バイオ産業は「新しい科学」で革新的な研究開発を推進すべきだ…


 バイオ分野では今までの技術体系に本質的な変化が起きる。遺伝子技術が花開くことで科学の新世紀が始まる。科学が生体活動の本質を論理的に解明していくことで、大発見がいくつも産まれる筈だ。

 これまではセンセーショナルな話も多く、バイオ技術の将来像には不透明感があった。しかし、1998年4月についにアンチ・センス医薬が認可申請され、これが医薬における本格的バイオ・イノベーション競争の新たな展開に繋がることとなった。今までは、病態モデル動物や特定遺伝子欠如動物の開発、特定遺伝子のクローニング成功のレベルであり、治療薬につながる示唆で終始していたが、これからは発見が直に薬剤コンセプトに移行していく。今までは、9割の研究が臨床で失敗を味わっていたが、副作用発現も遺伝子で推測できるようになる可能性も高い。
 大局的な見方をすると、80年代後半から90年代は、質的レベルでみれば新薬開発は極めて低調だった。しかし今後、21世紀初頭のヒトゲノム解明をきっかけに、質的にも優れた新薬開発が一挙に促進され研究開発の疾風怒涛の時代へと突入する。この流れに乗った科学進展に適合する研究開発マネジメント体制の構築が、今、薬業界の急務といえよう。

 1300社もあろうかというベンチャーの活動が無視できない。今後もイノベーションはこの辺りから発生する可能性が高い。そのため、米国製薬企業は98年度の研究開発費の3割程度は外部に委託した模様だ。結果として、企業の総研究費用も増加の一途をたどっており、米国製薬協ベースで200億ドルを突破した。85年頃は約40億ドル程度だったから、その増大ぶりがよく分かる。
 もともとは、医薬や農薬のようなハイリスクな研究開発は大企業が圧倒的優位とされていた。失敗も多いし、開発には長期間と膨大な費用を要するから、安定した財務基盤が不可欠と考えた訳だ。しかし、バイオ物質特許が認められ、ハイリスク投資に賭けるインベスターが卓抜なアイデアや技術に資金を投入するので、質の高いベンチャーが育つようになった。従って、大企業も有望ベンチャーや外部研究機関に資金を投入し、社外の力を利用する方向に転換した。

 長期研究ならプロテオミクス(健常体あるいは疾病細胞に於ける蛋白質発現技術)やジェネティク・マイニング(同一遺伝子バックグラウンドを持つ複数世代の遺伝子情報収集技術)に関心が集まっているようだ。今後はさらに新しい注目技術が次々と登場してくるだろう。探索がシステム化してくると、異業種からの参入も増えよう。
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