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■■■ 今昔物語集の由来 [2019.8.22] ■■■
[53] 平将門
巻二十五 本朝 付世俗(合戦・武勇譚)は武士の時代到来を彷彿とさせる話というか、一種の系譜話。
巻頭は【承平・天慶の乱】。巻尾は欠文だが【後三年の役】。編年風の仕立てになっている。
冒頭の2譚は、東と西である。
  [巻二十五#_1]平将門発謀反被誅語
  (東国)平将門[n.a.-940年]の乱
   +
  [巻二十五#_2]藤原純友依海賊被誅語
  (西国)藤原純友[n.a.-941年]の乱

兵の世とはどういうことか、実に、歯切れが良い説明がなされている。
 弓箭を以て身の荘として、
 多の猛き兵を集て伴として、
 合戦を以て業とす。


この譚では、関係者一同の名前を登場させている。
新たな天皇と称したから衝撃的な反乱ではあるものの、一族のほんの一部に武闘派が加わっただけの系譜でしかないことがわかるようにしたのであろう。
話の内容から勘案すると、源経基が重視されているように見える。
系譜で登場人物を眺めると、こんな具合。・・・
《平将門係累》
○高望親王(柏原の桓武天皇の孫)

├┬┬┬┬┐
○国香
│○良将、良文、良広
○良持/良将…鎮守府将軍
│○良兼
良茂
┼┼良正

├┬┬┬┬┬┬┬┐
将俊、玄茂(将持,将弘か?)
┼┼┼将門[n.a.-940年]
┼┼┼┼将頼…下野
┼┼┼┼┼○将平…「新皇」宣言反対論者
┼┼┼┼┼┼将為…下総
┼┼┼┼┼┼┼将文…相模
┼┼┼┼┼┼┼┼将武…伊豆
┼┼┼┼┼┼┼┼┼致時、貞時

┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼多治経明…上野
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼藤原玄茂…常陸
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼興世王…上総
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼文屋好立…安房
┼┼┼┼┼┼┼┼┼┼坂上遂高
貞盛[n.a.-989年]

┼┼┼┼↑良正
┼┼┼┼├┬┬┬┬
┼┼┼┼┼┼致頼…道長四天王
├┬┬
維将
維敏
┼┼維衡…道長四天王

《(推定)嵯峨源氏》
n.a.


├┐

隆、繁

《清和源氏》
経基[n.a.-961年]…武蔵國の介として反興世王姿勢を示した。

《藤原氏》 [→藤原氏列伝]
 (「式」家)
不比等─宇合─百川─緒嗣─春津─枝良─(三男)忠文[873-947年]⇒征夷大将軍
            +忠舒(弟)
 (「北」家 魚名流)
不比等─房前─魚名─(五男)藤成─豊沢─村雄─秀郷/俵藤太

---地位を失った国司---
・藤原維畿@常陸 v.s. 藤原玄明(藤原玄茂の兄弟なのだろうか。)
・大中臣宗行 & 藤原弘雅@下野
・藤原尚範@上野

続いては西。
こちらは、親は筑前守で、藤原氏「北」の係累。
 [巻二十五#_2]藤原純友依海賊被誅語
独立王国樹立を目指すような動きではなかったようだ。
「伊予国純友、悪行を宗とし、
 盗犯を好て、船に乗て常に海に有て、
 国々の往返の船の物を奪ひ取り人を殺す。
 此れ公私の為に煩ひ無きに非ず」

橘遠保[n.a.-944年]に誅殺の命。
名前からして、伊予の一族と関係が深そうだ。そうなれば、カネと権益譲渡をちらつかせれば、海軍を集めるのは容易いし、純友の情報もすぐに集まった筈。海賊的な組織相手なら、潰すのは訳なかろう。

ただ、この反逆は、余程、癪に障ったようで、晒首の大々的公開に拘ったようだ。京では大衆的な一大イベント化したと記載されている。

〆は、このような重大事変が発生したことで、人々が色々と言う、との一行。
時代の転換点と人々が感じ始めたことを示唆している訳で、的確な指摘と言えよう。・・・
 此る大事共の打次き有をなむ、
 世の人、云繚ける


《藤原氏》 [→藤原氏列伝]
 (「北」家)
├┬┬┬┐
国経[828-908年@清和→陽成→光孝→宇多
┼┼遠経[835-888年@仁明→文徳→清和→陽成→光孝
┼┼│○基経[836-891年@文徳→清和→陽成→光孝→宇多
┼┼高経[n.a.-893年]弘経[838-883年]清経[846-915年]
┼┼
┼┼○良範、茂範、数範、尚範
┼┼
┼┼純友[893-941年]
┼┼
┼┼重太丸[928-941年

全14譚の最後は欠文だが、題目が記載されており、何を記載する予定だったかがわかる。
 [巻二十五#14]源義家朝臣罸清原武衡等語 (欠文)
【後三年の役】1083〜1087年@出羽での源義家 v.s. 清原武衡/岩城三郎の戦いだ。
前譚で関係する【前九年の役】と無縁ではなく、合戦談義としてはノリが悪くなるので収載取り止めということか。
源義家譚としては今一歩のストーリーであると判断したのかも知れぬが。
《清原氏》@出羽
○n.a.

├┐
○光頼
○武則…【前九年の役】1051-1062年(安倍討伐の源頼義・義家を支援)

○武貞、武衡[n.a.-1087年]、武忠、武道、公清、家衡

《清和源氏》
源義家[1039-1106年]

[ご注意]邦文はパブリック・ドメイン(著作権喪失)の《芳賀矢一[纂訂]:「攷証今昔物語集」冨山房 1913年》から引用するようにしていますが、必ずしもママではなく、勝手に改変している箇所があります。

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