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2005.8.3 |
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生ごみ問題発生か…年間約5,000万tの一般廃棄物(し尿、家庭ごみ、事業系ごみ)と、約4億tの産業廃棄物のReduce/Reuse/Recycleを目指し、「循環型社会形成推進基本法」が作られた。そして、分野毎に法律がつくられ、計画が策定されるようになった。予算がつき、いったん動きに弾みがつくと、流れが止まらなくなるのが日本の社会の特徴だから、良い方向に進むと効果抜群だが、悪い方向に進むと大変なことになる。 そんな観点で気になるのが、有機性の“生”ごみに関係する分野である。 もちろん家庭ごみもそうだし、産業で言えば、農業環境関連3法(1)と食品リサイクル法(2)がかかわる分野と見ることができる。 特に、食品リサイクルでは再生利用等の実施率を平成18年度までに20%に向上させるという野心的なものだけに心配である。 心情的には、是非実現させたいと応援したくもなるが、実態を考えると、暗澹たる思いにならざるを得ない。 “生”ごみリサイクルはそう簡単ではないからだ。 そう考える理由は3つある。 1つ目は、現場処理が広がることによる衛生上の不安。 2つ目は、使える物質ができるのかという疑問。 3つ目は、利用キャパシティが小さすぎる危惧の念。 簡単に説明しておこう。 まずは、処理の問題。 有機性廃棄物のリサイクル化とは、微生物による堆肥化と同義である。いわゆるコンポスト化だ。 聞こえがよいからか、様々なところで処理機器導入の動きが見られる。食品小売や給食施設にも設置されて始めている。 ゴミ処理するのだから十分に隔離しているのかと思っていたらそうではないようだ。しかも、病院設置例もあると聞いて驚いた。 発酵槽内には様々な黴が繁殖するのが常識である。と言うより、槽内で繁殖している生物は何だか皆目わからないと考えるべきだろう。そして、黴から発生する胞子が槽内で多量に浮遊する。隔離が不十分なら、胞子は外部に漏れてくる。 臭いが漏れる中途半端な処理槽を便所毎に設置して糞尿処理を始めるようなことはしないと思うが、生ゴミ処理ではそんな常識が通用しないようだ。 次が、原料問題。 そもそも、都市の残飯からまともな処理物ができるとは思えない。油が多いし、塩分濃度も高い。その上、何が混ざっているかわかったものではない。こんなものを原料とした堆肥は農地を危うくするだけである。 もともと生ゴミは水分が多いから、そのまま発酵させたらとんでもない腐敗が発生する。乾燥ゴミが同時に存在するような農家や枯葉が集まる庭を持つ家庭でなければ、生ゴミから良質な堆肥が作れるとは思えないのである。 堆肥が難しいというと、エネルギー回収すればどうかという人もいよう。その通りだろう。 だが、メタンガス発電を始めようとする。 これはどうかと思う。メタンガスの濃度が低すぎるからだ。しかも、機器を傷める微量ガスが必ず発生する。不純ガス除去とメタンガス高濃度化を図れば装置は高価になってしまう。上手くいくのは成分構成が安定している特定のゴミだけだろう。従って、今後の研究開発に期待するしかないのである。 急いで中途半端なメタンガス発電を始める意味があるのか疑問である。もともと炭素量はたいしてないのだから、上手く燃して発電に結びつける方がよさそうに思うが。 そして、最後が利用問題。 家畜糞尿処理を見ればどんな状態かわかると思う。農業の利用キャパシティは小さいのである。もし高望みすれば、過剰施用になりかねない。農地の質は悪化してしまう。 → 「鶏ふん問題」 (2004年3月28日) 今の日本の農業が使える堆肥の量などたかがしれているのである。 従って、焼却処理を止め、本気でコンポスト化を追求したら大事になろう。灰と堆肥では量にして1桁違う。堆肥の山ができ始めたら、担当者は廃棄場所探しで東奔西走状態に陥ると思う。 日本の農業のシステムはリサイクルシステムに適合しにくいのである。 おそらく、高速堆肥化施設もキャパシティからいえばかなりの量が遊んでいるのではないか。しかし、それでも施設は次々とできると思う。土木建築産業にお金を落とすことで、農業地域の経済振興を図る仕組みができあがっているからだ。 この問題を解決しない限り、有機系ごみのリサイクルは無理筋だと思うのだが。 --- 参照 --- (1) 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律 持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律 改正肥料取締法食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 (2) http://www.nippo.co.jp/re_law/relaw6.htm 環境問題の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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