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2004.3.22 |
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お花見気分になれない…まだ3月中旬だというのに、東京でも桜が咲いた。2004年のお花見は、記録的な早さだ。多くの観測地点で最早続出らしい。平年との差が2週間を越えるというのだから驚きである。(1)寒さ嫌いで、外歩き大好き派にとっては、あり難いことだが、自然環境が大きく変わり始めたことを示している。 これは、植物だけではない。 亜熱帯の蝶「ナガサキアゲハ」の分布変遷の実証的研究報告(2001年)によれば、北限域が大きく変わってきたようだ。(2) 1920年代は四国南部、九州以南の分布だった。これが、1945年までに高知県や愛媛県南部へと北上。1983年までに兵庫県や和歌山県、1997年には静岡県浜松市まで生息域が拡大、2000年までに神奈川県、埼玉県内でも目撃されるようになったという。 年間平均気温が15度を越える地域が増えたため、この蝶が北進した模様だ。 蝶マニアの間では、このような状況は決して珍しい現象ではないらしい。南にしかいなかった「ツマグロヒョウモン」が北陸でも見かけるようになっているという。(3)
世界における気温上昇傾向は多くの人が指摘していたことで、今更驚くことではない。 → 「地球温暖化科学の研究組織」 (2003年12月6日) このことは、頭でわかってはいるが、1990年代の日本における気温上昇を見ると、予想を越える。記録続きなのである。(右表(4)) 長期トレンドを見ると、変化のスピードが加速されているように見える。 この上昇スピードで外挿すると、恐ろしい事態が予想される。そう遠くない将来、日本は、亜熱帯モンスーン気候帯に属することになるからだ。 そうなると、恐ろしいのがマラリアだ。 媒介するハマダラカ属の蚊は、亜熱帯ならどこでも生息しているが、リゾート地帯では徹底的な防除活動をしているからマラリアが発生しないだけの話しで、森林地帯に入れば、蚊は生息しているのだ。(5) これが、日本に入ってくると、日本のような森林国では、蚊は蔓延しかねまい。 しかし、一番の危機は、蚊が生き延びれるような環境に変わることではない。この問題にどのように対応すべきか、全く考えようとしない、社会の姿勢である。 地球温暖化防止策の話しは大騒ぎの一方で、現実に我々の生命に対する脅威の方は無視するのである。泥臭い話しは嫌いなのだろう。 特に問題になるのが、蚊の防除だ。病気が発生していないから、安直に考えているのだろうが、気温が上がれば、大変なことになろう。 発展途上国のように、殺虫剤を撒き散らすつもりならよいが、反対者ばかりだから、それは無理だろう。それでは、どのような方法を取ればよいのだろう。 今や都会で蚊取りが売れる。ビル街のそこらじゅうに、ちょっとした水溜まりがあり、そこが蚊の孵化場になっているからである。これを無くすつもりなら、今から始めなければ無理だと思う。 これだけでは、つまらぬ議論に見えるかもしれないが、一番の問題は、将来に対する危機感の無さなのである。 対応薬剤リストを見ればすぐにわかる。 日本は、マラリアには全く関心が無いのである。 特効薬のクロロキンは承認取り消し。メフロキン、プリマキンは承認の動きさえない。日本では、こうした薬は、あくまでも研究用であり、治療用ではない。マラリア治療薬は必要なし、と考えている訳だ。 と言うことは、現場には、実質的なマラリア治療のノウハウはほとんど無い、と言ってよいだろう。 この状態で、患者が発生し始めたらどうなるのだろう。 しかも、グローバルで見れば、耐性マラリアが蔓延している。恐ろしい話しである (マラリア患者は最貧困が多く、問題は深刻なのだが、薬剤ビジネス市場は小さいから、耐性対策の研究開発も遅れてしまう。) 早咲きの桜を愛で、花見気分にはなれないのである。 --- 参照 --- (1) http://www.data.kishou.go.jp/app-met/1994.html (2) http://www.yies.pref.yamanashi.jp/sannichi/01-6-10.htm (3) http://home.intercity.or.jp/users/SAKA/topic/topicA3.html (4) http://www.jma.go.jp/JMA_HP/jma/press/0302/04a/chijoukion.pd (5) http://www.forth.go.jp/tourist/kansen/07_mala.html 環境問題の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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