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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.7.25] ■■■
[391] 餓鬼界訪問
餓鬼界とは、おそらく、"閻浮提下五百由旬"にある。そこには36種の魔羅令鬘鬼がいる。
  →「酉陽雑俎」の面白さ…六道の餓鬼と畜生

「今昔物語集」には、神通力で餓鬼界を訪問し、その1種に会って戻って来た釈尊の弟子が語った話が、ポツネンと収録されている。

聖人が、何が目的でそんな場所に行ったのか全くわからない。もちろん、釈尊の指示とか示唆があった訳ではない。

餓鬼界に落とされた者共を救う気があるなら、到着してからなんらかの行動をとるとか、戻ってから供養するとか、なにかしてあげそうなもの。そんな行為を感じさせる動きは皆無。

たまたま現地で遭遇した餓鬼に、言われた通り、戻ってから、その話を皆に伝えただけ。

  【震旦部】巻二天竺(釈迦の説法)
  [巻二#37]満足尊者至餓鬼界語
 釈尊の御弟子 満足尊者は、神通力で餓鬼界訪問。
  
(五百羅漢の漢名号には満足尊者は含まれていない。)
 一人の餓鬼を見つけたが、
 その姿形は極めて恐ろしく、剛毛が立ち、心ここにあらずの様子。
 身体から火を出しており、
 数十丈もの大きさで
 眼・鼻・身体・支肢関節から、長さ数数十丈もの火焔を放っていて、
 野猪のように、唇と口が垂れている。
 身体の縦横は、一由旬。
 手と手を互いに掴み合い、
 声を挙げて吠え叫びながら、東へ西へと、走り回っている。
 満足尊者は、それ見て餓鬼に尋ねた。
 「汝は、前世のどのような罪で、この苦しみを受けているのだ?」と。
 餓鬼は、答えた。
 「昔、人として生まれ、沙門になった。
  しかし、房舎に執着し、慳貪の心根を棄てることが出来なかった。
    
(聖者と違い、"満足"できなかった訳ですな。)
  権勢を笠に、悪口の言い放題。
  持戒し精進に励む比丘を見つけては、罵詈雑言で辱め、止めさせた。
  その罪で、この苦を受けている。
  そんなことで、
  "鋭利な刀で、自ら、この舌を割ろう。"と考えている。
  一日だろうが、精進持戒の比丘を罵倒・誹謗してはならない。
  もし尊者が閻浮提のお返りになるなら、その時、
  我が姿形を諸々の比丘に告げ、
  口の過誤を助けるような妄語を言わぬように、
  持戒の人を見たら、その徳を敬うように、と。
  我は、この餓鬼の姿に生まれてから、
  数千万年間この苦をを受けている。
  又、ここで命が尽きると、地獄に堕ちることになる。」
 言い終ると、吠え叫んで、身体を投地。
 その音は大山崩壊のようだった。
 天は震動。地は激動。


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