石油化学分野の2タイプの技術マネジメント…


 下図は石油化学分野の研究開発プロセスの考え方だ。上流から下流までを示しているが、本質的なニーズは最終ユーザーにあり、化学メーカーはここにタッチしていない。常に、機器メーカーを通してそのニーズを把握するしかないのである。これは、自動車のバンパーであれ、CD用の樹脂であれ同じことだ。
 ここで、的確に樹脂に要求される仕様を決定できるだけのノウハウがあるかどうかで、まずは篩にかけられる。といっても、機器機能の根幹を担う物質ではないから、機器メーカーは競争による安価実現を優先する。従って、機器メーカーは仕様を広く公開することも多い。そのため、仕様は与えられるものと考えるメーカーもある。しかし、ここで、早めにニーズ対応を進めれば有利に立てるのは言うまでもない。ユーザー絞り込みという戦略も有効となろう。

 研究開発マネジメントからいえば、この次に重要なのは、この仕様に合わせてどのような技術展開を図るべきかというグランドプラン作成である。元のモノマーから対応すべきか、ポリマーレベルか、あるいはコンバーティングでこなせるものかを決定する訳だ。この技術範囲が広いところに、難しさがある。徹底的に対応しようとすれば、開発コストが嵩む上流技術で対応せざるを得ない。ここでのプラン策定の能力が、研究開発の質を示すともいえる。

 グランドプランができたら、後は、試作と評価のサイクルで最適条件を探すだけである。ここでは、いかに低コストでサイクルタイムを短くできるかという効率競争になる。勿論、シュミレーションや知識蓄積も間接的には効くが、多数のサイクルを実現して早く最適解を得る仕組み作りが勝負の鍵を握る。
 このようなタイプの研究開発の場合、各プロジェクト毎に市場性や投入資源が詳細に予測できる。ということは、個別に収益性を判断可能であるから、明示的な研究開発テーマの取捨選択が可能である。

 こうした研究開発は、上流側とは大きく異なることに注意されたい。上流は基本的にフィードバックが無いリニアのプロセスである。画期的なプロセス技術が生まれ、様々な条件設定を探り、これをスケールアップし、生産技術を開発していくというものだ。一方、下流は、利用技術を確定し、製品を作ってみて、評価し、その結果が又技術の活用方法に戻ってくる。
 ということは、同じように、触媒技術を活用していても、上流と下流側の研究開発の本質は違う。ここを理解した上でマネジメントする必要がある。例えば、上流の技術で勝てないなら、その技術領域でグレード開発に注力する方針は避けるべきである。下流で勝つべく、上流に強い企業がニーズ把握と対応技術設定のノウハウを欠いていそうな分野を探し、毛色の異なる応用場面で戦うべきである。それが無理なら、上流技術は放棄し、下流の一部の機能を担当する専門企業を目指すのも手だ。

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