放してあげる。
ある時、中納言の息子が継母に殺されそうになるが、亀が掬う。

[巻十九#30]龜報百済僧弘済恩語
備後三谷(=三次 向江田)の大寺(廃寺跡が出土)の由縁話でもある。援軍を送れども、百濟は滅亡@663年。そこで、仏国をしのんで大伽藍を造営し仏菩薩像を顕わすとの願をかけたのである。
その過程で、黄金を求めて都に行き、帰途につく際、港で亀を放生。備前骨島辺りで日暮れになり海賊に船を乗っ取られ、船から海に出されたが、亀の背中に乗せてもらい命びろい。
黄金を寺に売りに来た海賊は仰天。和尚は咎めす買ってあげる。
結語は、亀の恩、天竺〜震旦〜本朝に及ぶ、と。

瀬戸内海は、古事記でも亀が登場してくるから、古代はかなりの数が棲息していたと見てよさそう。

 【本朝世俗部】巻二十八本朝 付世俗(滑稽譚)
[巻二十八#33]大蔵大夫紀助延郎等唇被咋龜語
実生活では、金貸しでそれなりに成功。しかも本業の官僚としても叙勲を受け出世しているというのに、おふざけで、亀にキス。首を出してきて口を噛まれ。離すことができず、どうにもならなくなり、ひどい目にあう。
だからナンダ、ではある。一応、けち臭い戯れ事は止せというご教訓らしいが。

尚、亀には、鳥と同じで口蓋に歯はついていない。ところが、この話では強靭な歯があり、深く噛まれ、そこから血が流れ落ちている。だが、コレ作り話ではない。繊維を切断するために刃のような皮膚組織が、餌が入っていく方向に沢山付いているからだ。顎の噛み合わせ力は強いので、深く咬まれてしまうと、この部分がすべてつき刺さることになる。

尚、亀譚ではないが、死後に、親が亀になることを示唆しているような記述がある。
 【震旦部】巻七震旦 付仏法(大般若経・法華経の功徳/霊験譚)
[巻七#46]真寂寺僧恵如得閻魔王請語


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