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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.1.18] ■■■
[202] 仏物盗用罰
"仏物は量無く、罪深き物也けり。"譚を取り上げた。[→酒壺の蛇]
続いて、"仏物などは欺用する事無かりけり"の譚を取り上げよう。
  【本朝仏法部】巻巻十九本朝 付仏法(俗人出家談 奇異譚)
  [巻十九#20]大安寺別当娘許蔵人通語
 大安寺別当の僧の上品で美容姿端麗な娘のもとに、
 蔵人が人目を忍んで毎晩通っていた。
 そのうち、離れ難くなり、昼になっても帰らなくなったり。
 そんなことで、
 長居し昼寝をしていて夢を見た。

   この家の身分の上下すべての人が、
   突然、大声を出して泣き出した。
   どうしてか怪しく思い見に行った。
   舅の僧、姑の尼を初め、家の人全てが、
    大きな器を持って泣き叫んでいた。
   どうしてかよく見ると、
   器の中に、赤く融けた銅が入っていて、
   地獄の鬼が責めながら飲ませいる。
   飲めそうもないが、泣く泣く飲んでるのだった。
   ようやく飲み終えても、お替わり。
   下人にまで、飲まない者はいないのである。
   女房が呼びに行き、自分の隣に寝ていた娘もやって来た。
   いぶかしく思い見ていると、
   女房が大きな銀の器に銅の湯を一杯に満たして手渡す。
   娘は受け取り、か細い声で泣き泣き飲む。
   すると、目耳鼻から、炎や煙が吹き出してきた。
   奇異なことと思っていると、
   「お客人にもさしあげなさい。」
   と言われた女房が
   銅の湯が入った器を台に載せ持って来たのである。
   こんな物を飲むのかと、
   恐ろしさで胸が苦しくなり

 そこで、目が覚めた。
 丁度その時、女房が食事を台に載せ持って来た。
 舅達も、食事をしながら語り合っている。
 その時、男は思ったのである。
 「舅は寺の別当。
  寺物を自分勝手に使ったり食べているのだろう。
  その報いが、あの夢で見た責め苦だ。
  この食事を食べてはいけない。」と。
 そう決めたので、気分が悪いと言って、食べずに返ったのである。
 娘への想いも失せ、二度と通わなくなってしまった。
 慙愧の想いと道心から、以後、仏物を私用することはなかった。


飲(食)の罪で墜ちるのが「叫喚地獄」。基本は、口を鉗でこじ開けられ、溶けた銅汁を飲まされる罰。内臓が焼き爛だれてしまい、 下から直に流れ出ることになる。
オドロオドロしい話である。典型話が連続して収載されている。
  [巻十九#19]東大寺僧於山値死僧語
東大寺に住する僧が花を摘みに東側の奥山に行ったが、道を踏み間違い、迷ってしまう。何処だかわからず、谷合いを、夢の中如くに歩き続けると、瓦葺きの廊の様な造りの僧房のような所に。
そこには見知った、死んだ東大寺僧が居たのである。
亡者僧は、出会って大喜び大泣き。そこは地獄だったからである。
寺に住していた時の報いなのだ。
 徒に、供物を請いて、飲食。
 倦怠の日は、入堂しなかったりも。
 さらに、学問をも怠った。

それが故、すさまじき業苦を受けていたのだが、その様子を隠れて見ることになってしまう。
 金箸で口を開かされ
 そこに壺で沸騰している銅汁を注がれる。
 尻から、その湯が流れでており、
 目・耳・口、身体の節からは煙が出ていた。
 涙を流し、悲鳴をあげるだけ。


マ、当然ながら、寺に戻った僧は、懺悔し、そのような罪深いことをしなくなる訳だ。

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