→INDEX

■■■ 今昔物語集の由来 [2020.2.2] ■■■
[217] 寿命宣告
巻26"宿報"のコンセプトはわかりにくい。[→天井川洪水命拾い]
少しづつ、見ていくことにしたい。

ヒトの寿命は、産まれる前に既に決まっているというのは、わかりやすい考え方だが、それを誰がどのように決めたとかいう点では、宗教で大きく異なってくる。

その一方で、現世における、"意志"でコントロール可能な"主体的"行為たる、善行・悪行でそれが伸びたり短くなる。
それに加え、善行・悪行とは無関係に寿命を左右する事象があると考えることも可能だ。

こうした見方には矛盾が内包しているが、併存させるには、それに気付かぬふりをするしかない。と言うか、個々の譚は、そのような全体観とは無関係にストーリーが形成されており、そこだけで完結しているので、読んでいる方は、どうもすっきりしないことになる。
「酉陽雑俎」だと、マ、そんなものですぞという感じで様々な話が紹介される訳で、ご自分で考えたら如何と突き放す訳だが。
「今昔物語集」は流石にそこまで突き抜けることはないが、似たような状況にならざるを得ない。
  【本朝世俗部】巻二十六本朝 付宿報
  [巻二十六#19]東下者宿人家値産語
 東国に行く道中、とある人里で日が暮れてしまった。
 そこで、裕福そうで余裕ある造りの小家で一晩の宿泊をお願いした。
 主人らしい老女が受け入れてくれ、客間に通さた。
 従者達も部屋をあてがわれ、馬も厩に。
 旅籠に持参に入っている物を食べた寝ることにした。
 ところが、夜が更けてから、急に家の奥が騒がしくなり、
 女主人がやって来て、
 臨月の娘が産気付きましたが
 あなら様は如何致しますかと訊かれたが
 忌みをしませんので、お気になさらぬようと、答えた。
 暫くすると、出産した様子。
 すると、部屋片側にある戸から
 伸長8尺の恐ろし気な者が入ってきて
 気味悪い声で「年齢8才で自害。」と言いながら
 外へと去って行った。
 それが何者かは、わからず。
 このことは知らせずに、朝早くに出立。
 それから、東国で8年を過ごし帰京となった。
 途中で、来た時に親切にも宿泊させてくれた家を思い出し、
 あの時の礼を言わねばならないと思い、
 再び泊めてもらうことに。
 女はかなり老いていた。
 雑談をしていたが、
 この前泊めて頂いた夜の出産を思い出し
 あのお子さんはかなり成長されたことでしょう、と言い出すと、
 女は泣きだしてしまい、
 可愛いい男の子に育ったのですが、
 昨年のこと、高木に登って枝を伐っている時に、
 落ちてしまい、持っていた鎌が頭に刺さって死にました。
 実に悲しい出来事でしたと言う。
 そこで、出産の時、寿命宣告した者がいたことを告げ
 おそらく、鬼神か精霊か、予言したのでしょう、と話したので
 女はますます泣き。悲しんだのである。

ご教訓は、
 人の命は、皆前世の業に依て、
 産るる時に定置つる事にて有けるを、
 人の愚にして知らずして、
 今始たる事の様に思歎く也けり。


 (C) 2020 RandDManagement.com    →HOME