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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.5.3] ■■■
[308] 「賢愚因縁經」
慧覚,他[訳]:「賢愚(因縁)經」445年とは佛陀本生傳(13巻全69品)
釈尊が祇園精舎@舎衛城に滞在中に比丘に対して行った、身口意の賢愚で生じる果報や転生先についての説法記録集である。

だからこそ、伝聖武天皇筆の荼毘紙の写経断片が大切に保存され続けたのではないかと思う。字粒が大きく、端正で大振りの筆致が印象的な書である。なんといっても驚きは、一行一七字の"理由なき"慣習を無視し、11〜13文字で書いている点。
  →「賢愚経断簡(大聖武)」8世紀@東国博(C)NICH

そこにはかなりの思い入れを感じるが、わかる気もする。それは他の経典ほど編纂集臭を感じさせないからだろう。換言すれば、読むと、釈尊の肉声を感じるということ。
多くの場合、因縁時代設定は過去仏 毘婆尸佛の在世Ⓛや滅後Ⓓとされており、釈尊のもとで出家し阿羅漢果を得たことで大団円。

仏教経典の特徴は"如是我聞"から始まる点にあり、「今昔物語集」の全ての譚の冒頭に"今ハ昔"を置いたのも、それに倣ったのだろう。
そのことは、「今昔物語集」を、仏典からバラバラ単純に引いてきただけの因果応報物語集として見て欲しくない、ということかも。
如是我聞:
    一時佛在羅祇竹園精舍。 or
     一時佛在舍衛國祇樹給孤獨園。
     一時佛在摩竭國竹園之中。
   :
    衆會聞者皆得道證,受持佛教,歡喜奉行。 or
     ・・・爾時四衆聞佛所説,歡喜奉行。
     ・・・衆會,聞佛所説,歡喜奉行。


こんな説明では、かえってわかりにくいか。
つまり、"こんな話もございます。"的紹介集ではなく、「事実譚」を整理して並べてみると"こうなります。"ということ。読者は、それを読み取れ、と言っているようなもの。
ただ、それを、難しい顔をして編纂した訳ではなさそう。サロン的雰囲気のなかで、笑いを交えて、楽しんで作り上げていったのではなかろうか。
ここで間違ってはいけないのは、滑稽譚を面白話として大笑いするのではなく、シリアスものに、どうでもよさそうな真面目なご教訓をつけたりして面白がっている点。
これこそが、最高に愉快なのだ。

だからこそ、人前でとても話せないような下品な話題も平然と収録できたのだと思う。

  【天竺部】巻二天竺(釈迦の説法)
  [巻二#_7]婢依迦旃延教化生天報恩語
  ⇒ 「賢愚經」巻五 迦旃延教老母賣貧品(第二十六)
長者の婢は主人に罰を受けていたが、水を迦旃延に供養。死んだ後、主人により、遺骸は山に遺棄されたが、天人に転生しており、降臨して遺体を供養。
  [巻二#_8]舎衛国金天比丘語
  ⇒ 「賢愚經」巻五 金天品(第二十七)
  [巻二#_9]舎衛城宝天比丘語
  ⇒ 「賢愚經」巻二 寶天因縁品(第十一)
  [巻二#10]舎衛城金財比丘語
  ⇒ 「賢愚經」巻二 金財因縁品(第九)
長者の美しい息子は両手を握って出生。両掌にそれぞれ金貨1枚が入っており、取っても尽きることがなかった。そこで「金財」と名付けられた。その後、出家。前生は薪売り。金貨2枚を供養。
  [巻二#13]舎衛城叔離比丘尼語
  ⇒ 「賢愚經」巻五 貧人夫婦疊施得現報品(第二十五)
  [巻二#14]阿育王女子語…阿育王は釈尊同時代だが娘譚なので滅後。
  ⇒ 「賢愚經」巻三 阿輸迦施土品(第十七)
阿育王の娘の前生は銅銭1枚を布施した下婢。右手を握って産まれたが5才の時に掌を開くと金貨1枚があり、取っても尽きることがなかった。
  [巻二#15]須達長者蘇曼女十卵語Ⓓ [→男児が孵る卵]
  ⇒ 「賢愚經」巻十三 蘇曼女十子品(第五十八)
  [巻二#18]金地国王詣仏所語
  ⇒ 「賢愚經」巻七 大劫賓寧品(第三十一)
  [巻二#25]波羅奈国大臣願子語
  ⇒ 「賢愚經」巻一 恒伽達品(第六)
  [巻二#26]前生持不殺生戒人生二国王語
  ⇒ 「賢愚經」巻五 重姓品(第二十八)
  [巻二#30]波斯匿王殺舎離卅二子語<殺> [→男児が孵る卵]
  ⇒ 「賢愚經」巻七 梨耆彌七子品(第三十二)
  [巻二#31]微妙比丘尼語<殺>
  ⇒ 「賢愚經」巻三 微妙比丘尼品(第十六)
  [巻二#33]天竺女子不伝父財宝国語<二枚舌>
  ⇒ 「賢愚經」巻五 長者無耳目舌品(第二十四)
  [巻二#34]畜生具百頭魚語<罵詈雑言>
  ⇒ 「賢愚經」巻十 迦毘梨百頭品(第四十四)
婆羅門の息子は沙門から仏法を学んでいた。にも拘わらず、知恵なき愚師とみなし、頭は獣同然と罵倒。そのため、100の畜生の頭を持つ魚に転生。…身有百頭,若干種類,驢馬駱駝、虎狼豬狗、猿猴狐狸,如斯之屬。
  [巻二#40]曇摩美長者奴富那奇語<罵詈雑言>
  ⇒ 「賢愚經」巻六 富那奇縁品(第二十九)

  【天竺部】巻五天竺 付仏前(釈迦本生譚)
  [巻五#_7]波羅奈国羅大臣擬罸国王語
  ⇒ 「賢愚經」巻一 須闍提品(第七)
  [巻五#_8]大光明王為婆羅門与頭語
  ⇒ 「賢愚經」巻五 金天品(第二十七)
  [巻五#_9]転輪聖王為求法焼身語
  ⇒ 「賢愚經」巻二 寶天因縁品(第十一)
  [巻五#10]国王為求法以針被螫身語
  ⇒ 「賢愚經」巻二 金財因縁品(第九)
  [巻五#15]天竺王宮焼不歎比丘語
  ⇒ 「賢愚經」巻十三 蘇曼女十子品(第五十八)
  [巻五#26]天竺林中盲象為母致孝語
  ⇒ 「賢愚經」巻五 重姓品(第二十八)
  [巻五#32]七十余人流遣他国語
  ⇒ 「賢愚經」巻七 梨耆彌七子品品(第三十二)

  (上記は巻二と巻五のみ。)
《出版物》 「南伝大蔵経」(全65巻)【第11巻下 中部経典四】(賢愚経 等四〇経)大蔵出版 2002年

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