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■■■ 今昔物語集の由来 [2020.11.14] ■■■
[502] 和歌詠み地蔵
地蔵信仰は"民間信仰"とされ、貴族社会では余り広がることはなかったとの見方が一般的であるが、「枕草子」210段でも、観音・薬師・釈迦・弥勒・地蔵・文殊・不動・普賢として尊像に入っており、重視されなかったとの見方をママ受け取らない方がよかろう。

普通に考えれば、六道観念にとらわれたのは先ずは貴族僧。地獄抜苦の希求もその層の要求として勃興したと考えるなら、貴族層が地蔵信仰を広げた可能性もある訳で。

そんなこともあって、ほったらかしにしておいた、和歌入り地蔵譚をここらで取り上げてみようと思う。
地蔵霊験譚グループの最後に収載されており、しっかりと読んで欲しいとの編纂者のメッセージが籠められているかも知れないし。
  【本朝仏法部】巻十七本朝 付仏法(地蔵菩薩霊験譚+諸菩薩/諸天霊験譚)
  [巻十七#32]上総守時重書写法花蒙地蔵助語

上総守藤原時重朝臣は赴任3年となり、
年来の宿願から、「法華経」一万部読誦供養へ。
山・寺・里すべてが従った。
巻数を捧て、星の如く館に集って来て、
一万部に達したので
守は大いに喜び、10月に、法会供養。
その夜のこと。
夢に、形端正にして、手に錫杖を取っている少僧が出現。
喜色満面で語る。
「汝が修する所の清浄の善根を、
 我れは、大いに喜ばしく思う。」と。
そして、歌を詠んだ。
 一乗の 実りを崇むる 人こそは
  三世の仏の 師ともなるなれ

さらに、
 極楽の 道はしらずや 身もさらぬ
  心ひとつが なほき也けり

又、
 先に立つ 人の上をば ききみずや
  空しき雲の 煙とぞなる

と。
小僧は、こう宣ってから、歩んで近付いて来て、
自ら左の手を延ばして、守の右の手を取り、
「汝、ますますに無常を観じて、後世の勤めを成すように。」と。
守はこれを聞いて、泣々く貴び、
小僧に申し上げた。
「今の教へ頂いたことは、すべて信ずることにいたします。」と。
そこで、夢から覚めた。
その後、まだ夜が明けないうちに、智僧を請集し、
夢のお告げを語った。
これを聞いた僧達は、涙を流し、
「これは地蔵菩薩の教へである。」と際限なく貴んだのである。
守は、そうそうに仏師を呼んて、
等身大地蔵菩薩を造像し、開眼供養奉った。
その後は、守の一家、
皆、首を傾けて合掌して
日夜寤寐に地蔵菩薩に帰依。

前譚に📖地蔵代受苦引き続きの和歌収録。
但し、こちらは地蔵菩薩自らが和歌を詠んで、極楽往生のために何をすべきか教授するのである。

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