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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.3.10] ■■■
[254] 優波崛多
優波崛多/ウパグプタは愛育王/アショーカの師。
摩突羅国/マトゥラーの崛多長者の息子で、17才で出家し、20才で受戒し、すぐに阿羅漢果[衆生教化資格]證を得たとされる。
衆生の教化救済の第一人者と見なされており、「無相好仏」と呼ばれており、第4祖と書かれているのが普通。[→《釈尊伝灯》@"無着の神通力"]
 [1]摩訶迦葉
 
[2]阿難
 
[3]商那和修
 
[4]優波崛多
 
[5]提多迦
  [吉迦夜,曇曜[訳]:「法蔵因縁傳」472年]

「今昔物語集」には3譚所収。
  【天竺部】巻四天竺 付仏後(釈迦入滅後の仏弟子活動)
  [巻四#_6]天竺優婆崛多試弟子語
  [巻四#_7]優婆崛多会波斯匿王妹語
  [巻四#_8]優婆崛多降天魔語

最初は、神通力の話でもあり、弟子を育てる方便の話でもある。

 釈迦入滅後百年頃。
 師の優婆崛多羅漢から
 女人に近付くなと、常に呵嘖されていた弟子がいた。
 すでに羅漢果を証せる身ですから、
 女に触れることはございませんと答えているし、
 他の弟子達も、
 貴い僧なのに、師がどうしてそう仰せになるか怪しく感じていた。
 その弟子の僧が、道程の途中で渡河していた時のこと。
 女も渡ろうとし、流されてしまい、僧に助けを求めた。
 流されて行き可哀そうなので
 師の仰せにもかかわらず、手を取り、引き寄せて助けた。
 その手は白く柔らかくふっくらとしており、気持ちがよい。
 そこで離さずにいたところ、女は恐ろしそうに、
 「手をお放しく下さいませ。」と。
 僧は
 「前世の契りが深いからでしょうか。
  慕わしく思われて。
  話を聞いて下さらぬか。」
 と言う。
 「死ぬ寸前をお救い頂いたのですから
  なんなりと。」
 と応えるので、嬉しくなり、人がいない茂みに連れ込んだ。
 ことに及ぼうとすると、その女は、師の優婆崛多だった。
 逃げようとするが、挟まれたままで、そうもいかない。
 「八十にもなる老法師に愛欲を欲するとはどういう了見だ。
  汝は女に触れる心無しではなかったのかか?」
 と大声で罵られてしまい、道行く人に知られてしまう。
 弟子の僧は、恥ずかしいことこの上なし。
 優婆崛多は弟子を捕らえて大寺へ戻り、
 鐘をいて、衆生の会合を開催し、この話を語った。
 恥ずかしく悲しく、身が砕ける思いを味わったその弟子は
 罪を懺悔し、
 その後、阿那含果の位を得ることができた。


次は、優婆崛多の話というより、老比丘尼の断片的釈尊追慕。
ただ、この話の存在で、優婆崛多が、衰微しかけていた仏教教団を立て直して仏法隆盛に導いたことがわかるようになっている。

〇優婆崛多は、釈尊涅槃の後の人なので、
 御坐する御有様を大変に恋しく思っており
 実際に仏に会い奉った人を尋ねていたところ
 100才を越えた、波斯匿王の御妹は
 幼児の頃お会いしていると告げた人がいた。
〇優婆崛多、大喜びし、その尼を訪問。
 到着し対面理由を申し述べると、呼び入れてくれた。
 入口の戸の脇に油を盛った坏が置かれていたが
 喜びで急いで入ったのでそれに気付かず
 裳の裾を坏に懸けてしまい溢してしまった。
 尼は、来訪の故を知ると
 100年経ち仏法の衰へたものよ、と語り
 往時、釈尊が常に呵嘖していた
 鹿群比丘という勘当モノの弟子がいたと回顧。
 そして、その物狂いで騒がしい御弟子は
 戸の脇に置かれた油を気にも止めず入ってきました、と。
 優婆崛多、極めて恥ずかしく、身が砕ける思い。
〇波斯匿王の妹が幼少の頃、仏が親を訪問されたという。
 還られて、金の簪が紛失。
 その後、7日を経て、ようやく、寝床の上で見つかった。
 怪しいことと、調べてみると、
 仏身から放たれた金色光が7日間室内に残っていたため、
 その御光に消され簪が見えなかったのである。
 8日目の朝、御光が失せて見つかったということ。


3つ目の譚は天魔降伏話。
修行や説法を邪魔する天狗を仏法に帰依させる典型パターンだが、天狗とはされていない。と言うことは、ここらが天狗の起源ということかも。
カルマがとてつもなく重視される天竺の風土だと、美しい女性が存在するだけで、皆の心が千々に乱れてしまい、仏道どころではなくなるのは致し方なかろう。
現在も男根女陰像のシバ神信仰は根強く生き残っている訳で、天魔の誘惑を振り切る力を衆生に持たせる取り組みは、そう簡単に成果があがることはなかろう。

 説法で大勢聴衆が集まっている庭に形貌 端正で美麗な女が出現。
 愛欲の心で法を聞く妨げになってしまう。
 優婆崛多だけは天魔の仕業と見抜き
 その女の頸に花鬘と称して打ち懸けたが
 それは諸々の不浄の人・馬・牛等の骨を貫いた首輪。
 臭くて気分が悪いことこの上なしの代物。
 外せないので、途端に女は天魔の形相を露見し、右往左往。
 天魔は取り外しを乞うものの
 大自在天は佛弟子の所爲なので難しいと伝える。
 しかたなく、聖人に説教妨害で来たことを懺悔し取り外しを願う。
 これからも邪魔をしないならと、優婆崛多は取り去ってあげた。
 林に去った天魔は返礼に仏の貴いお姿に化身して出現。
  長は丈六、
  頂は紺青の色也。
  身の色は金の色也。
  光は日の始めて出るが如し。
 天魔なので拝んではならぬとわかっていても、
 聖人は思わず涙し、大声で哭き臥せて礼拝。
 天魔姿を顕してしまう。
 こうして、優婆崛多は天魔を降伏させた。


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