電子医療機器研究にはネットワーク型事業構想を組み込むべきだ…


 電子医療機器分野は、技術の進展が極めて速い。例えば、CTは1971年に英国EMI社で開発されたものだ。初期は頭部のみだったが、今は全身対応である。技術上では、スリップリング、ヘリカルスキャン、3次元画像、リアルタイムと段階を経て進歩してきた。このような新技術実現そのものの速さもさることながら、その技術を使用した機器普及もまた速い。ヘリカルスキャンがここまで普及するとの予想は、90年代初頭ではできなかったと専門家が述べる位である。
 高品質な製品を高歩留まりで生産する技術を磨く「物作りの道を極める」型の製造技術は日本企業が得意とするところだが、非連続的に技術が進むので、こうした優位は活かせない。

 技術の流れを研究開発の視点から見ればポイントは3つある。

 第1はデータ保管である。大量データの保管技術は急速に進歩している。95年頃には10テラバイト級情報分析への関心は稀だったが、今やこの程度のデータ量を超並列処理するシステムは驚くに値しない。このままなら、テラバイトからベタバイトに進むという見方が出ている。ハードの進展はすさまじい。

 第2は画像表示である。すでに市販されている高精度ディスプレー表示ならハードコピー無しでも業務上支障はほとんど無いというレベルに達した。といっても、表示機器の高精度細密表示の動きばかりに注目してはならない。もっと重要なのは、カラー情報を活用し、より豊富な情報を提供することだ。診断ノウハウを採り入れた画像解析ソフトを組み込むことで、医療の高度化が実現できる。

 第3はデータ通信である。映像を即時遠隔地送信ができるというだけでなく、ネットワーク化されることで情報アクセス方法が変わるため、医療の仕組みに大きなインパクトを与えることになろう。ウエブ技術により、医療現場の業務そのものが変わる可能性がでてくるからだ。ネットワーク化は、コストと法規制のバリアさえ乗り越えれば、急速に進むことになろう。
 ネットワーク技術は80年代にプロトコルTCP/IP、90年代にはブラウザが登場しインターネット時代が到来した。この技術を利用することで、イントラネットが実践的なネットワークとして立ちあがった。21世紀はこうした技術の流れがヘルスケア業界にも大きな変化のうねりを起こすと考えられる。

 デジタル画像に直接関連する技術への傾注だけでなく、将来に備えた大規模な情報システムへ衣替え可能な研究開発体制を準備する必要があろう。
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