将来シナリオ作成は難しいが…


 研究開発ではなんといっても将来の目標を設定する所が一番困難な場面といえよう。企業がイノベーションに賭けるということは、社内の知識ベースを活用しながら革新的なアイデアを産みだし、これを商業的に価値あるものに変える作業を組織的に遂行すること、と言えるが、この流れのなかで重要なのは、将来の読みが的確かどうかだ。社会構造や技術の流れをグローバルに大局的な見地から検討していかないと読み間違える。

 偶然は必然性のなかで起きるものと考えるのがイノベーションに賭けるマネジメントに勧められる態度である。このためには目標設定が重要となる。この目標設定のためには、将来像のフレームを作る必要があり、それは以下の質問で規定される。
   ・ 対象とする事業の範囲はどこまで考えるべきか。
   ・ 技術領域はどこまで見るべきか。
   ・ 時間軸ではどの辺りを視野に入れるべきか。

 過去を振り返って見ればわかるが、将来に向けた動きを読むのは難しい。80年頃を思い出してみよう。「日本語は英語と違い文字も文章も複雑だから、誰でもが簡単に購入できて、楽に使いこなせるワープロが登場するのは相当先になろう。」との発言が多かった。(日本ではマイコンのキットを発売していた頃である。)
 技術進展の読みだけではない。無視していた地域が急速に力を発揮して注目されることもある。90年頃の自らの見方を思い出して見よう。多くの人の見方は、次のようなものだったのではないか。
 「韓国は技術基盤育成に少なくとも数十年はかかる。力が出せるのは工賃が安い組み立て産業位であり、特許で戦う事業や高度なエレクトロニクス部品はなかなか作れまい。」(98年には韓国の米国特許件数のレベルは先進国と肩を並べるようになった。)
 「インド人がいくら米国で活躍していても、インド本国に情報産業の開発拠点などができるなど20世紀中にはあり得まい。」(ソフト開発拠点としてのインドの都市名を知らない業界人はいまやいない。)

 こうして見てみると難しいのは、予測の内容ではなく、むしろおこるタイミングだ。グローバルに研究開発がハイスピードで進む時代なのだ。
 研究開発システムの目次へ

(C) 1999-2000 RandDManagement.com